漏れ電流Ioとは、電路から大地へ流れる漏れ電流の合成値です。絶縁劣化によって流れる抵抗分漏れ電流Iorだけでなく、電線、モータ、インバータ、ノイズフィルタなどが持つ対地静電容量を通じて流れる容量分漏れ電流Iocも含みます。

漏れ電流Ioを継続的に計測すると、設備の漏電状態や絶縁状態の変化を把握するための基礎情報を得られます。ただし、Ioが大きいことだけで、直ちに危険な絶縁劣化が発生しているとは限りません。設備構成や使用機器によっては、正常時にも容量分漏れ電流が流れるためです。

漏れ電流Ioの構成

交流回路の漏れ電流Ioは、主に次の二つの成分で構成されます。

  • 抵抗分漏れ電流Ior:絶縁抵抗の低下などによって流れる成分
  • 容量分漏れ電流Ioc:電路と大地の間の静電容量を通じて流れる成分

Ioは、IorとIocを単純に足した数値ではありません。交流では両者の位相が異なるため、ベクトルとして合成されます。概念的には次のように表されます。

Io=IorとIocをベクトル合成した漏れ電流

Iocが大きい設備では、絶縁状態が正常でもIoが大きく表示されることがあります。そのため、絶縁劣化を詳しく判断するときは、IoだけでなくIorも確認します。

漏れ電流が発生する仕組み

電線や電気機器は、完全に大地から絶縁されているわけではありません。絶縁材料には有限の抵抗があり、電路と接地された金属部分との間には静電容量も存在します。

絶縁材料が劣化すると、電路から大地へ流れる抵抗分の電流が増加します。また、ケーブルが長い設備、インバータを多数使用する設備、ノイズフィルタを備えた設備では、対地静電容量を通じた容量分漏れ電流が増える場合があります。

Ioを計測する方法

漏れ電流Ioは、零相変流器や漏電計測に対応した変流器を使用して計測します。単相または三相回路のすべての活線を一括して変流器へ通すと、正常時の往復電流は打ち消し合います。

電路から大地へ電流が漏れると、往路と復路の電流に差が生じます。この差分が零相電流として検出されます。

計測時には、相線と中性線を含む対象回路のすべての活線を一括して通す必要があります。接地線を一緒に通すと正しく計測できない場合があります。

Io計測の主な用途

  • 低圧電路の漏電監視
  • 絶縁状態の傾向監視
  • 漏電警報の出力
  • 設備停止前の異常兆候把握
  • 漏電箇所を絞り込むための分岐回路監視
  • インバータ設備の漏れ電流傾向把握

漏電遮断器は設定値を超える漏れ電流が発生したときに回路を遮断します。一方、漏れ電流計測では、遮断に至る前の小さな変化を継続的に監視できます。

Ioが増加する主な原因

  • 電線や機器の絶縁劣化
  • 水分や結露の侵入
  • 粉じんや油による端子部の汚損
  • ヒータやモータの劣化
  • ケーブル延長による対地静電容量の増加
  • インバータやノイズフィルタの追加
  • 接続機器数の増加

設備増設後にIoが増えた場合は、絶縁劣化ではなく、容量分漏れ電流の増加が原因のこともあります。設備変更履歴と測定値を関連付けて確認します。

Ioだけでは絶縁劣化を判断しにくい理由

容量分漏れ電流Iocは、正常な設備でも流れます。特にインバータ、サーボアンプ、スイッチング電源、EMCフィルタなどを多く使用する設備では、Ioの大部分がIocとなる場合があります。

この状態ではIoが大きくても、絶縁抵抗が低下しているとは限りません。抵抗分漏れ電流Iorを分離して計測することで、絶縁劣化に関係する成分を確認しやすくなります。

警報値の設定

警報値は、設備の正常時に流れているIo、回路構成、漏電遮断器の設定、保全方針などをもとに決めます。

一律の値だけで管理すると、正常な容量分漏れ電流によって頻繁に警報が出たり、反対に異常を見逃したりする可能性があります。

設備導入時や保全後の正常値を記録し、絶対値だけでなく増加傾向も監視する方法が有効です。

測定値が不安定になる原因

漏れ電流は比較的小さな電流を扱うため、配線、ノイズ、変流器の取付状態などの影響を受ける場合があります。

  • 変流器へ対象回路の一部しか通していない
  • 接地線を変流器へ通している
  • 変流器の分割面が完全に閉じていない
  • 大電流配線やインバータ配線の近くに設置している
  • 高調波成分を多く含む漏れ電流が流れている
  • 計測器のレンジや設定が合っていない

異常値が出た場合は、計測器だけでなく、変流器と一次配線の構成を確認します。

保守点検での活用

定期的に同じ運転条件でIoを記録すると、設備の経年変化を把握しやすくなります。生産設備の運転台数やインバータ周波数が異なるとIoも変化するため、測定時の運転条件も残します。

Ioが急増した場合は、分岐回路ごとに測定し、原因となる設備を絞り込みます。必要に応じて絶縁抵抗測定やIor計測を行い、絶縁状態を確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、Io・Ior計測に対応した電子式マルチメータなどを用い、漏れ電流の表示、警報、通信、データ収集を行う構成を検討します。

対象回路の相線式、計測範囲、変流器、既設盤、上位通信などの仕様を確認し、設備条件に合わせて構成します。

よくある質問

Q. 漏れ電流Ioが大きいと必ず絶縁不良ですか?

A. 必ずしも絶縁不良とは限りません。正常な設備でも、対地静電容量による容量分漏れ電流Iocが流れます。

Q. IoとIorは何が違いますか?

A. Ioは抵抗分と容量分を含む漏れ電流の合成値です。Iorは、そのうち絶縁抵抗に関係する抵抗分です。

Q. インバータ設備ではIoが増えますか?

A. インバータやノイズフィルタの対地静電容量、高周波成分などによって増加する場合があります。

Q. Ioは絶縁抵抗計の代わりになりますか?

A. 運転中の傾向監視には利用できますが、絶縁抵抗測定と同じものではありません。必要に応じて両方を使い分けます。

Q. 既設配電盤へIo計測を追加できますか?

A. 変流器を取り付けるスペース、一次配線、計測器電源、通信などの条件によって対応できる場合があります。

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抵抗分漏れ電流Iorとは、電路から大地へ流れる漏れ電流のうち、絶縁抵抗を通じて流れる成分です。絶縁材料の劣化、水分の侵入、端子部の汚損などによって増加しやすいため、通電中の設備で絶縁劣化の兆候を把握する指標として利用されます。

漏れ電流Ioには、Iorのほかに、電路と大地の間の静電容量を通じて流れる容量分漏れ電流Iocが含まれます。Iocは正常な設備でも流れるため、Ioだけでは絶縁劣化を判断しにくい場合があります。

IorとIoの違い

漏れ電流Ioは、抵抗分漏れ電流Iorと容量分漏れ電流Iocを含む合成値です。

  • Io:実際に計測される漏れ電流の合成値
  • Ior:絶縁抵抗を通じて流れる成分
  • Ioc:対地静電容量を通じて流れる成分

交流回路では、IorとIocの位相が異なります。そのため、IoからIocの数値を単純に引いてIorを求めることはできません。

Ior対応の計測器では、漏れ電流と基準となる電圧の位相関係を計測し、抵抗分に相当する成分を演算します。

絶縁劣化とIorの関係

絶縁抵抗をR、対地電圧をVとすると、抵抗分漏れ電流は概念的に次の関係を持ちます。

Ior=V÷R

絶縁抵抗Rが低下すると、Iorは増加します。ただし、実際の設備では相線式、対地電圧、負荷状態、非線形な漏れ経路などの影響を受けるため、単純な式だけで絶縁抵抗値を求められるとは限りません。

