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デマンド電力
(デマンドでんりょく)
デマンド電力は、一定の計量時間内に使用した電力量を平均電力へ換算した値です。工場、ビル、店舗などの高圧・特別高圧受電設備では、一般に30分単位で算出されるデマンド値が、受電設備の運用、契約電力の管理、電力使用の平準化などに用いられます。
デマンド電力は、ある瞬間に記録した最大の電力ではありません。計量時間全体で使用した電力量から求める平均値であるため、大型設備を短時間だけ運転した場合と、同じ設備を長時間運転した場合では、最終的なデマンド値が異なります。
デマンド電力の計算方法
計量時間内に使用した電力量をE、計量時間をT、デマンド電力をPとすると、次の式で表されます。
P=E÷T
Eの単位をkWh、Tの単位をhとした場合、Pの単位はkWです。計量時間を分で扱う場合は、次の式でも求められます。
P=E×60÷計量時間(分)
30分は0.5時間であるため、30分間のデマンド電力は次のように簡略化できます。
P=E÷0.5=2E
例えば、30分間に200kWhを使用した場合、デマンド電力は400kWです。250kWhを使用した場合は500kWとなります。
運転時間によるデマンド値の違い
500kWの設備を30分間連続して運転した場合、使用電力量は次のようになります。
E=500×0.5=250kWh
したがって、この30分間のデマンド電力は500kWです。
一方、同じ500kWの設備を30分時限のうち10分間だけ運転した場合、使用電力量は約83.3kWhです。
E=500×10÷60≒83.3kWh
この場合の30分デマンドは次のようになります。
P=83.3÷0.5≒166.6kW
実際の設備では、ほかの負荷も同時に使用されるため、各設備の使用電力量を合計した値からデマンド電力が求められます。
瞬時電力との違い
瞬時電力は、その時点で設備が使用している電力です。複数のモーター、ヒーター、空調設備などが同時に運転すると、大きな値になります。
デマンド電力は、計量時間内に変化した瞬時電力を平均した値です。瞬時電力をP(t)、デマンド時限をTとすると、デマンド電力Pdは次のようにも表せます。
Pd=1÷T×∫0TP(t)dt
これは、計量時間内の瞬時電力を積算して使用電力量を求め、その値を計量時間で割ることを示しています。一時的に大きな電力を使用しても継続時間が短ければ影響は限定されますが、高負荷が長く続くとデマンド値は上昇します。
最大デマンド電力
各デマンド時限で算出された値のうち、対象期間内で最も大きい値を最大デマンド電力と呼びます。例えば、ある日のデマンド値が次のように推移した場合、その日の最大デマンド電力は530kWです。
- 9時00分~9時30分:420kW
- 9時30分~10時00分:480kW
- 10時00分~10時30分:530kW
- 10時30分~11時00分:460kW
最大デマンドは、大型設備の運転が重なった時間帯、空調負荷が増える時間帯、生産量が多い時間帯などに発生しやすくなります。個々の設備の消費電力が変わらなくても、運転時間が重なるだけで上昇するため、起動時刻を分散することが有効な場合があります。
デマンド電力の計測方法
デマンド電力は、取引用電力量計や電力計測機器から取得した電力量パルス、通信データなどを用いて演算します。
1パルス当たりの電力量をK、計量時間内に入力されたパルス数をNとすると、使用電力量Eは次の式で求められます。
E=K×N
デマンド電力は、さらに計量時間Tで割って求めます。
P=K×N÷T
例えば、1パルス当たり1kWhの信号を30分間に200パルス受信した場合、使用電力量は200kWh、デマンド電力は400kWです。
通信式の電力計を使用する場合は、積算電力量や瞬時電力を一定周期で取得します。通信周期が長い場合やデータ欠落がある場合は、時限途中の表示や予測値に影響するため、用途に適した更新周期と異常処理が必要です。
時限途中の値と予測デマンド
時限開始から現在までに使用した電力量をEnow、デマンド時限全体をTとすると、確定値に対する現在の積上げ値Paccは次の式で表せます。
Pacc=Enow÷T
30分時限の開始から10分間で80kWhを使用した場合、積上げ値は160kWです。これは時限途中までに確定している部分であり、その後の使用電力量が加算されて最終値が決まります。
現在の使用状態が時限終了まで続くと仮定して算出する値が、予測デマンドです。現在の使用電力をPinst、残り時間をtremとすると、予測デマンドPpredは次の式で求められます。
Ppred=(Enow+Pinst×trem)÷T
