Technology
デマンド制御
(デマンドせいぎょ)
デマンド表示機
デマンド制御は、一定時間内に使用する平均電力を監視し、契約電力や社内の管理目標を超えないように設備の運転を調整する制御です。工場、ビル、店舗などで複数の電気設備を同時に使用すると、短時間に電力使用が集中し、最大デマンドが上昇することがあります。
デマンド制御装置は、現在までの使用電力量、デマンド時限の残り時間、現在の負荷状態などから、時限終了時のデマンド値を予測します。予測値が目標を超える可能性がある場合は、警報を出す、優先度の低い設備を一時停止する、インバーターの出力を下げるなどの制御を行い、電力使用の集中を抑えます。
デマンド電力の基本
デマンド電力は、定められた計量時間内に使用した電力量を平均電力へ換算した値です。日本の高圧・特別高圧受電設備では、一般に30分単位のデマンド値が管理に用いられます。
計量時間内の使用電力量をE、計量時間をT、デマンド電力をPとすると、次の式で表せます。
P=E÷T
Eの単位をkWh、Tの単位をhとした場合、Pの単位はkWです。30分は0.5時間であるため、30分間の使用電力量が250kWhの場合、デマンド電力は次のようになります。
P=250÷0.5=500kW
この500kWは、30分間の平均電力です。瞬間的に500kWを超えていても、その前後の使用電力が低ければ、最終的な30分デマンドが500kWを下回る場合があります。反対に、高負荷状態が長く続くと最大デマンドが上昇します。
デマンド制御の仕組み
デマンド制御装置は、取引用電力量計や電力計測機器から、電力量パルス、時限信号、通信データなどを受け取ります。入力した電力量を積算し、現在デマンド、予測デマンド、目標値までの余裕電力などを演算します。
予測値が注意設定値へ近づくと、表示灯、ブザー、メール、タッチパネルなどで警報を出します。さらに上昇する場合は、あらかじめ登録した負荷を優先順位に従って停止または出力抑制します。使用電力に余裕が戻ると、設備条件を確認しながら順番に復帰させます。
現在デマンドと予測デマンド
デマンド時限の開始から現在までに使用した電力量をEnow、経過時間をtnowとすると、現時点までの平均電力Pnowは次の式で求められます。
Pnow=Enow÷tnow
例えば、時限開始から10分間で80kWhを使用した場合、10分は10÷60時間であるため、現時点までの平均電力は480kWです。ただし、これは時限途中の平均値であり、その後の設備運転によって最終値は変わります。
現在までの使用電力量をEnow、現在の使用電力をPinst、残り時間をtrem、時限全体をTとすると、単純な予測デマンドPpredは次の式で表せます。
Ppred=(Enow+Pinst×trem)÷T
30分時限のうち20分が経過し、使用電力量が150kWh、現在電力が600kWの場合、残り10分間の予測電力量は100kWhです。時限終了時の予測電力量は250kWhとなり、予測デマンドは500kWです。
実際のシステムでは、直近の負荷変化、設備の起動予定、過去の傾向などを考慮して予測する場合があります。大型設備が急に起動する工場では、単純な一定負荷予測だけでは追従が遅れることがあるため、警報値や制御余裕を含めて調整します。
目標値までの余裕電力
目標デマンドをPtarget、時限全体をTとすると、時限内で使用できる電力量の上限Etargetは次の式で求められます。
Etarget=Ptarget×T
目標デマンドが500kW、時限が30分の場合、使用できる電力量の上限は250kWhです。現在までの使用電力量が180kWhであれば、残り時間で使用できる電力量Eremは70kWhです。
Erem=Etarget-Enow
残り時間が10分の場合、目標値を超えないために許容される平均電力Pallowは次のようになります。
Pallow=70÷(10÷60)=420kW
現在の使用電力が520kWであれば、必要な負荷抑制量Pcutは概算で100kWです。
Pcut=520-420=100kW
ただし、遮断した負荷の実際の消費電力は運転状態によって変わります。余裕を持った制御量を設定し、停止後の電力変化を確認する必要があります。
負荷制御の方法
警報による手動対応
予測デマンドが設定値へ達したときに、表示灯、ブザー、タッチパネルなどで警報を出し、作業者が不要な設備を停止します。生産設備を自動停止しにくい現場や、運転判断を作業者へ委ねたい場合に適しています。
自動負荷遮断
停止可能な設備を優先順位別に登録し、予測デマンドの上昇に応じて自動停止します。空調、ヒーター、ポンプ、集塵機、充電設備などが対象になりますが、安全、品質、生産への影響を確認して選定します。
出力抑制
インバーター、温度調節計、電力変換器などと連携し、設備を完全停止させずに回転速度や出力を下げます。工程への影響を抑えやすい反面、出力指令と実際の削減電力が一致するかを確認する必要があります。
負荷の選定と優先順位