Iorを計測する目的

  • 運転中の設備で絶縁状態を監視する
  • 容量分漏れ電流の影響を抑えて劣化傾向を見る
  • 絶縁不良による停止を予防する
  • 点検対象となる回路を絞り込む
  • 設備の更新時期を判断する材料にする

絶縁抵抗計による測定では、一般に設備を停電させ、負荷機器を切り離す必要があります。Ior計測は通電中に継続監視できるため、停止しにくい設備の予防保全に利用できます。

Iorの計測方法

Ior計測では、零相変流器などで漏れ電流Ioを検出するとともに、回路電圧を基準信号として取り込みます。

計測器は、漏れ電流と電圧の位相関係から、電圧と同相方向の抵抗分を演算します。使用できる相線式や演算方式は計測器によって異なるため、対象回路への対応を確認します。

電圧入力の相や配線を誤ると、正しい位相関係を得られず、Iorの演算値が不正確になる可能性があります。

Ior計測が有効な設備

インバータ、サーボアンプ、スイッチング電源、ノイズフィルタなどを多く使用する設備では、容量分漏れ電流Iocが大きくなる傾向があります。

このような設備ではIoの値だけが高くなり、絶縁劣化との区別が難しくなる場合があります。Iorを併せて監視すると、抵抗分の変化を把握しやすくなります。

ただし、高調波成分や複雑な回路構成によっては、Ior演算に影響が出る場合があります。計測器の対応条件を確認します。

Iorが増加する主な原因

  • ケーブル被覆や巻線の経年劣化
  • 端子箱や制御盤への水分侵入
  • 結露
  • 導電性粉じんや油による汚損
  • ヒータやモータの絶縁劣化
  • 配線損傷
  • 絶縁物の熱劣化

Iorが増加した場合は、設備周辺の温度、湿度、洗浄、降雨などの環境変化も確認します。湿度が高いときだけ上昇する場合は、結露や吸湿の影響が考えられます。

測定値を評価する方法

Iorの評価では、一律の数値だけでなく、設備ごとの正常値と変化傾向を確認します。

新設時や整備後の値を基準として記録し、同じ運転条件で定期的に比較します。緩やかに増加している場合は劣化の進行、急激に増加した場合は水分侵入や配線損傷などを疑います。

測定値が設定値を超えた場合に警報を出すだけでなく、一定期間の上昇率を確認する方法もあります。

絶縁抵抗測定との使い分け

Ior計測は、設備を運転した状態で絶縁劣化の兆候を監視する方法です。一方、絶縁抵抗計は、停電状態で試験電圧を加え、絶縁抵抗を直接測定します。

Iorが増加した回路を抽出し、停止可能な時期に絶縁抵抗測定や詳細点検を行うことで、点検作業を効率化できます。

Iorの値だけで設備の安全性を断定せず、必要に応じて絶縁抵抗、温度、外観、接地状態などを確認します。

計測時の注意点

  • 対象回路の相線式が計測器に対応しているか確認する
  • 電圧入力の相と極性を正しく接続する
  • 対象回路のすべての活線を変流器へ通す
  • 接地線を変流器へ通さない
  • 高調波やノイズの影響を確認する
  • 設備の運転条件を記録する

負荷の運転台数やインバータ周波数が変わると、IoやIorの表示が変化する場合があります。比較時には同じ条件で測定します。

異常値が出た場合の確認

Iorが急に増加した場合は、同じ回路を再測定し、計測器の電圧入力、変流器、配線を確認します。

計測系に問題がなければ、分岐回路や接続機器を順番に切り分けて原因箇所を特定します。水分、端子汚損、ケーブル損傷、ヒータ、モータなどを点検します。

設備を停止できる場合は、絶縁抵抗測定などによって状態を確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、Io・Ior計測に対応した電子式マルチメータを使用し、漏れ電流の表示、警報、通信、履歴管理を行う構成を検討します。

対象回路の相線式、電圧、変流器、監視点数、上位システムとの通信などを確認し、設備条件に合わせて構成します。

よくある質問

Q. Iorが大きいと絶縁が劣化していますか?

A. 絶縁劣化の可能性がありますが、計測条件や回路構成も確認し、必要に応じて絶縁抵抗測定を行います。

Q. IoからIocを引けばIorを求められますか?

A. 位相が異なるため、数値を単純に引くことはできません。電圧との位相関係を使って演算します。

Q. Ior計測中に設備を停止する必要がありますか?

A. 通常は通電・運転中に計測できます。停止しにくい設備の傾向監視に利用できます。

Q. Ior計測は絶縁抵抗測定の代わりになりますか?

A. 完全な代替ではありません。Iorで傾向を監視し、異常時に絶縁抵抗測定を行う使い分けが考えられます。

Q. 既設のIo計測器でIorも測れますか?

A. Ior演算には漏れ電流に加えて電圧と位相情報が必要です。Ior計測対応機器かどうかを確認します。

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太陽光ストリング監視とは、太陽光パネルを直列接続したストリングごとに、直流電流などを計測し、発電状態の違いや異常兆候を監視することです。パワーコンディショナ単位の総発電量だけでは見つけにくい、特定ストリングの発電低下を把握するために利用します。

太陽光発電設備では、多数のストリングが並列に接続されています。一部のストリングで断線、影、汚れ、パネル故障などが発生しても、他のストリングが発電を続けるため、設備全体の発電量だけでは異常を発見しにくい場合があります。

ストリングとは

ストリングとは、複数枚の太陽光パネルを直列に接続した回路単位です。パネルを直列に接続すると電圧が加算され、各ストリングは接続箱や集電箱で並列にまとめられます。

同じ仕様、同じ枚数、同じ設置条件のストリングであれば、日射条件が同じときには近い電流が流れることが期待されます。

この性質を利用し、ストリング間の電流差を比較して異常兆候を確認します。

監視する主な項目

  • ストリングごとの直流電流
  • 接続箱または計測点の直流電圧
  • 日射量
  • パネル温度や周囲温度
  • 接点状態や機器警報
  • 発電量の時間変化

電流だけでなく、日射量や温度も併せて記録すると、天候による発電低下と設備異常を区別しやすくなります。

ストリング監視の仕組み

ストリングごとの直流配線へ電流センサを取り付け、計測ユニットで各電流を測定します。計測値はRS-485などの通信を通じて監視装置や上位パソコンへ送信します。

監視装置では、各ストリングの電流、平均値、最大値、最小値、前日値などを比較します。設定した条件から外れた場合には、警報や異常候補として表示します。

ストリング間比較

同一条件のストリング間で、特定の回路だけ電流が低い場合は、異常が発生している可能性があります。

例えば、各ストリングの平均電流を基準として、一定割合以上低いストリングを抽出する方法があります。

偏差率=(対象ストリング電流-基準電流)÷基準電流×100

ただし、設置方位、傾斜角、影、パネル枚数、パネル仕様が異なるストリングを単純に比較すると、正常な差を異常と判定する可能性があります。

検知できる可能性がある異常

  • ストリング配線の断線
  • コネクタの接触不良
  • ヒューズ切れ
  • パネル故障
  • 部分的な影
  • パネル表面の著しい汚れ
  • 積雪や落葉による遮光
  • バイパスダイオードの異常

