Technology
漏電(絶縁監視)
(ろうでん(ぜつえんかんし))
漏電監視(絶縁監視)とは、電気設備の配線や機器から大地へ流れる電流を測定し、絶縁劣化の兆候を継続的に監視することです。電気設備の老朽化、配線被覆の損傷、水分や粉じんの侵入などによって絶縁性能が低下すると、感電、火災、設備停止につながる可能性があります。
漏電遮断器は、漏電電流が設定値を超えた際に回路を遮断して事故を防ぎます。一方、絶縁監視装置は、遮断に至る前の小さな変化を常時測定し、警報や記録によって早期点検を促すことを目的とします。
接地線に流れる電流には、実際の絶縁劣化による電流だけでなく、電気機器のノイズフィルタやインバーターなどを介して正常時にも流れる電流が含まれます。そのため、単純に電流の大きさだけを見て漏電と判断するのではなく、電流の性質や変化を分析することが重要です。
漏電が発生する仕組み
電気設備では、電線や機器内部の充電部と、金属ケースや大地との間を絶縁材料で隔てています。絶縁が正常であれば、充電部から大地へ流れる電流は極めて小さく保たれます。
しかし、絶縁材料の経年劣化、過熱、振動、薬品、水分、粉じん、動物による損傷などによって絶縁抵抗が低下すると、意図しない経路へ電流が流れます。この電流が漏電電流です。
電圧をV、絶縁抵抗をR、絶縁部を流れる電流をIとすると、基本的な関係はオームの法則により次のように表せます。
I=V/R
電源電圧が200V、絶縁抵抗が1MΩの場合、流れる電流は0.2mAです。絶縁抵抗が100kΩまで低下すると、電流は2mAとなります。絶縁抵抗の低下に伴い、漏電電流は大きくなります。
実際の設備では、抵抗成分だけでなく、配線やノイズフィルタの静電容量を介した電流も含まれるため、単純な抵抗計算だけでは状態を判断できません。
漏電監視の主な目的
- 絶縁劣化の早期発見
- 感電や火災事故の防止
- 漏電遮断器が動作する前の予兆監視
- 設備停止前の計画的な点検・修理
- 複数回路の漏電傾向や発生箇所の把握
- 遠隔地にある設備の異常通報
絶縁監視を行うことで、漏電が大きくなって設備が突然停止する前に、保全担当者が点検できる可能性が高まります。
接地線を利用した絶縁監視
接地線は、機器の金属ケースなどを大地へ接続し、漏電時の感電リスクを低減するための配線です。絶縁劣化などによって機器のケースへ電流が流れると、その一部が接地線を通って大地へ流れます。
接地線へ電流センサを取り付け、その電流を継続的に測定することで、設備全体の絶縁状態を監視できます。
この方式は、既設の接地線を利用して監視できる利点があります。一方、接地線には複数の機器から流れ込む電流が合流するため、異常が発生した回路や機器を特定するには追加の調査が必要です。
零相変流器を利用した監視
零相変流器は、電源線をまとめて貫通させ、各線を流れる電流の差を検出するセンサです。正常な回路では、行きと戻りの電流が等しく、合計はほぼゼロになります。
電流の一部が大地へ漏れると、電源線を戻らない電流が生じ、その差が零相電流として検出されます。
回路単位で設置すれば、どの系統で漏電電流が増えているかを把握しやすくなります。主幹だけでなく、分岐回路ごとに監視する構成もあります。
漏電電流に含まれる2種類の成分
絶縁劣化に起因する電流
電線被覆や機器内部の絶縁が劣化し、充電部から大地へ流れる電流です。抵抗性漏れ電流とも呼ばれます。
絶縁劣化が進むほど増加する傾向があり、感電や火災の危険性を判断するうえで重要な成分です。
機器の構造上流れる電流
インバーター、スイッチング電源、サーボアンプ、電子機器などには、電気ノイズを抑えるためのノイズフィルタが内蔵されています。
ノイズフィルタに使用されるコンデンサを介して、正常な状態でも接地線へ電流が流れることがあります。この電流は容量性漏れ電流と呼ばれ、必ずしも絶縁劣化を意味しません。
電子機器やインバーターが多い設備では、正常時の容量性電流だけでも比較的大きな値になることがあります。
抵抗性成分と容量性成分の区別
