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EMC技術

(EMCぎじゅつ)

EMC技術とは、電気・電子機器が周囲へ過度な電磁ノイズを発生させず、周囲から電磁ノイズを受けても意図した機能を維持できるようにするための設計・評価技術です。

EMCは「Electromagnetic Compatibility」の略で、日本語では「電磁両立性」と訳されます。機器から外部へ出る妨害波を抑える「エミッション」と、外部から侵入する電磁的な妨害に耐える「イミュニティ」の両方を成立させる必要があります。

EMCで考える2つの側面

エミッション

エミッションは、機器から外部へ放出される電磁ノイズです。電源線や信号線を通じて伝わる伝導ノイズと、基板、配線、筐体、ケーブルなどから空間へ放射される放射ノイズがあります。

機器自体が正常に動作していても、発生するノイズによって周辺機器の誤動作や通信異常を引き起こす場合があります。そのため、ノイズ源だけでなく、外部へ流出する経路まで含めて対策します。

イミュニティ

イミュニティは、外部から電磁的な妨害を受けても、機器が意図した機能を維持する能力です。静電気放電、無線機器からの電波、雷や負荷開閉によるサージ、リレーや電磁弁によるバーストノイズ、電源電圧の低下・瞬断などを想定します。

すべての妨害に対して動作を全く変化させないことだけが要求されるとは限りません。一時的な表示変化を許容するのか、自動復帰が必要なのか、出力や計量値に影響してはならないのかなど、機器の用途に応じた性能基準を定めます。

電磁ノイズが伝わる仕組み

EMC問題を整理する際は、「ノイズの発生源」「ノイズが伝わる経路」「影響を受ける回路」の3つに分けて考えます。いずれかを抑えることで、影響を小さくできます。

主なノイズ源には、スイッチング電源、クロック回路、マイコン、インバーター、モーター、リレー、電磁接触器、ソレノイドなどがあります。電圧や電流が急激に変化するほど、高い周波数成分を含むノイズが発生しやすくなります。

発生したノイズは、電源線、信号線、接地線、浮遊容量、磁気結合、筐体の開口部、外部ケーブルなどを通じて別の回路へ伝わります。ケーブルがアンテナのように働き、基板内のノイズが外部へ放射されたり、外部の電波が基板へ侵入したりすることもあります。

影響を受けやすい回路には、ロードセルやセンサの微小信号を扱うアナログ回路、高インピーダンス入力、通信回路、リセット回路、割り込み入力、クロック回路などがあります。

コモンモードノイズとノーマルモードノイズ

配線を伝わるノイズは、主にコモンモードノイズとノーマルモードノイズに分けて考えます。

ノーマルモードノイズは、電源線の往路と復路、または信号線間に発生する電位差として伝わります。コンデンサ、ラインフィルタ、配線ループの縮小などによって対策します。

コモンモードノイズは、複数の線に同じ方向で現れ、筐体、接地、浮遊容量などを通って戻ります。コモンモードチョーク、シールド、筐体との接続、接地構造、ケーブル引き込み部の処理などが重要になります。

フィルタ部品を追加しても、対象となるノイズモードや帰還経路が合っていなければ、十分な効果を得られません。

主なEMC対策

回路設計

電源ラインへのフィルタ、デカップリングコンデンサ、フェライトビーズ、コモンモードチョーク、サージ吸収素子などを、対象となるノイズの周波数、電圧、電流、エネルギーに応じて選定します。

デカップリングコンデンサは、部品の近くに配置して高周波電流の経路を短くします。サージ吸収素子やフライホイールダイオードなどは、リレー、電磁弁、モーターといった誘導性負荷の開閉時に発生する過渡電圧を抑えるために使用します。

プリント基板設計

EMC性能は、回路図上の部品だけでなく、基板上の部品配置と配線によって大きく変化します。高速信号やクロック信号は短くし、信号電流が戻る経路を途切れさせないことが重要です。

配線とその帰還経路で作られるループ面積が大きいほど、ノイズを放射しやすく、外部磁界の影響も受けやすくなります。アナログ回路、デジタル回路、電源回路を機能ごとに配置し、微小信号の近くへ大電流配線や高速信号を通さないようにします。

電源・接地設計

電源線はノイズの入口にも出口にもなります。フィルタは配置位置が重要で、外部から侵入したノイズが基板内部へ回り込む前、または内部ノイズが外部配線へ流出する前に処理できる構成とします。

保護接地と機能接地は目的が異なります。安全のための接地と、ノイズ電流の帰還経路として使用する接続を整理し、接地線を追加することでかえってノイズ経路を形成しないように検討します。

筐体・ケーブル設計

金属筐体はシールドとして機能しますが、継ぎ目、開口部、表示窓、通風口、ケーブル引き込み部などからノイズが出入りする場合があります。筐体の材質だけでなく、導通状態や接合部の構造が重要です。

シールドケーブルは、シールド層をどこへ、どのように接続するかによって効果が変わります。高周波ノイズに対しては、細い接地線を長く引き回すより、コネクタ部などで筐体へ低インピーダンスに接続する方が適する場合があります。