電流低下から異常の兆候を発見できますが、測定値だけで原因を自動的に特定できるとは限りません。現地での外観点検、電圧測定、絶縁測定などが必要になる場合があります。

日射変動への対応

太陽光発電の電流は、日射量によって短時間に変化します。雲が流れているときには、設備が正常でも電流値が大きく上下します。

異常判定では、瞬時値だけでなく、一定時間の平均値、同一時刻のストリング間比較、日射量との関係を使用します。

早朝、夕方、雨天など発電量が小さい時間帯は、電流差の割合が大きくなりやすいため、判定対象から外す場合があります。

影や設置条件の影響

建物、電柱、樹木、架台などの影が特定のストリングだけにかかると、正常設備でも電流差が生じます。

季節や時刻によって影の位置が変わるため、毎日同じ時間帯に繰り返す低下は、影による可能性があります。

監視システムへ設置条件や既知の影を登録し、異常判定条件をストリングごとに調整する方法があります。

計測機器の選定

選定時には、ストリング数、最大直流電流、最大直流電圧、センサ方式、通信方式などを確認します。

既設設備へ後付けする場合は、接続箱内部の取付スペース、配線の取り回し、停電作業の可否、耐熱性なども確認します。

直流回路は交流と異なり、遮断時にもアークが継続しやすいため、作業は設備の安全手順に従って行います。

警報設定

異常判定値を厳しく設定しすぎると、雲、影、センサ誤差によって警報が多発します。緩すぎると小さな異常を見逃す可能性があります。

運転開始後の正常データを収集し、設備ごとのばらつきを確認してから、警報値と継続時間を調整します。

電流が一定時間ゼロになった場合の断線警報と、平均値から徐々に低下した場合の劣化警報を分ける方法もあります。

異常が表示されたときの確認

まず、同じ時間帯の他ストリング、日射量、天候、影の状態を確認します。次に、計測センサ、配線、通信異常の有無を確認します。

現地点検では、ヒューズ、コネクタ、配線、パネル表面、接続箱などを確認します。必要に応じてストリング電圧、絶縁抵抗、サーモグラフィなどを使用します。

保守への活用

ストリング監視では、完全に発電しなくなった異常だけでなく、以前より発電量が低下している回路を抽出できます。

点検対象を絞り込むことで、大規模な太陽光発電所における巡回作業を効率化できます。

清掃や部品交換の前後で測定値を比較すると、保守作業の効果も確認できます。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、ストリング計測ユニットを使用し、直流電圧と複数ストリングの直流電流を計測して、RS-485通信により上位システムへ伝送する構成を検討します。

ストリング数、電流範囲、電圧、通信方式、接続箱の構造などを確認し、設備条件に合わせて構成します。

よくある質問

Q. ストリング監視で故障原因まで分かりますか?

A. 異常が疑われるストリングを特定できますが、原因の確定には現地点検や追加測定が必要な場合があります。

Q. 雲による発電低下を異常と判定しませんか?

A. 同時刻のストリング間比較や継続時間を利用することで、天候変動による誤判定を抑えます。

Q. すべてのストリングが同じ電流になりますか?

A. パネル、配線、影、方位、温度などによって差が生じます。設備ごとの正常なばらつきを考慮します。

Q. 既設の太陽光発電設備へ後付けできますか?

A. 接続箱のスペース、配線、電流範囲、通信経路などの条件によって対応できる場合があります。

Q. ストリング監視だけで発電所全体を監視できますか?

A. 詳細な回路監視に有効ですが、パワーコンディショナ、日射、系統、通信などの監視も組み合わせます。

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GR・DGR試験とは、高圧受配電設備に設置される地絡継電器GRと地絡方向継電器DGRが、設定された条件で正しく動作するかを確認する試験です。地絡事故が発生したときに、遮断器へ適切な動作信号を出せる状態かを確認します。

GRは主に零相電流を検出して動作します。DGRは零相電流に加えて零相電圧と位相関係を確認し、地絡事故の方向を判定します。

GRとは

GRはGround Relayの略称で、地絡継電器を表します。零相変流器ZCTで検出した零相電流が整定値を超えると動作します。

地絡事故が発生したときに警報を出したり、遮断器を動作させたりするために使用します。

GRは地絡電流の大きさを基準に動作するため、事故電流の方向判定は行いません。

DGRとは

DGRはDirectional Ground Relayの略称で、地絡方向継電器を表します。

ZCTから得られる零相電流と、零相電圧検出装置から得られる零相電圧の大きさ・位相関係を使用して、自設備側の地絡か、系統の別方向で発生した地絡かを判定します。

配電系統や受電設備の構成によっては、不要動作を防ぐためにDGRが使用されます。

試験の主な項目

  • 最小動作電流試験
  • 最小動作電圧試験
  • 動作時間試験
  • 位相特性試験
  • 警報・表示の確認
  • 遮断器との連動確認

必要な試験項目は、継電器の種類、設備構成、点検目的によって異なります。

GRの動作電流試験

GRの動作電流試験では、継電器へ試験電流を加え、徐々に増加させます。継電器が動作したときの電流値を確認し、整定値や許容範囲と比較します。

出力を急に上げると動作点を正確に確認しにくいため、試験器の出力を確認しながら調整します。

試験後は、継電器の表示や動作接点が正常に復帰することも確認します。

DGRの試験

DGRでは、試験電流だけでなく試験電圧も入力します。さらに、電流と電圧の位相関係を継電器の動作領域に合わせる必要があります。

動作電流試験では所定の試験電圧と位相条件を加え、電流を変化させます。動作電圧試験では所定の試験電流を加え、電圧を変化させます。

位相条件が正しくない場合、電流と電圧が十分でもDGRが動作しないことがあります。

簡易動作試験と総合試験の違い

継電器の入力端子へ試験電流・試験電圧を加え、継電器単体の動作を確認する試験は、簡易動作試験または単体試験として行われます。

一方、ZCTや零相電圧検出装置などの一次側から試験信号を与え、継電器、配線、遮断器まで含めて動作を確認する試験は、総合試験として扱われます。

簡易動作試験で正常でも、一次検出器、配線、遮断回路まで正常とは限りません。点検目的に応じて試験範囲を決めます。

動作時間の確認

継電器には、事故検出から接点出力までの動作時間が設定されています。試験器から信号を出力し、継電器接点が動作するまでの時間を測定します。

動作時間が短すぎると他設備との保護協調に影響し、長すぎると事故回路の遮断が遅れる可能性があります。

継電器の整定値、メーカー仕様、保護協調の条件と比較します。

試験前に確認する項目

  • GRまたはDGRのメーカーと型式
  • 動作電流整定値
  • 動作電圧整定値
  • 動作時間整定値
  • 使用する試験端子
  • 電流・電圧入力の極性
  • 位相条件
  • 遮断器が実際に動作するかどうか

試験によって遮断器が動作すると設備停電につながるため、試験範囲と設備状態を事前に確認します。

安全上の注意

GR・DGR試験は高圧受配電設備に関係する作業です。停電範囲、充電部、接地、遮断器の状態などを確認し、有資格者や設備管理者の手順に従って実施します。

試験線を接続・取り外すときは、試験器の出力が停止し、調整値がゼロになっていることを確認します。

試験器の出力端子へ誤った電圧や外部電源が加わらないようにします。

試験結果が整定値と合わない場合

動作値が許容範囲から外れる場合は、試験器の接続、位相、出力値、継電器整定を再確認します。

接続に問題がない場合は、継電器の経年劣化、内部回路、接点、補助電源などを点検します。

総合試験でのみ異常が出る場合は、ZCT、零相電圧検出装置、配線、端子、遮断回路なども確認します。

試験記録

試験記録には、設備名、継電器型式、整定値、試験値、動作時間、試験日、試験者などを残します。

過去の結果と比較することで、動作値や動作時間の変化を確認できます。継電器を更新した場合は、更新前後の型式と整定値を明確にします。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、受配電設備に設置されたGR・DGRの簡易動作試験に使用するポータブル試験器を提供しています。