予測値を監視することで、デマンド値が確定する前に警報を出したり、設備の運転を調整したりできます。ただし、大型設備の起動などで負荷が急変すると予測値も変化するため、一定の余裕を持った管理が必要です。
デマンド値が上昇する主な要因
- 大型モーター、ヒーター、電気炉の同時運転
- 空調設備や冷凍設備の集中稼働
- コンプレッサーやポンプの同時起動
- 乾燥設備、充電設備などの集中使用
- 生産量増加による設備稼働率の上昇
- 停電復旧後の設備一斉起動
デマンド値を抑えるには、設備容量を小さくするだけでなく、運転時間をずらす、不要な負荷を停止する、インバーターで出力を下げるなど、同時使用電力を分散することが重要です。
計測・運用上のポイント
計量時限を一致させる
監視装置と取引用電力量計のデマンド時限がずれると、表示値と実際のデマンド値に差が生じます。時限同期信号や時計合わせを利用し、開始時刻を一致させます。
パルス定数と変成比を確認する
電力量パルスの定数、CT比、VT比、乗率などを誤ると、電力量とデマンド電力が正しく表示されません。計測機器や電力量計を更新した場合は、新旧仕様を確認して設定値を見直します。
欠測と通信異常を監視する
パルス信号や通信データが途絶えると、デマンド値が実際より小さく表示される可能性があります。入力信号の未更新、通信断、時限同期異常を監視し、欠測時の警報やデータ処理を定めます。
設備別電力と併せて分析する
受電点全体のデマンド値だけでは、上昇原因となった設備を特定できないことがあります。主要設備や系統ごとの瞬時電力、使用電力量、稼働状態を保存すると、原因分析や運転時間の見直しに役立ちます。
異常時の動作と保守
計測信号が途絶えた場合は、デマンド値や予測値の信頼性が失われます。監視装置では、パルス未入力、通信異常、時限同期異常、内部時計異常などを検出し、警報表示や履歴保存を行います。
停電が発生した場合は、時限途中の積算値や履歴を保持できる構成が必要です。復電後に設備が一斉起動するとデマンドが急上昇する可能性があるため、設備を順番に復帰させる制御も検討します。
定期的に、取引用電力量計や請求明細の値と監視システムの値を照合し、時限、パルス定数、変成比、時計設定に誤りがないか確認します。設備増設や受電方式の変更時にも設定の見直しが必要です。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、電力量パルスや電力計測データを取り込み、現在デマンド、予測デマンド、最大デマンドなどを演算・表示するシステムを検討します。
電力計測機器、通信機器、制御盤、PLC、タッチパネル、組み込みソフトなどを組み合わせ、計量時限の管理、CT・VT比やパルス定数の設定、警報判定、欠測監視、履歴保存を構成します。
時限ごとのデマンド値、最大値、発生日時、瞬時電力、設備別使用電力量などを保存し、グラフ表示や帳票出力へ利用することもできます。上位監視システムや生産管理システムとの連携については、通信方式、保存項目、データ更新周期、通信断時の処理を確認して検討します。
また、予測デマンドが目標値へ近づいた場合に警報を出す構成や、PLCと連携して対象負荷を停止・抑制するデマンド制御にも対応します。既設設備の更新では、既存の計測信号、通信仕様、保存データとの互換性を確認し、必要な改造範囲を整理します。
よくある質問
Q. 瞬時電力が契約電力を超えると、すぐに最大デマンドも超えますか?
A. 瞬時電力が短時間だけ上昇した場合は、その値がそのままデマンド電力になるわけではありません。ただし、高い電力が長く続くほど30分平均へ与える影響は大きくなります。
Q. 監視装置のデマンド値と請求明細の値が異なる場合は何を確認しますか?
A. デマンド時限の同期、パルス定数、CT・VT比、計測点、通信データの欠測などを確認します。監視装置と取引用電力量計で対象範囲が異なる場合もあります。
Q. 設備を増設した場合はデマンド監視の設定変更が必要ですか?
A. 増設設備の容量や運転時間によって最大デマンドが上昇する可能性があります。警報目標値、設備別計測、負荷制御対象などを見直すことが重要です。
Q. 停電中のデマンドデータは失われますか?
A. 監視装置の仕様によって異なります。不揮発性メモリーやバックアップ電源を備えた構成では、時限途中の値や履歴を保持できる場合があります。復電後のデータ処理も事前に確認します。
Q. 過去のデマンド値から上昇原因を特定できますか?
A. デマンド値だけでは難しい場合があります。設備別電力、瞬時電力、稼働信号、生産実績などを同じ時刻で保存すると、どの設備や工程が上昇に影響したか分析しやすくなります。