Technology

抵抗分漏れ電流 Ior

(ていこうぶんもれでんりゅう Ior)

抵抗分漏れ電流Iorとは、電路から大地へ流れる漏れ電流のうち、絶縁抵抗を通じて流れる成分です。絶縁材料の劣化、水分の侵入、端子部の汚損などによって増加しやすいため、通電中の設備で絶縁劣化の兆候を把握する指標として利用されます。

漏れ電流Ioには、Iorのほかに、電路と大地の間の静電容量を通じて流れる容量分漏れ電流Iocが含まれます。Iocは正常な設備でも流れるため、Ioだけでは絶縁劣化を判断しにくい場合があります。

IorとIoの違い

漏れ電流Ioは、抵抗分漏れ電流Iorと容量分漏れ電流Iocを含む合成値です。

  • Io:実際に計測される漏れ電流の合成値
  • Ior:絶縁抵抗を通じて流れる成分
  • Ioc:対地静電容量を通じて流れる成分

交流回路では、IorとIocの位相が異なります。そのため、IoからIocの数値を単純に引いてIorを求めることはできません。

Ior対応の計測器では、漏れ電流と基準となる電圧の位相関係を計測し、抵抗分に相当する成分を演算します。

絶縁劣化とIorの関係

絶縁抵抗をR、対地電圧をVとすると、抵抗分漏れ電流は概念的に次の関係を持ちます。

Ior=V÷R

絶縁抵抗Rが低下すると、Iorは増加します。ただし、実際の設備では相線式、対地電圧、負荷状態、非線形な漏れ経路などの影響を受けるため、単純な式だけで絶縁抵抗値を求められるとは限りません。

Iorを計測する目的

  • 運転中の設備で絶縁状態を監視する
  • 容量分漏れ電流の影響を抑えて劣化傾向を見る
  • 絶縁不良による停止を予防する
  • 点検対象となる回路を絞り込む
  • 設備の更新時期を判断する材料にする

絶縁抵抗計による測定では、一般に設備を停電させ、負荷機器を切り離す必要があります。Ior計測は通電中に継続監視できるため、停止しにくい設備の予防保全に利用できます。

Iorの計測方法

Ior計測では、零相変流器などで漏れ電流Ioを検出するとともに、回路電圧を基準信号として取り込みます。

計測器は、漏れ電流と電圧の位相関係から、電圧と同相方向の抵抗分を演算します。使用できる相線式や演算方式は計測器によって異なるため、対象回路への対応を確認します。

電圧入力の相や配線を誤ると、正しい位相関係を得られず、Iorの演算値が不正確になる可能性があります。

Ior計測が有効な設備

インバータ、サーボアンプ、スイッチング電源、ノイズフィルタなどを多く使用する設備では、容量分漏れ電流Iocが大きくなる傾向があります。

このような設備ではIoの値だけが高くなり、絶縁劣化との区別が難しくなる場合があります。Iorを併せて監視すると、抵抗分の変化を把握しやすくなります。

ただし、高調波成分や複雑な回路構成によっては、Ior演算に影響が出る場合があります。計測器の対応条件を確認します。

Iorが増加する主な原因

  • ケーブル被覆や巻線の経年劣化
  • 端子箱や制御盤への水分侵入
  • 結露
  • 導電性粉じんや油による汚損
  • ヒータやモータの絶縁劣化
  • 配線損傷
  • 絶縁物の熱劣化

Iorが増加した場合は、設備周辺の温度、湿度、洗浄、降雨などの環境変化も確認します。湿度が高いときだけ上昇する場合は、結露や吸湿の影響が考えられます。

測定値を評価する方法

Iorの評価では、一律の数値だけでなく、設備ごとの正常値と変化傾向を確認します。

新設時や整備後の値を基準として記録し、同じ運転条件で定期的に比較します。緩やかに増加している場合は劣化の進行、急激に増加した場合は水分侵入や配線損傷などを疑います。

測定値が設定値を超えた場合に警報を出すだけでなく、一定期間の上昇率を確認する方法もあります。

絶縁抵抗測定との使い分け

Ior計測は、設備を運転した状態で絶縁劣化の兆候を監視する方法です。一方、絶縁抵抗計は、停電状態で試験電圧を加え、絶縁抵抗を直接測定します。

Iorが増加した回路を抽出し、停止可能な時期に絶縁抵抗測定や詳細点検を行うことで、点検作業を効率化できます。

Iorの値だけで設備の安全性を断定せず、必要に応じて絶縁抵抗、温度、外観、接地状態などを確認します。

計測時の注意点

  • 対象回路の相線式が計測器に対応しているか確認する
  • 電圧入力の相と極性を正しく接続する
  • 対象回路のすべての活線を変流器へ通す
  • 接地線を変流器へ通さない
  • 高調波やノイズの影響を確認する
  • 設備の運転条件を記録する

負荷の運転台数やインバータ周波数が変わると、IoやIorの表示が変化する場合があります。比較時には同じ条件で測定します。

異常値が出た場合の確認

Iorが急に増加した場合は、同じ回路を再測定し、計測器の電圧入力、変流器、配線を確認します。

計測系に問題がなければ、分岐回路や接続機器を順番に切り分けて原因箇所を特定します。水分、端子汚損、ケーブル損傷、ヒータ、モータなどを点検します。

設備を停止できる場合は、絶縁抵抗測定などによって状態を確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、Io・Ior計測に対応した電子式マルチメータを使用し、漏れ電流の表示、警報、通信、履歴管理を行う構成を検討します。

対象回路の相線式、電圧、変流器、監視点数、上位システムとの通信などを確認し、設備条件に合わせて構成します。

よくある質問

Q. Iorが大きいと絶縁が劣化していますか?

A. 絶縁劣化の可能性がありますが、計測条件や回路構成も確認し、必要に応じて絶縁抵抗測定を行います。

Q. IoからIocを引けばIorを求められますか?

A. 位相が異なるため、数値を単純に引くことはできません。電圧との位相関係を使って演算します。

Q. Ior計測中に設備を停止する必要がありますか?

A. 通常は通電・運転中に計測できます。停止しにくい設備の傾向監視に利用できます。

Q. Ior計測は絶縁抵抗測定の代わりになりますか?

A. 完全な代替ではありません。Iorで傾向を監視し、異常時に絶縁抵抗測定を行う使い分けが考えられます。

Q. 既設のIo計測器でIorも測れますか?

A. Ior演算には漏れ電流に加えて電圧と位相情報が必要です。Ior計測対応機器かどうかを確認します。

関連ワード

お問い合わせ窓口

この技術について
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム
お問い合わせ