対象となる継電器、試験電流、試験電圧、電源、試験方法などを確認し、対応可能な試験範囲を検討します。

よくある質問

Q. GRとDGRは何が違いますか?

A. GRは主に地絡電流の大きさで動作し、DGRは地絡電流と零相電圧の位相関係から事故方向も判定します。

Q. DGR試験ではなぜ電圧も必要ですか?

A. DGRは零相電流だけでなく、零相電圧とその位相関係を使って方向を判定するためです。

Q. 簡易動作試験だけで保護設備全体を確認できますか?

A. 継電器単体の確認が中心です。ZCT、配線、遮断器まで確認するには、別途総合試験が必要です。

Q. 試験中に遮断器が動作しますか?

A. 接点回路や試験方法によっては動作します。試験前に遮断回路と停電範囲を確認します。

Q. すべてのGR・DGRを同じ条件で試験できますか?

A. メーカー、型式、整定値、試験端子、位相特性などが異なるため、対象機器の仕様確認が必要です。

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皮相電力とは、交流回路における電圧の実効値と電流の実効値を掛け合わせた電力です。単位にはVA(ボルトアンペア)またはkVA(キロボルトアンペア)を使用します。設備や変圧器、発電機、無停電電源装置などの必要容量を考える際の基準となります。

交流回路では、電源から供給された電力のすべてが、仕事や熱として有効に使われるとは限りません。実際に消費される有効電力と、モーターや変圧器などの磁界をつくるために往復する無効電力を合わせた電力の大きさが皮相電力です。

ハカルプラスでは、電圧、電流、有効電力、無効電力、力率などを計測し、受配電設備や負荷設備の容量確認、デマンド監視、省エネルギー分析に活用できる構成を検討します。

皮相電力の求め方

単相交流回路の皮相電力は、次の式で求められます。

S=V×I

  • S:皮相電力[VA]
  • V:電圧の実効値[V]
  • I:電流の実効値[A]

例えば、電圧200V、電流10Aの場合、皮相電力は2,000VA、すなわち2kVAです。

三相3線式の平衡回路では、一般に次の式を用います。

S=√3×V×I

ここでVは線間電圧、Iは線電流です。実際の設備で相ごとの電圧・電流が異なる場合は、各相の計測値や計測器の演算方式を確認します。

有効電力・無効電力との関係

有効電力、無効電力、皮相電力には次の関係があります。

S2=P2+Q2

  • S:皮相電力[VA]
  • P:有効電力[W]
  • Q:無効電力[var]

有効電力は、モーターの機械出力、ヒーターの発熱、照明などに実際に使われる電力です。無効電力は、モーターや変圧器の磁界形成などに必要ですが、負荷と電源の間を往復し、直接仕事には変換されません。

皮相電力と力率

力率は、皮相電力に対して有効電力がどの程度含まれているかを表す指標です。

力率=有効電力÷皮相電力

例えば、皮相電力100kVA、有効電力80kWの場合、力率は0.8、または80%です。同じ有効電力を使用する場合でも、力率が低いと流れる電流が増え、変圧器や配線に必要な容量が大きくなります。

ただし、高調波を含む波形では、電圧と電流の位相差だけでなく波形ひずみも力率へ影響します。進相コンデンサだけでは改善できない場合があります。

設備容量との関係

変圧器、発電機、無停電電源装置などの容量は、一般にkVAで表されます。これらの機器は、有効電力だけでなく、負荷へ流れる電流全体に対応する必要があるためです。

例えば、容量100kVAの変圧器へ力率80%の負荷を接続した場合、理論上の有効電力は約80kWです。力率が95%であれば、同じ100kVAでも約95kWまで有効に利用できます。

ただし、実際の選定では、始動電流、負荷変動、将来増設、高調波、温度条件なども考慮します。

電流増加と設備への影響

同じ有効電力を使用していても、力率が低下して皮相電力が増えると、電源から流れる電流が増加します。電流が増えると、配線や変圧器での損失と発熱が増え、設備容量に余裕がなくなる可能性があります。

  • 変圧器や発電機の使用可能容量が減る
  • 配線、遮断器、接触器の負担が増える
  • 配線での電圧降下が増える
  • 設備の発熱や電力損失が増える

受電設備の余裕を確認する場合は、有効電力だけでなく皮相電力、電流、力率を併せて確認します。

皮相電力を計測する方法

皮相電力は、計測した電圧と電流の実効値から演算します。低圧設備では電圧を計測器へ入力し、電流はCTを通して取り込みます。高圧設備では、高圧回路に対応したCTや電圧変成器などを使用します。

三相回路では、配線方式、電圧入力の相、CTの取付相と方向を正しく設定します。相の取り違えやCT比の設定誤りがあると、皮相電力、有効電力、力率などが正しく表示されません。

異常値が表示された場合の確認

皮相電力が通常より大きい場合は、実際の負荷増加だけでなく、力率低下、電圧変動、電流不平衡、高調波の増加を確認します。

有効電力がほとんど変わらず皮相電力だけが増えた場合は、無効電力または高調波電流が増えている可能性があります。モーターの軽負荷運転、進相コンデンサの異常、インバーター負荷の追加などを点検します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、単相・三相回路の電圧、電流、皮相電力、有効電力、無効電力、力率などを計測する機器と監視システムを検討します。

現在値の表示、上限警報、デマンド監視、通信、データ保存を組み合わせ、変圧器の負荷率確認、設備増設前の容量確認、省エネルギー分析に利用できる構成に対応します。

よくある質問

Q. 皮相電力と消費電力は同じですか?

A. 同じではありません。一般に消費電力は有効電力を指し、皮相電力は電圧と電流から求めた電力全体の大きさです。

Q. 皮相電力の単位がWではなくVAなのはなぜですか?

A. 実際に仕事へ変換される有効電力と区別するため、皮相電力にはVAを使用します。

Q. 力率が低いと皮相電力は大きくなりますか?

A. 同じ有効電力であれば、力率が低いほど皮相電力と電流が大きくなります。

Q. 変圧器の容量はkWとkVAのどちらで選びますか?

A. 基本的にはkVAで確認します。負荷の力率、始動電流、高調波、将来増設も考慮して選定します。

Q. 既設設備の皮相電力を継続監視できますか?

A. 電圧入力とCTを計測器へ接続し、現在値や履歴を表示・保存する構成を検討できます。

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三相不平衡とは、三相交流回路において、各相の電圧または電流の大きさや位相関係が均等でない状態です。理想的な三相交流では、各相の大きさが等しく、位相は互いに120度ずれています。

単相負荷の偏り、配線や接点の異常、モーター巻線の劣化などがあると、各相の電流や電圧に差が生じます。不平衡が大きくなると、モーターや変圧器の発熱、振動、損失増加、設備容量の低下につながる可能性があります。

ハカルプラスでは、三相各相の電圧・電流を計測し、不平衡状態の表示、警報、通信、履歴保存を行う設備監視を検討します。

平衡した三相交流

三相交流は、R相、S相、T相の三つの交流で構成されます。平衡状態では、各相の電圧と電流の大きさがほぼ等しく、位相が120度ずつずれています。

三相モーターなどの負荷が平衡していると、各相へ均等に電流が流れ、機器を効率よく運転できます。三相4線式回路では、各相電流が均等であれば中性線電流も小さくなります。

電流不平衡が発生する原因

電流不平衡は、負荷の接続状態や設備異常によって発生します。

  • 単相負荷が特定の相へ集中している
  • ヒーターや負荷機器の一部が停止している
  • 端子や接触器の接触不良がある
  • 三相モーターの巻線抵抗に差がある
  • 欠相または半断線が発生している
  • インバーターや整流負荷が各相へ偏っている