接地線や電源回路を流れる電流の大きさだけを監視すると、ノイズフィルタによる正常な電流を漏電異常と判定する可能性があります。
交流電圧と同じ位相で流れる抵抗性成分は、主に絶縁抵抗の低下と関係します。一方、コンデンサを介して流れる容量性成分は、電圧に対して位相が進みます。
電圧と電流の位相関係や周波数成分を解析し、抵抗性成分と容量性成分を分離することで、実際の絶縁劣化をより的確に評価できます。
ただし、負荷構成や高調波の影響によって波形は複雑になります。測定対象の電源方式、接地方式、接続機器を確認したうえで監視方法を選定します。
絶縁抵抗測定との違い
絶縁抵抗測定は、一般に設備を停電させ、絶縁抵抗計から直流電圧を加えて抵抗値を測定する方法です。電路や機器の絶縁状態を直接確認する点検方法として広く使用されています。
絶縁監視は、設備を運転したまま漏れ電流を連続測定し、変化や異常を監視する方法です。
絶縁監視だけで絶縁不良の場所や原因を完全に特定できるとは限りません。監視装置で異常の兆候を検出し、絶縁抵抗測定や回路切り分けによって詳しく調査する流れが一般的です。
警報値の設定
漏電監視では、あらかじめ設定した電流値を超えた場合に警報を出します。ただし、正常時にも一定の漏れ電流が存在する設備では、一般的な値をそのまま警報値にすると不要な警報が発生します。
設備の正常運転時における基準値を確認し、その変動幅、接続機器の増減、運転状態を考慮して警報値を設定します。
注意警報と異常警報の2段階を設け、注意レベルでは点検を促し、異常レベルでは設備停止や緊急通報を行う構成もあります。
絶対値だけでなく、一定期間における増加量や上昇傾向を監視すると、緩やかな絶縁劣化を捉えやすくなります。
常時監視と傾向管理
絶縁劣化は、突然発生する場合だけでなく、長期間かけて徐々に進行する場合があります。測定値を一定周期で保存し、日、週、月単位で比較することで、劣化傾向を把握できます。
湿度や降雨によって値が上昇する設備、特定の機械を運転したときだけ値が増える設備など、運転条件との関係も確認できます。
漏電電流、抵抗性成分、警報履歴、設備の運転状態を関連付けて保存すると、異常原因の切り分けに役立ちます。
遠隔監視・異常通報
無人設備や遠隔地にある受電設備では、異常が発生しても現地で直ちに確認できない場合があります。
絶縁監視装置の警報を通信機器へ入力し、携帯電話回線などを利用して担当者へ通報することで、異常の早期把握が可能になります。
通報内容には、発生日時、測定値、監視回路、警報レベルなどを含めます。通信が切断している場合に異常を見逃さないよう、定期通信や通信異常監視も検討します。
配電盤用計器への組込み
電流、電圧、電力などを測定する配電盤用メーターへ絶縁監視機能を組み込めば、電力計測と漏電監視を1台で行える場合があります。
盤面の機器数や配線を抑えながら、通常の電気計測値と漏電状態を同じ表示器や通信経路で確認できます。
上位監視システムへ通信すれば、複数の配電盤における電力使用量と絶縁状態をまとめて管理する構成も可能です。
測定値に影響する要因
インバーターや電子機器
インバーターのスイッチングやノイズフィルタによって、高周波成分を含む接地電流が流れます。運転周波数や接続台数によって測定値が変化することがあります。
配線長と対地静電容量
電線と大地の間には静電容量があります。配線が長くなるほど容量性電流が増える傾向があります。
水分・湿度・汚れ
端子台や絶縁物へ水分、粉じん、油、塩分などが付着すると、表面を通って電流が流れやすくなります。雨天時や高湿度時だけ漏電電流が増える場合があります。
接地線の分岐・共用
複数設備が同じ接地線を共用している場合、測定点より上流に流れる電流が合算されます。監視対象範囲を明確にしてセンサを設置します。
異常時の切り分け
漏電警報が発生した場合は、測定値と警報発生時の運転設備を確認します。特定の機器を起動した直後に値が増える場合は、その回路を重点的に調査します。
分岐回路を順番に停止または切り離し、漏電電流が低下する回路を確認することで、異常系統を絞り込めます。
