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スランプ推定
(スランプすいてい)
スランプ推定とは、生コンクリートの練混ぜ中に得られるミキサの負荷、電流、トルクなどの情報から、コンクリートの軟らかさを示すスランプを推定することです。従来のスランプ試験を完全に置き換えるものではなく、製造中の状態変化を早期に把握し、品質を安定させるための補助情報として利用されます。
生コンクリートのスランプは、単位水量、骨材の表面水率、配合、練混ぜ時間、混和剤、材料温度などによって変化します。これらの条件が変動すると、同じ配合設定でも練り上がりの状態が変わることがあります。スランプ推定を利用すれば、ミキサ内の負荷変化から、通常と異なる練混ぜ状態を製造中に把握しやすくなります。
スランプとは
スランプとは、所定の形状をしたスランプコーンへ生コンクリートを詰め、コーンを引き上げたときにコンクリートが沈下した量です。一般にセンチメートルで表し、値が大きいほど軟らかく、値が小さいほど硬い傾向を示します。
ただし、スランプが同じでも、材料分離のしやすさ、粘性、空気量、骨材粒度などが異なる場合があります。そのため、スランプだけでコンクリートの品質全体を判断することはできません。
スランプを推定する仕組み
生コンクリートをミキサで練り混ぜると、材料の硬さや粘性に応じてミキサの負荷が変化します。硬いコンクリートでは羽根が材料から受ける抵抗が大きくなり、モータ電流や駆動トルクが増加する傾向があります。軟らかいコンクリートでは、一般に負荷が小さくなる傾向があります。
この関係を利用し、あらかじめ実測スランプとミキサ負荷の関係を収集して推定式や判定基準を作成します。
概念的には、次のような関係で推定します。
推定スランプ=負荷データ、配合情報、練混ぜ条件などから求めた演算値
実際には、単純な電流値だけではなく、練混ぜ開始後の負荷波形、安定時の平均値、最大値、変化量、練混ぜ時間などを組み合わせる場合があります。
推定に利用される主な情報
- ミキサモータの電流値
- ミキサ軸のトルク
- 油圧駆動装置の圧力
- 練混ぜ開始からの経過時間
- 配合番号や呼び強度
- 骨材の表面水率
- 計量された水量や混和剤量
- 材料温度や外気温
推定精度を高めるには、対象となるミキサ、配合、材料ごとに実測データを蓄積することが重要です。異なるミキサや配合で作成した推定式をそのまま使用しても、適切な結果が得られない場合があります。
スランプ推定を利用する目的
スランプ推定は、製造中の全バッチを対象に状態を確認できる点が特長です。抜取りで行うスランプ試験だけでは、その間に製造したバッチの変化を把握できないことがあります。
- 練混ぜ状態のばらつきを早期に把握する
- 骨材表面水率の変動による影響を確認する
- 材料投入や計量の異常を発見する
- 通常と異なる負荷波形を検知する
- 品質管理担当者の判断を支援する
- 製造記録として負荷データを保存する
推定値が通常範囲から外れた場合に、実測試験の追加、材料計量値の確認、表面水率の再測定などへつなげる運用が考えられます。
実測スランプとの違い
スランプ試験は、実際に採取した生コンクリートを用いて沈下量を測定します。一方、スランプ推定は、ミキサ負荷などの間接的な情報からスランプに相当する値を求めます。
推定値は、材料や設備条件の影響を受けるため、実測値そのものではありません。日常管理では、定期的に実測スランプと推定値を比較し、差が大きくなっていないか確認します。
材料の産地変更、骨材粒度の変化、ミキサ羽根の摩耗、配合変更などがあった場合は、推定条件の見直しが必要になることがあります。
推定精度に影響する要因
- 骨材の粒度や形状
- 細骨材の表面水率
- 単位水量
- 混和剤の種類と添加量
- コンクリート温度
- ミキサへの投入順序
- 練混ぜ量
- ミキサ羽根やライナの摩耗
- モータや駆動装置の状態
例えば、ミキサ羽根が摩耗すると、同じコンクリートでも負荷特性が変わる可能性があります。また、練混ぜ量が少ない場合と定格量に近い場合でも、電流値やトルクが異なります。
異常値が出たときの確認方法
推定スランプが通常より大きい場合は、水量の過多、骨材表面水率の設定誤り、混和剤量、計量ゲートからの漏れなどを確認します。通常より小さい場合は、水量不足、骨材量の過多、材料の未投入、混和剤不足などを確認します。
推定値だけでなく、各材料の計量実績、ミキサ電流波形、練混ぜ時間、実測スランプを併せて確認します。負荷波形が急に変化した場合は、ミキサ内部への異物混入や駆動部の異常も考えられます。
導入時のポイント
導入時には、ミキサの形式、モータ容量、負荷信号の取得方法、配合数、製造量、既存の制御装置との接続方法を確認します。
推定モデルを作成するには、実測スランプと負荷データを一定期間収集します。幅広い配合や季節条件のデータを収集することで、実際の製造条件に適した判定基準を作りやすくなります。
推定値を自動補正へ直接使用する場合は、誤推定による品質への影響を考慮し、補正範囲、操作権限、確認手順を慎重に設計します。
保守・更新時の注意点
ミキサ、モータ、電流変換器、制御盤などを更新した場合は、負荷特性が変わる可能性があります。更新前の推定式を継続使用できるか、実測値と比較して確認します。
定期的に電流センサや信号変換器の出力、配線、ゼロ点を確認します。ミキサ羽根やライナの交換後も、推定値の傾向が変わっていないか確認します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、生コンクリート製造設備の制御装置やミキサ負荷信号を利用した状態監視について、ミキサ形式、取得可能な信号、配合、既設制御装置などの仕様を確認して検討します。
製造画面への推定値表示、履歴保存、異常判定などについても、必要な機能と既設設備の構成を確認したうえで対応できる場合があります。
よくある質問
Q. スランプ推定でスランプ試験を省略できますか?
A. スランプ推定は実測試験を完全に置き換えるものではありません。製造中の傾向監視や、追加確認が必要なバッチを見つけるための補助情報として使用します。
Q. ミキサの電流値だけで推定できますか?
A. 電流値を利用できますが、配合、練混ぜ量、材料状態などの影響も受けます。複数の情報を組み合わせた方が安定した推定につながります。
Q. 配合ごとに設定が必要ですか?
A. 配合や材料によって負荷特性が異なるため、配合グループごとに推定条件を分ける場合があります。
Q. 推定値が実測値と合わなくなった原因は何ですか?
A. 骨材や混和剤の変更、ミキサ羽根の摩耗、センサのずれ、季節による材料温度の変化などが考えられます。
Q. 既設の生コン製造設備にも追加できますか?
A. ミキサ負荷信号の取得方法、制御装置、通信や入出力の条件によって対応できる場合があります。既設設備の仕様を確認して検討します。