受電設備全体では平衡していても、分岐回路や特定設備だけで大きな偏りが生じていることがあります。

電圧不平衡が発生する原因

電圧不平衡は、電源系統や配線のインピーダンス、負荷電流の偏りなどによって発生します。特定の相へ大きな負荷が集中すると、その相の電圧降下が大きくなります。

変圧器、遮断器、接触器、端子台、ケーブルなどの接続不良も原因になります。上位系統から不平衡が供給されている場合もあるため、受電点と負荷側の両方を測定すると原因を絞り込みやすくなります。

不平衡率の考え方

簡易的な電流不平衡率は、各相電流の平均値と、平均値から最も離れた相との差を用いて算出します。

不平衡率=最大偏差÷三相平均値×100

例えば、三相電流が100A、105A、95Aの場合、平均値は100A、最大偏差は5Aであり、不平衡率は5%です。

一方、電圧不平衡を厳密に評価する場合は、三相電圧を対称分へ分解し、逆相電圧と正相電圧の比率を用いる方法があります。使用する規格や機器によって演算方法が異なるため、表示値の定義を確認します。

モーターへの影響

三相モーターへ不平衡電圧を加えると、基本波とは逆方向に回転する磁界成分が発生し、モーター電流の不平衡が大きくなることがあります。

その結果、巻線や鉄心の発熱、振動、騒音、トルク低下、絶縁劣化が進む可能性があります。わずかな電圧不平衡でも電流不平衡が大きくなる場合があるため、電流だけでなく電圧も確認します。

変圧器・配線への影響

各相の負荷が偏ると、特定相の配線、遮断器、変圧器巻線だけに大きな電流が流れます。設備全体の合計電力に余裕があっても、一相だけ定格へ近づく場合があります。

三相4線式回路では、単相負荷の偏りや第3高調波によって中性線電流が増加することがあります。各相電流と中性線電流を併せて確認することが重要です。

三相不平衡の測定

電流不平衡を確認するには、R相、S相、T相へCTを設置し、各相の電流を同時に計測します。電圧不平衡では、各線間電圧または相電圧を測定します。

一時的な負荷変動と継続的な不平衡を区別するため、瞬時値だけでなく一定時間の最大値・平均値や履歴を確認します。設備の運転状態と計測時刻を記録すると、原因となる負荷を特定しやすくなります。

異常が見つかった場合の確認

一相の電流だけが大きい場合は、その相に接続された単相負荷やヒーター回路を確認します。一相だけ小さい場合は、負荷停止、ヒューズ切れ、接触不良、欠相などを点検します。

電圧に差がある場合は、受電点と負荷端で測定し、どの区間で電圧降下が発生しているかを確認します。端子や接触器の温度上昇、変色、緩みがないかも点検します。

不平衡の改善方法

単相負荷の接続相を変更し、三相へ均等に配分することが基本です。設備増設時には、現在の各相負荷を確認して接続相を決めます。

接点や配線の異常が原因の場合は、締付け、部品交換、配線修理を行います。モーター内部の異常が疑われる場合は、巻線抵抗や絶縁状態を確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、三相各相の電圧・電流を計測し、現在値、最大値、不平衡状態を表示する構成を検討します。

不平衡が設定値を超えた場合の警報出力、通信、データ保存を組み合わせ、モーター、変圧器、受配電設備の異常監視や保全判断に利用できます。

よくある質問

Q. 三相の電流は完全に同じでなければ異常ですか?

A. 負荷変動や測定誤差による小さな差は発生します。設備仕様と正常時の値を基準に判断します。

Q. 電圧不平衡が小さくてもモーターへ影響しますか?

A. 小さな電圧不平衡でも、モーター電流にはより大きな不平衡が生じる場合があります。

Q. 一相だけ電流が小さい場合は欠相ですか?

A. 欠相の可能性はありますが、負荷停止、ヒューズ切れ、接触不良なども確認する必要があります。

Q. 三相不平衡は力率にも影響しますか?

A. 各相の負荷状態が変わるため、回路全体の力率や電力計測値にも影響する場合があります。

Q. 三相不平衡を継続的に監視できますか?

A. 各相の電圧・電流を計測し、しきい値判定、警報、履歴保存を行う構成を検討できます。

関連ワード

瞬時電圧低下とは、電源電圧が短時間だけ所定の値より低下する現象です。一般に「瞬低」と呼ばれます。停電とは異なり、電圧が完全にゼロにならない場合や、短時間で元の電圧へ復帰する場合も含まれます。

瞬低の継続時間は短くても、PLC、パソコン、インバーター、電磁接触器、通信機器などが停止・リセットする可能性があります。生産設備では、一つの機器が停止しただけでも工程全体の復旧に時間を要することがあります。

ハカルプラスでは、電圧の低下を検出し、警報、履歴保存、設備状態の記録、停電・復電時の制御へ活用する構成を検討します。

瞬低と停電の違い

停電は電力供給が失われた状態を指します。一方、瞬低は電圧が一時的に低下する現象で、電圧が残っている場合があります。

また、電圧が短時間完全にゼロになる瞬時停電と、電圧が低い状態で残る瞬時電圧低下は区別されます。ただし、設備側ではどちらも制御機器の停止やリセットを引き起こす可能性があります。

瞬低が発生する主な原因

  • 送配電系統での落雷や地絡事故
  • 大容量モーターや変圧器の投入
  • 溶接機など大電流負荷の動作
  • 短絡事故や保護装置の動作
  • 受電設備や配線の接触不良
  • 発電機・電源切替時の一時的な電圧変動

系統事故による瞬低は、工場内に異常がなくても発生する場合があります。一方、特定設備の起動時だけ発生する場合は、工場内の電源容量や配線条件を確認します。

設備への主な影響

電子機器は、入力電圧が一定値を下回ると正常動作を維持できません。瞬低による主な影響には次のものがあります。

  • PLC、マイコン、パソコンのリセット
  • 電磁接触器やリレーの釈放
  • インバーター、サーボアンプの不足電圧停止
  • 通信機器やネットワークの再起動
  • 計測値、設定値、処理中データの消失
  • 搬送・計量・混合工程の途中停止

瞬低時間が短くても、接触器が一度釈放すると、その後電圧が戻っても設備が自動復帰しない場合があります。

影響を受けやすい機器

電源保持時間の短い制御電源、交流電源で直接駆動する接触器、低電圧保護を持つインバーターなどは瞬低の影響を受けやすい傾向があります。

同じ電源系統でも、機器ごとの入力電源回路、設定、負荷状態によって停止する機器と継続動作する機器が分かれる場合があります。

瞬低の測定方法

瞬低を確認するには、電圧波形や実効値を短い周期で記録できる電源品質測定器を使用します。通常の監視装置で長い周期の平均値だけを保存している場合、短時間の瞬低を捉えられないことがあります。

測定では、低下した電圧の大きさ、継続時間、発生時刻、対象相を記録します。三相回路では、一相だけ低下する場合と三相すべてが低下する場合があります。

原因を調べる方法

瞬低発生時刻と、モーター起動、溶接機運転、設備停止、雷情報などを照合します。特定設備の運転と一致する場合は、起動電流、電源容量、配線の電圧降下を確認します。

受電点と設備側の両方で電圧を測定すると、瞬低が上位系統から来ているのか、工場内で発生しているのかを判断しやすくなります。

瞬低対策

対策は、保護する設備の重要度、必要な保持時間、消費電力によって選定します。

  • 制御電源や通信機器への無停電電源装置の設置
  • DC電源の保持用コンデンサやバックアップ電源の追加
  • 瞬低補償装置の採用
  • 接触器やリレーの保持回路の見直し
  • 大容量モーターの始動方式や起動順序の変更
  • 重要負荷と大電流負荷の電源系統分離