異常回路を特定した後は、電線、端子台、モーター、ヒーター、インバーターなどについて、絶縁抵抗測定、外観点検、湿気や汚れの確認を行います。
電気設備の点検や回路の切離しは危険を伴うため、資格と知識を持つ担当者が安全を確保して実施します。
誤警報が発生する場合の確認
設備に異常が見つからないにもかかわらず警報が発生する場合は、正常時の容量性電流、インバーターの運転状態、警報値、測定周波数帯域を確認します。
新しい電子機器を追加した後に警報が発生するようになった場合は、ノイズフィルタを介して流れる電流が増えた可能性があります。
警報を止めるために設定値を無条件で引き上げると、実際の絶縁劣化を検出できなくなるおそれがあります。抵抗性成分と容量性成分を確認し、設備状態に合った監視方法を検討します。
停電・通信異常時の処理
停電時には監視装置も停止する場合があります。復電後は、測定機能、警報出力、通信状態が正常に復帰していることを確認します。
停電前後の測定値や警報履歴を保持できれば、異常がいつ発生したかを確認しやすくなります。
遠隔通報設備では、監視装置の異常だけでなく、通信回線や通信機器の故障も監視します。一定時間データが届かない場合を通信異常として通知する方法があります。
保守・点検
定期点検では、電流センサの取付状態、接地線、端子、通信配線、警報出力を確認します。
試験電流や模擬入力を使用し、設定値を超えた際に表示、接点出力、遠隔通報が正常に動作するかを確認します。
測定値の長期傾向を確認し、通常値から徐々に増加している場合は、警報に達していなくても点検を検討します。
設備の増設、インバーターの追加、配線変更を行った場合は、正常時の漏れ電流も変化する可能性があるため、基準値と警報値を再確認します。
既設設備への追加・更新
既設設備へ絶縁監視を追加する場合は、電源方式、接地方式、監視対象回路、接地線や電源線の配線経路を確認します。
電流センサを設置する空間、配電盤内の電源、警報出力、通信方法も確認します。回路単位で監視する場合は、零相変流器を取り付けられる位置が必要です。
既設監視装置を更新する場合は、測定範囲、警報設定、センサ仕様、接点出力、通信方式、保存データを確認します。新旧装置で測定方式が異なる場合は、表示値の単純比較ができないことがあります。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、接地線に流れる電流を継続的に監視し、絶縁劣化の兆候を把握するための計測機器を開発・販売しています。
実際の絶縁劣化に起因する抵抗性成分と、ノイズフィルタなどを介して流れる容量性成分を区別し、設備状態を評価する技術を保有しています。
配電盤用メーターへ絶縁監視機能を組み込み、電力計測と合わせて常時監視する製品や、受電設備に設置して異常発生時に携帯電話回線で通報する製品の開発実績があります。
監視対象、電源・接地方式、通常時の漏れ電流、必要な警報方法を確認し、表示、接点出力、通信、データ保存を含めた構成を検討します。
よくある質問
Q. 接地線に電流が流れていれば、すべて漏電ですか?
A. いいえ。ノイズフィルタや配線の静電容量を介して、正常時にも電流が流れる場合があります。抵抗性成分と容量性成分を区別して判断する必要があります。
Q. 漏電遮断器がある場合でも絶縁監視は必要ですか?
A. 漏電遮断器は事故時の遮断を目的とします。絶縁監視は遮断前の小さな変化を把握し、計画的な点検につなげるために利用されます。
Q. 漏電警報が出た場合は、どのように発生箇所を探しますか?
A. 分岐回路を順番に切り分け、電流が低下する回路を確認します。その後、対象機器や配線の絶縁抵抗、汚れ、水分、損傷を点検します。
Q. インバーターを追加すると漏電電流が増えることがありますか?
A. ノイズフィルタや高周波成分の影響によって、正常時の接地電流が増える場合があります。追加後に基準値と警報値を確認します。
Q. 既設の受電設備へ遠隔通報機能を追加できますか?
A. 監視信号、盤内スペース、電源、通信環境を確認し、携帯電話回線などを利用した異常通報を追加できる場合があります。