停止対象は、消費電力の大きさだけで決めるものではありません。設備の重要度、停止可能時間、再起動時間、製品品質、安全性、周辺設備への影響などを確認します。
例えば、冷却設備や集塵設備は一時停止できる場合がありますが、停止時間が長くなると温度上昇や作業環境の悪化につながる可能性があります。コンプレッサーや大型モーターでは、再起動時に電力が増加することもあるため、停止と復帰を一体で設計します。
同じ設備を繰り返し停止させないように、停止回数や累積停止時間を管理し、負荷を順番に切り替える制御を行う場合もあります。
復帰制御とハンチング防止
電力に余裕が戻った直後に停止負荷を一斉復帰させると、再び予測デマンドが上昇します。そのため、余裕電力を確認し、一定時間を空けて1台ずつ復帰させます。
短時間に停止と復帰を繰り返す現象を防ぐため、不感帯、最小停止時間、最小運転時間、復帰待ち時間などを設定します。設備側に再起動禁止時間や暖機運転条件がある場合は、その条件もインターロックへ組み込みます。
設計・運用上の注意点
デマンド時限の同期
デマンド制御装置の計量時限と、取引用電力量計の時限を一致させる必要があります。時限の開始時刻がずれると、制御装置の予測値と電力会社側のデマンド値に差が生じます。
パルス定数と変成比
電力量パルスを使用する場合は、1パルス当たりの電力量を正しく設定します。CT比、VT比、乗率、パルス定数などを誤ると、表示値と実際の電力量が一致しません。更新時には新旧機器の設定値を照合します。
通信断・信号異常
通信データやパルス入力が途絶えると、予測値の信頼性が失われます。一定時間データが更新されない場合は警報を出し、自動負荷制御を停止する、直前値を保持するなど、異常時の動作を決めておきます。
停電後の復旧
停電後にすべての設備が同時復帰すると、急激な電力上昇が起こる場合があります。復電時は、設備の優先順位や安全条件に従って順次起動します。時限途中で停電した場合の積算値やデータ保存方法も確認します。
計測値と実際の請求値の確認
デマンド制御装置の表示値と、取引用電力量計や請求明細の値には、計測周期、通信遅延、時限同期などによって差が出る場合があります。導入後は定期的に照合し、設定や計測系統に誤りがないか確認します。
異常監視・保守
主な監視項目には、電力量パルス未入力、通信異常、時限同期異常、接点出力異常、負荷停止指令後の電力低下不足、PLC異常などがあります。警報が発生した場合は、計測機器、配線、通信経路、設定値、負荷側の動作を順番に確認します。
定期点検では、デマンド値の照合、時刻同期、接点出力試験、負荷制御試験、バックアップデータの確認などを行います。設備増設や生産条件の変更後は、目標値、負荷容量、優先順位を見直すことが重要です。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、電力量パルスや通信データを取り込み、現在デマンド、予測デマンド、余裕電力を演算し、警報や負荷制御を行うシステムを検討します。
電力計測機器、制御盤、PLC、タッチパネル、接点入出力、通信機器を組み合わせ、時限管理、負荷の優先順位設定、自動遮断、段階復帰、異常監視などを構成します。設備側の運転許可条件や再起動条件も確認し、安全や生産へ影響しにくい制御を検討します。
設備ごとの電力使用量、デマンド履歴、警報履歴、負荷制御履歴を保存し、傾向表示や帳票作成に利用することもできます。上位監視システムや生産管理システムとの連携については、通信方式、必要なデータ項目、通信断時の処理を確認して対応を検討します。
既設設備を更新する場合は、電力量計の出力仕様、パルス定数、CT・VT比、既設負荷制御回路、PLCや表示器との互換性を確認し、必要な改造範囲を整理します。
よくある質問
Q. デマンド制御を導入すると消費電力量も減りますか?
A. 主な目的は、一定時間に電力使用が集中することを抑えることです。設備の運転時間が変わらなければ、消費電力量そのものは大きく減らない場合があります。ただし、運転の見直しによって省エネルギーにつながることもあります。
Q. 予測デマンドが実際の値と合わない場合は何を確認しますか?
A. 時限同期、パルス定数、CT・VT比、通信周期、計測点の違いを確認します。大型設備の急な起動など、予測後に負荷が大きく変化した場合にも差が生じます。
Q. 生産設備を停止せずにデマンドを抑えられますか?
A. 空調や補機を優先的に制御する、インバーターで出力を下げる、設備の起動時刻をずらすなどの方法があります。生産設備を停止しない構成が可能かは、削減可能な負荷容量によって異なります。
Q. 停止した設備が何度も入り切りするのを防げますか?
A. 不感帯、最小停止時間、最小運転時間、復帰待ち時間を設定することで抑えられます。設備ごとの再起動条件をPLCへ組み込むことも重要です。
Q. 既設設備へデマンド制御を追加できますか?
A. 電力量計から必要な信号を取得でき、停止対象設備へ制御信号を接続できれば追加できる場合があります。既設制御盤の空き入出力、通信仕様、設備停止時の影響を確認して改造範囲を検討します。