設備全体を補償すると容量と費用が大きくなるため、PLC、通信、操作端末など重要な制御系だけを保護する方法もあります。

復電時の制御

瞬低や停電から電圧が復帰した際に、設備が無条件で再起動すると危険な場合があります。モーター、コンベヤ、バルブなどは、設備状態を確認してから再起動させます。

復電時には、出力をいったん安全側へ戻し、センサ状態、残留原料、通信接続、異常履歴を確認します。工程途中で停止した場合は、自動復旧と手動復旧のどちらを採用するかを事前に決めます。

データ保護

電圧低下中にメモリーへ書き込むと、設定値や実績データが破損する可能性があります。電圧低下を早めに検出し、重要データを不揮発性メモリーへ保存してから停止する処理を設けます。

保存中の電源を維持するため、コンデンサやバックアップ電源を利用する場合があります。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、電圧低下の検出、警報出力、履歴保存、PLCやマイコンへの入力、停電・復電時の制御を検討します。

制御盤、電源回路、PLC、タッチパネル、通信、データ保存を組み合わせ、設備の安全停止と復旧手順を含めた構成に対応します。

よくある質問

Q. 瞬低は通常の電圧計で確認できますか?

A. 表示更新が遅い電圧計では捉えられないことがあります。短い周期で記録できる測定器が必要です。

Q. 瞬低と瞬時停電は同じですか?

A. 瞬低は電圧が低下する現象、瞬時停電は短時間電圧が失われる現象です。設備への影響は似る場合があります。

Q. PLCだけを瞬低から保護できますか?

A. 制御電源へUPSやバックアップ電源を設け、PLCや通信機器だけを保護する構成を検討できます。

Q. 瞬低後に設備を自動再起動してもよいですか?

A. 設備状態や安全性を確認せず再起動すると危険なため、復旧条件と再起動手順を設計する必要があります。

Q. 瞬低の発生時刻を記録できますか?

A. 電圧低下を検出して時刻、相、継続時間などを保存する構成を検討できます。

関連ワード

総合高調波ひずみ率(THD)とは、電圧や電流の波形に含まれる高調波成分の大きさを、基本波に対する割合で表した指標です。THDはTotal Harmonic Distortionの略で、電圧ではTHD-V、電流ではTHD-Iと表記されることがあります。

理想的な交流波形は滑らかな正弦波ですが、インバーター、整流器、スイッチング電源などの非線形負荷が接続されると波形がひずみます。THDを確認することで、波形全体が基本波からどの程度ひずんでいるかを数値として把握できます。

ハカルプラスでは、高調波、電圧、電流、電力、力率などを計測し、設備状態の表示、警報、通信、データ保存に活用できる構成を検討します。

THDの算出方法

THDは、第2高調波以降の各高調波成分を合成し、基本波成分に対する割合として求めます。

THD=√(第2高調波2+第3高調波2+…)÷基本波×100

例えば、基本波電流が100Aで、高調波成分の二乗和平方根が20Aの場合、THD-Iは20%です。

測定器によって、対象とする最高次数や演算方式が異なる場合があります。複数の機器を比較するときは、測定帯域と演算条件を確認します。

THD-VとTHD-Iの違い

THD-Vは電圧波形のひずみ率、THD-Iは電流波形のひずみ率です。負荷機器が高調波電流を発生すると、その電流が配線や変圧器のインピーダンスを流れることで高調波電圧が生じます。

そのため、発生源を調査する場合はTHD-I、系統全体や他設備への影響を調べる場合はTHD-Vが重要になります。ただし、いずれか一方だけでは原因と影響を判断しにくいため、電圧・電流の両方を確認します。

THDが高くなる主な設備

  • インバーターやサーボアンプ
  • スイッチング電源を使用する情報機器
  • LED照明や電子安定器
  • 無停電電源装置や充電器
  • 整流器、溶接機、電力変換装置

同じ種類の負荷でも、回路方式、負荷率、入力リアクトルの有無などによって高調波の大きさは変わります。

THDだけで判断できない理由

THDは基本波を基準とする割合です。そのため、負荷電流が非常に小さい状態では、実際の高調波電流が小さくてもTHD-Iが大きく表示される場合があります。

例えば、基本波が2A、高調波が1AならTHDは50%ですが、基本波が100A、高調波が20AならTHDは20%です。後者の方が実際に流れている高調波電流は大きくなります。

設備への影響を評価する際は、THDだけでなく、各次数の電流値、基本波電流、設備容量、運転状態を併せて確認します。

各次数の確認

THDは波形ひずみ全体を一つの数値で示すため、どの次数が大きいかは分かりません。原因を調べるには、第3、第5、第7など各次数の値を確認します。

単相の電子機器が多い設備では第3高調波、三相整流負荷では第5、第7高調波などが現れやすい傾向があります。対象次数は負荷の回路方式によって異なります。

設備への影響

高調波が増えると、基本波だけで運転している場合より配線や変圧器の実効電流が増え、発熱や損失が大きくなることがあります。

  • 変圧器、配線、リアクトルの温度上昇
  • 進相コンデンサの過熱・損傷
  • 三相4線式回路の中性線電流増加
  • モーターの振動、騒音、損失増加
  • 計測・制御・通信機器の誤動作

設備増設後に温度上昇や異音が発生した場合は、負荷電流とともにTHDや各高調波次数を確認します。

THDの測定方法

高調波計測に対応した電力計測器や電源品質測定器を使用し、電圧・電流波形を一定周期でサンプリングして演算します。

設備全体を見る場合は受電点や変圧器二次側、発生源を見る場合はインバーターや負荷回路の入力側で測定します。負荷率によってTHDが変わるため、通常運転、最大負荷、軽負荷など複数条件で確認します。

測定時の注意点

CTや計測器の周波数特性が不足すると、高次高調波を正しく測定できません。確認したい次数に対応する測定帯域があるかを確認します。

インバーター出力側は高速スイッチング波形であり、一般的な商用電源向け計測器では正確に測定できない場合があります。測定目的に適した機器を選定します。

異常値が見つかった場合の確認

THD-Iが高い場合は、運転しているインバーター、電源装置、LED照明などを確認します。設備を順に停止した際の変化を比較すると、主な発生源を特定しやすくなります。

THD-Vが高い場合は、受電点と各分岐回路を比較し、高調波電流が流れる経路、変圧器容量、配線インピーダンス、進相コンデンサなどを確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、高調波計測に対応した機器を用いて、THD、次数別高調波、電圧、電流、電力、力率を監視する構成を検討します。

現在値の表示、上限警報、通信、データ保存を組み合わせ、設備増設前後の比較、異常傾向の把握、保全判断に活用できます。

よくある質問

Q. THDが高いと必ず設備に異常がありますか?

A. 必ずしも異常とは限りません。負荷電流が小さい場合は、実際の高調波電流が小さくてもTHDが高く表示されます。

Q. THD-VとTHD-Iはどちらを測ればよいですか?

A. 発生源の確認にはTHD-I、電源系統や他設備への影響確認にはTHD-Vが重要です。可能であれば両方を測定します。

Q. THDだけで高調波対策を選定できますか?

A. 各次数、高調波電流値、負荷方式、系統構成も確認して対策を検討する必要があります。

Q. インバーターを追加するとTHDは増えますか?

A. 増える場合がありますが、インバーターの回路方式、リアクトル、負荷率によって異なります。

Q. THDを継続的に記録できますか?

A. 対応する計測器と通信・保存機能を組み合わせ、時間変化を記録する構成を検討できます。

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無効電力・無効電力量とは、交流回路において、モーターや変圧器の磁界をつくるために電源と負荷の間を往復する電力と、その一定期間の積算値です。無効電力はvar(バール)やkvar(キロバール)、無効電力量はvarhやkvarhで表します。

無効電力は、モーターを回転させる、ヒーターで熱を発生させるといった実際の仕事には直接使われません。しかし、無効電力が大きくなると、同じ有効電力を使用する場合でも流れる電流が増え、配線、変圧器、受電設備の負担や電力損失が増加します。

