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位相

(いそう)

位相とは、振動や波動、交流電圧・電流などの周期的に変化する量が、1周期のどの位置にあるかを表すものです。正弦波では、波が立ち上がっている途中なのか、最大値に達しているのか、ゼロを通過しているのかといった時間的な位置関係を、角度として示します。

電力計測では、電圧と電流の位相関係が特に重要です。電圧と電流の波形が同じタイミングで変化する場合は位相が一致しており、一方の波形がもう一方より早い、または遅い場合は位相差があると表現します。この位相差は、力率や有効電力、無効電力の計測に関係します。

位相を表す式

正弦波として変化する量は、次のような式で表せます。

f(t)=A sin(ωt+θ)

ここで、Aは振幅、ωは角周波数、tは時間、θは初期位相を表します。このうち、ωt+θが時刻tにおける位相です。

角周波数ωは、周波数をfとすると次の式で求められます。

ω=2πf

例えば周波数が50Hzの場合、1秒間に50周期の変化を繰り返します。角周波数は2π×50となり、1周期が経過するごとに位相は2πラジアン、すなわち360度進みます。

度とラジアン

位相を表す単位には、度(°)とラジアン(rad)が使用されます。度は円を360等分した表現で、日常的にも理解しやすい単位です。ラジアンは、円弧の長さと半径の比を利用した角度の表現で、数式や信号処理では広く使用されます。

度とラジアンの主な関係は次のとおりです。

  • 360°=2πrad
  • 180°=πrad
  • 90°=π/2rad
  • 1°=π/180rad
  • 1rad=約57.3°

正弦波では、位相が0°のときにゼロから正方向へ立ち上がり、90°で最大値、180°で再びゼロ、270°で最小値、360°で元の状態へ戻ります。

時間と位相の関係

周期がT秒の波形では、時間差Δtに相当する位相差φは、次の式で求められます。

φ=360°×Δt/T

周波数50Hzの交流では、1周期は1/50秒、つまり20msです。この波形で10ms経過すると、1周期の半分が経過したことになるため、位相は180°、すなわちπrad進みます。

同様に、50Hzで5msの時間差があれば90°、1msの時間差であれば18°の位相差に相当します。周波数が異なると、同じ時間差でも位相差は変わります。

位相差とは

同じ周波数を持つ2つの波形について、時間的なずれを角度で表したものが位相差です。一方の波形が基準波形より先に変化している場合は「位相が進んでいる」、後から変化している場合は「位相が遅れている」と表現します。

例えば、2つの正弦波が完全に一致している場合の位相差は0°です。一方が半周期ずれている場合は180°となり、片方が正の値のときに、もう片方は負の値となる反対の波形になります。

三相交流では、U相、V相、W相の3つの電圧がそれぞれ120°ずつ位相をずらして発生します。この位相関係によって、モーターを滑らかに回転させたり、大きな電力を効率よく送ったりできます。

電力計測における位相

交流回路では、負荷の種類によって電圧と電流の位相関係が変わります。電熱器のような抵抗性負荷では、電圧と電流の位相はおおむね一致します。

モーターや変圧器などの誘導性負荷では、一般に電流が電圧より遅れます。コンデンサを含む容量性負荷では、電流が電圧より進みます。この進み・遅れを含む位相差は、力率の算出や無効電力の判定に使用されます。

正弦波における有効電力Pは、電圧の実効値V、電流の実効値I、電圧と電流の位相差φを用いて、次のように表されます。

P=VI cosφ

cosφは力率を表します。電圧と電流の位相差が0°であればcosφは1となり、電圧と電流の積が有効電力になります。位相差が大きくなると、有効電力として利用される割合が低下します。

位相計測の方法

位相差を求めるには、基準となる波形と比較対象の波形を同じ時間軸上で測定します。波形がゼロを通過する時刻の差を測るゼロクロス方式や、サンプリングした波形データから演算する方式などがあります。

電力計測器では、電圧と電流を一定周期で同時に取り込み、それぞれの波形と時間的なずれを演算します。位相を正しく測定するためには、入力回路間の時間差、センサの特性、サンプリング周期、波形に含まれる高調波などを考慮する必要があります。

位相を扱う際の注意点

基準となる波形を明確にする

進み・遅れは、どの波形を基準にするかによって表現が変わります。電力計測では、一般に電圧を基準として、電流が進んでいるか遅れているかを示します。

周波数を確認する

位相差を時間差から求める場合は、周波数または周期が必要です。同じ1msの時間差でも、50Hzと60Hzでは位相差が異なります。

波形ひずみの影響を考慮する

インバーターやスイッチング電源を含む回路では、電圧や電流がきれいな正弦波にならないことがあります。高調波を含む波形では、単純なゼロクロスの時間差だけでは位相関係を適切に評価できない場合があります。

相順と配線を確認する

三相交流では、電圧入力と電流センサの相が一致していないと、位相差や電力を正しく測定できません。CTの取付方向や端子の極性が逆になっている場合も、電流の位相が180°反転したように計測されることがあります。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、交流電圧・電流の計測において、位相差を含む波形情報を処理し、電力、力率、無効電力などを演算する計測機器を開発しています。

電圧・電流のアナログ入力回路、同時サンプリング、マイコンによる演算処理、表示、通信出力までを含め、計測用途に応じた回路と組み込みソフトウェアを設計します。

また、三相交流の相順、CTの極性、配線状態などを考慮し、異常な計測値を確認しやすい表示・通信仕様を検討します。高調波を含む波形については、測定対象と必要な精度に応じてサンプリング条件や演算方法を設計します。

よくある質問

Q. 位相と位相差は何が違いますか?

A. 位相は1つの周期波形が現在どの位置にあるかを表し、位相差は2つの波形の時間的なずれを角度で表したものです。

Q. 50Hzの交流で1周期は何msですか?

A. 1/50秒なので20msです。10msは半周期に相当し、位相では180°、またはπradです。

Q. 電流の位相が遅れるとはどういう意味ですか?

A. 電圧の波形が変化した後を追うように、電流の波形が遅れて変化する状態です。モーターや変圧器などの誘導性負荷で見られます。

Q. 位相差があると消費電力はどうなりますか?

A. 電圧と電流の位相差が大きくなると力率が低下し、同じ電流でも有効電力として利用される割合が小さくなります。

Q. CTの向きを逆にすると位相は変わりますか?

A. CTの極性が逆になると、測定される電流波形が180°反転した状態になり、電力や力率の演算結果が正しくならない場合があります。

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