ハカルプラスでは、有効電力、無効電力、皮相電力、力率を計測し、表示、警報、データ保存、進相コンデンサの制御などへ活用する機器・システムを検討します。

無効電力が発生する仕組み

交流回路では、電圧と電流の大きさだけでなく、両者の波形の時間的なずれである位相差が生じることがあります。

抵抗負荷では、電圧と電流がほぼ同じタイミングで変化し、供給された電力の多くが熱などの仕事に利用されます。一方、モーター、変圧器、リアクトルなどの誘導性負荷では、磁界をつくるために電流の位相が電圧より遅れます。

この位相差によって、負荷で消費される有効電力とは別に、電源と負荷の間を往復する無効電力が発生します。

無効電力と無効電力量の違い

無効電力は、ある時点で発生している無効分の大きさを示します。設備の運転状態や進相コンデンサの投入状態をリアルタイムで確認するために使用します。

無効電力量は、無効電力を時間に沿って積算した値です。どの時間帯に無効電力が多かったか、力率改善設備が一定期間にどの程度機能したかを分析する際に利用できます。

無効電力量だけで設備状態を判断するのではなく、有効電力量、力率、運転時間と合わせて確認することが重要です。

有効電力・無効電力・皮相電力

交流設備の電力には、主に次の三つがあります。

  • 有効電力:モーターの回転や発熱など、実際の仕事に使用される電力
  • 無効電力:磁界などをつくるため、電源と負荷の間を往復する電力
  • 皮相電力:電圧と電流から求められる、設備全体の電力容量

有効電力はW、無効電力はvar、皮相電力はVAで表します。変圧器、発電機、配線などの容量は、実際に流れる電流と関係する皮相電力を考慮して選定します。

力率との関係

力率は、皮相電力のうち、どの程度が有効電力として利用されているかを示す値です。無効電力が大きくなると、一般に力率は低下します。

例えば、同じ100kWの有効電力を使用する設備でも、力率が低い設備ではより大きな電流が流れます。その結果、配線での電力損失が増え、変圧器や遮断器の容量にも余裕が必要になります。

ただし、力率が低い原因は負荷の種類や運転状態によって異なります。計測値を確認せずにコンデンサを追加すると、過補償になる場合があります。

進相コンデンサによる補償

モーターなどが発生させる遅れ無効電力は、進相コンデンサが発生させる進み無効電力によって打ち消すことができます。これにより、受電点から供給される無効電力を減らし、力率を改善します。

負荷が一定の場合は固定式コンデンサを使用できますが、設備の運転台数や負荷が変動する場合は、複数段のコンデンサを自動で投入・遮断する方式を検討します。

軽負荷時にコンデンサを投入しすぎると進み力率となり、電圧上昇や設備への悪影響につながる可能性があります。現在の無効電力や力率を確認しながら制御することが重要です。

無効電力を計測する目的

無効電力を計測すると、次のような状態を把握できます。

  • モーターや変圧器による無効電力の発生量
  • 進相コンデンサ投入前後の補償効果
  • 設備の運転台数に対する力率の変化
  • コンデンサや開閉器の故障・容量低下
  • 進み力率や過補償の発生

有効電力だけでは、負荷が実際に必要としている電気設備容量を十分に把握できない場合があります。無効電力と皮相電力を併せて計測することで、受配電設備の利用状況を詳しく確認できます。

無効電力量の活用

無効電力量を時間帯別、日別、月別に保存すると、設備の稼働状況と無効電力の発生傾向を比較できます。

例えば、夜間や休日にも無効電力量が増加している場合は、停止中の設備に進相コンデンサが接続されたままになっている可能性があります。また、同じ生産量でも無効電力量が増加していれば、力率改善設備の状態を点検するきっかけになります。

高調波がある設備での注意点

インバーターやスイッチング電源が多い設備では、電圧・電流波形に高調波が含まれます。波形がひずんでいる場合、単純な位相差だけでは電力状態を正確に表せないことがあります。

進相コンデンサと系統のリアクタンスが共振すると、高調波電流が増加し、コンデンサの過熱や故障につながる可能性があります。高調波を含む設備では、リアクトル付きコンデンサや高調波対策機器の採用を検討します。

計測時の確認事項

無効電力を正しく演算するには、電圧相と電流相の対応、CTの向き、配電方式を正しく設定する必要があります。

相の組合せやCT方向を間違えると、遅れ・進みの判定が逆になったり、無効電力が不自然な値になったりします。設置後は、有効電力、無効電力、皮相電力、力率の関係を確認します。

設備によっては、回生運転や発電設備から系統側へ電力が戻る場合があります。受電・送電、遅れ・進みを区別して計測できる機器を選定します。

異常監視への活用

進相コンデンサを投入しても無効電力が減少しない場合は、コンデンサ容量の低下、ヒューズ切れ、開閉器の動作不良などが考えられます。

反対に、負荷停止後も進み無効電力が大きい場合は、コンデンサが切り離されていない可能性があります。上限・下限や力率の範囲を設定し、一定時間継続した場合に警報を出すことで、異常の早期発見に利用できます。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、有効電力、無効電力、皮相電力、力率、各積算値を計測する電力計測機器を設計・開発してきました。

電圧入力、CT、計測演算、表示回路、警報出力、通信機能を組み合わせ、設備別の無効電力監視や力率管理を検討します。

複数段の進相コンデンサを負荷状態に応じて投入・遮断する力率制御についても、目標力率、負荷変動、投入間隔、過補償防止などを確認して構成します。

よくある質問

Q. 無効電力は無駄に消費される電力ですか?

A. 実際の仕事には直接使われませんが、モーターや変圧器が磁界をつくるために必要となる電力です。

Q. 無効電力が大きいと何が問題になりますか?

A. 同じ有効電力でも電流が増え、配線損失や受配電設備の負担が大きくなります。

Q. 進相コンデンサを増やせば力率は高くなりますか?

A. 改善できますが、投入しすぎると進み力率となるため、負荷に合わせた容量と制御が必要です。

Q. 無効電力量を記録するメリットは何ですか?

A. 時間帯ごとの無効電力発生量や、力率改善設備の効果・異常を長期的に確認できます。

Q. 既設設備でも無効電力を計測できますか?

A. 電圧入力とCTを設置できれば、既設設備へ計測機器を追加できる場合があります。

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デマンド電力は、一定の計量時間内に使用した電力量を平均電力へ換算した値です。工場、ビル、店舗などの高圧・特別高圧受電設備では、一般に30分単位で算出されるデマンド値が、受電設備の運用、契約電力の管理、電力使用の平準化などに用いられます。

デマンド電力は、ある瞬間に記録した最大の電力ではありません。計量時間全体で使用した電力量から求める平均値であるため、大型設備を短時間だけ運転した場合と、同じ設備を長時間運転した場合では、最終的なデマンド値が異なります。

デマンド電力の計算方法

計量時間内に使用した電力量をE、計量時間をT、デマンド電力をPとすると、次の式で表されます。

P=E÷T

Eの単位をkWh、Tの単位をhとした場合、Pの単位はkWです。計量時間を分で扱う場合は、次の式でも求められます。

P=E×60÷計量時間(分)

30分は0.5時間であるため、30分間のデマンド電力は次のように簡略化できます。

P=E÷0.5=2E

例えば、30分間に200kWhを使用した場合、デマンド電力は400kWです。250kWhを使用した場合は500kWとなります。

運転時間によるデマンド値の違い

500kWの設備を30分間連続して運転した場合、使用電力量は次のようになります。

E=500×0.5=250kWh

したがって、この30分間のデマンド電力は500kWです。

一方、同じ500kWの設備を30分時限のうち10分間だけ運転した場合、使用電力量は約83.3kWhです。

E=500×10÷60≒83.3kWh

この場合の30分デマンドは次のようになります。

P=83.3÷0.5≒166.6kW

実際の設備では、ほかの負荷も同時に使用されるため、各設備の使用電力量を合計した値からデマンド電力が求められます。

瞬時電力との違い

瞬時電力は、その時点で設備が使用している電力です。複数のモーター、ヒーター、空調設備などが同時に運転すると、大きな値になります。

デマンド電力は、計量時間内に変化した瞬時電力を平均した値です。瞬時電力をP(t)、デマンド時限をTとすると、デマンド電力Pdは次のようにも表せます。

Pd=1÷T×∫0TP(t)dt

これは、計量時間内の瞬時電力を積算して使用電力量を求め、その値を計量時間で割ることを示しています。一時的に大きな電力を使用しても継続時間が短ければ影響は限定されますが、高負荷が長く続くとデマンド値は上昇します。

最大デマンド電力

各デマンド時限で算出された値のうち、対象期間内で最も大きい値を最大デマンド電力と呼びます。例えば、ある日のデマンド値が次のように推移した場合、その日の最大デマンド電力は530kWです。

  • 9時00分~9時30分:420kW
  • 9時30分~10時00分:480kW
  • 10時00分~10時30分:530kW
  • 10時30分~11時00分:460kW

最大デマンドは、大型設備の運転が重なった時間帯、空調負荷が増える時間帯、生産量が多い時間帯などに発生しやすくなります。個々の設備の消費電力が変わらなくても、運転時間が重なるだけで上昇するため、起動時刻を分散することが有効な場合があります。

デマンド電力の計測方法

デマンド電力は、取引用電力量計や電力計測機器から取得した電力量パルス、通信データなどを用いて演算します。

1パルス当たりの電力量をK、計量時間内に入力されたパルス数をNとすると、使用電力量Eは次の式で求められます。

E=K×N

デマンド電力は、さらに計量時間Tで割って求めます。

P=K×N÷T

例えば、1パルス当たり1kWhの信号を30分間に200パルス受信した場合、使用電力量は200kWh、デマンド電力は400kWです。

通信式の電力計を使用する場合は、積算電力量や瞬時電力を一定周期で取得します。通信周期が長い場合やデータ欠落がある場合は、時限途中の表示や予測値に影響するため、用途に適した更新周期と異常処理が必要です。

時限途中の値と予測デマンド

時限開始から現在までに使用した電力量をEnow、デマンド時限全体をTとすると、確定値に対する現在の積上げ値Paccは次の式で表せます。

Pacc=Enow÷T

30分時限の開始から10分間で80kWhを使用した場合、積上げ値は160kWです。これは時限途中までに確定している部分であり、その後の使用電力量が加算されて最終値が決まります。

現在の使用状態が時限終了まで続くと仮定して算出する値が、予測デマンドです。現在の使用電力をPinst、残り時間をtremとすると、予測デマンドPpredは次の式で求められます。

Ppred=(Enow+Pinst×trem)÷T

予測値を監視することで、デマンド値が確定する前に警報を出したり、設備の運転を調整したりできます。ただし、大型設備の起動などで負荷が急変すると予測値も変化するため、一定の余裕を持った管理が必要です。

デマンド値が上昇する主な要因

  • 大型モーター、ヒーター、電気炉の同時運転
  • 空調設備や冷凍設備の集中稼働
  • コンプレッサーやポンプの同時起動
  • 乾燥設備、充電設備などの集中使用
  • 生産量増加による設備稼働率の上昇
  • 停電復旧後の設備一斉起動

デマンド値を抑えるには、設備容量を小さくするだけでなく、運転時間をずらす、不要な負荷を停止する、インバーターで出力を下げるなど、同時使用電力を分散することが重要です。

計測・運用上のポイント

計量時限を一致させる

監視装置と取引用電力量計のデマンド時限がずれると、表示値と実際のデマンド値に差が生じます。時限同期信号や時計合わせを利用し、開始時刻を一致させます。

パルス定数と変成比を確認する

電力量パルスの定数、CT比、VT比、乗率などを誤ると、電力量とデマンド電力が正しく表示されません。計測機器や電力量計を更新した場合は、新旧仕様を確認して設定値を見直します。

欠測と通信異常を監視する

パルス信号や通信データが途絶えると、デマンド値が実際より小さく表示される可能性があります。入力信号の未更新、通信断、時限同期異常を監視し、欠測時の警報やデータ処理を定めます。

設備別電力と併せて分析する

受電点全体のデマンド値だけでは、上昇原因となった設備を特定できないことがあります。主要設備や系統ごとの瞬時電力、使用電力量、稼働状態を保存すると、原因分析や運転時間の見直しに役立ちます。

異常時の動作と保守

計測信号が途絶えた場合は、デマンド値や予測値の信頼性が失われます。監視装置では、パルス未入力、通信異常、時限同期異常、内部時計異常などを検出し、警報表示や履歴保存を行います。

停電が発生した場合は、時限途中の積算値や履歴を保持できる構成が必要です。復電後に設備が一斉起動するとデマンドが急上昇する可能性があるため、設備を順番に復帰させる制御も検討します。

定期的に、取引用電力量計や請求明細の値と監視システムの値を照合し、時限、パルス定数、変成比、時計設定に誤りがないか確認します。設備増設や受電方式の変更時にも設定の見直しが必要です。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、電力量パルスや電力計測データを取り込み、現在デマンド、予測デマンド、最大デマンドなどを演算・表示するシステムを検討します。

電力計測機器、通信機器、制御盤、PLC、タッチパネル、組み込みソフトなどを組み合わせ、計量時限の管理、CT・VT比やパルス定数の設定、警報判定、欠測監視、履歴保存を構成します。

時限ごとのデマンド値、最大値、発生日時、瞬時電力、設備別使用電力量などを保存し、グラフ表示や帳票出力へ利用することもできます。上位監視システムや生産管理システムとの連携については、通信方式、保存項目、データ更新周期、通信断時の処理を確認して検討します。

また、予測デマンドが目標値へ近づいた場合に警報を出す構成や、PLCと連携して対象負荷を停止・抑制するデマンド制御にも対応します。既設設備の更新では、既存の計測信号、通信仕様、保存データとの互換性を確認し、必要な改造範囲を整理します。

よくある質問

Q. 瞬時電力が契約電力を超えると、すぐに最大デマンドも超えますか?

A. 瞬時電力が短時間だけ上昇した場合は、その値がそのままデマンド電力になるわけではありません。ただし、高い電力が長く続くほど30分平均へ与える影響は大きくなります。

Q. 監視装置のデマンド値と請求明細の値が異なる場合は何を確認しますか?

A. デマンド時限の同期、パルス定数、CT・VT比、計測点、通信データの欠測などを確認します。監視装置と取引用電力量計で対象範囲が異なる場合もあります。

Q. 設備を増設した場合はデマンド監視の設定変更が必要ですか?

A. 増設設備の容量や運転時間によって最大デマンドが上昇する可能性があります。警報目標値、設備別計測、負荷制御対象などを見直すことが重要です。

Q. 停電中のデマンドデータは失われますか?

A. 監視装置の仕様によって異なります。不揮発性メモリーやバックアップ電源を備えた構成では、時限途中の値や履歴を保持できる場合があります。復電後のデータ処理も事前に確認します。

Q. 過去のデマンド値から上昇原因を特定できますか?

A. デマンド値だけでは難しい場合があります。設備別電力、瞬時電力、稼働信号、生産実績などを同じ時刻で保存すると、どの設備や工程が上昇に影響したか分析しやすくなります。

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