ソフトウェア設計

ソフトウェアは電磁ノイズそのものを除去できませんが、ノイズによる一時的な異常を設備全体の誤動作へ発展させないために重要です。

入力信号のチャタリング除去、計測値の範囲・変化量の確認、複数回一致による判定、通信データの誤り検出、タイムアウト、再送、ウォッチドッグタイマ、異常履歴の保存などを実装します。

ただし、ソフトウェア処理だけで異常を隠すと、実際のノイズ問題を見逃す場合があります。ハードウェア対策によって入力信号や電源を安定させたうえで、ソフトウェアによる妥当性判定と復旧処理を組み合わせます。

制御盤におけるEMC対策

制御盤では、PLC、計量コントローラ、アナログ入力機器などの比較的ノイズに弱い機器と、インバーター、モーター、電磁接触器、電磁弁などのノイズ源が同じ盤内で使用されます。

動力線と信号線を分離する、交差させる場合はできるだけ直角にする、インバーターの入力側と出力側を分ける、ロードセル線や通信線を動力配線から離すなど、配線経路を整理します。

インバーターとモーター間の配線では、高い周波数成分を含む電圧・電流が発生します。ケーブル長、シールド処理、接地、フィルタ、リアクトルなどを、インバーターやモーターの仕様に合わせて検討します。

リレーや電磁弁のコイルには、負荷の種類や電源方式に応じたサージ抑制部品を設けます。ノイズ対策部品は制御盤内の任意の位置ではなく、ノイズ源または侵入箇所の近くへ配置することが基本です。

試験と事前評価

代表的な評価には、伝導エミッション、放射エミッション、静電気放電、放射無線周波電磁界、ファストトランジェント/バースト、サージ、伝導無線周波妨害、電圧ディップ・瞬断などがあります。

適用する試験や判定基準は、製品の用途、設置環境、販売地域、適用規格などによって異なります。試験を実施するだけでなく、試験中に何を監視し、どの状態を異常と判定するかを事前に決めておく必要があります。

最終試験の段階で不適合が判明すると、基板、筐体、フィルタ、配線、コネクタなどの大幅な変更が必要になる場合があります。そのため、開発途中で近傍界プローブによるノイズ源の確認、電源・信号波形の観測、簡易的な静電気・バースト評価などを行い、問題を早期に把握します。

EMC問題が発生したときの切り分け

EMC問題は、「特定のモーターを動かしたときだけ計測値が変動する」「リレーの開閉時に通信が切れる」「無線機を近づけたときに表示が乱れる」など、条件依存の現象として現れることがあります。

調査では、発生源、伝達経路、影響を受ける回路、発生タイミング、再現条件を整理します。ケーブルを外す、電源系統を分ける、負荷を停止する、仮のシールドやフェライトを追加するなど、条件を一つずつ変えて原因を切り分けます。

対策部品を無作為に追加するのではなく、どの経路を遮断した結果、現象が改善したのかを確認することが重要です。改善後は、別の周波数帯や別の試験項目へ悪影響が出ていないかも確認します。

ハカルプラスのEMC設計

ハカルプラスでは、計測機器、組込み機器、制御盤などの開発において、回路単体ではなく、電源、センサ入力、通信、プリント基板、筐体、外部配線、組込みソフトウェアを含めてEMCを検討します。

特に計量・計測システムでは、ロードセルやアナログセンサの微小信号と、インバーター、モーター、リレーなどのノイズ源が同じ設備内に存在します。回路設計、基板設計、盤内配置、電源系統、配線経路、接地、シールド、負荷側のサージ抑制を組み合わせて検討します。

既設設備でノイズによる計測値の変動や通信異常が発生している場合は、発生条件や配線・接地構成を確認し、機器単体だけでなく設備全体の伝達経路を整理したうえで対策を検討します。

よくある質問

Q. インバーターを追加してから計測値が不安定になった場合、何を確認しますか?

A. インバーターとモーター間の配線、ロードセル線やアナログ信号線との距離、シールド処理、接地、電源系統、盤内配置などを確認します。インバーターの運転周波数や負荷状態と計測値の変動が連動しているかも切り分けの手掛かりになります。

Q. フェライトコアを追加すればノイズを除去できますか?

A. 対象となる周波数、ノイズモード、取り付ける位置、通す配線によって効果が変わります。原因となる伝達経路を確認せずに追加しても、改善しない場合があります。

Q. シールド線は両端を接地すべきですか?

A. 信号の周波数、接地電位差、設備構成、対象ノイズによって適切な接続方法が異なります。低周波の接地ループと高周波のシールド効果を分けて考え、機器メーカーの推奨も確認します。

Q. EMC試験に合格すれば、すべての設置環境で誤動作しませんか?

A. 試験は定められた条件で性能を確認するものです。実際の設備では配線長、接地、周辺機器、無線環境などが異なるため、設置状態を含めた確認が必要です。

Q. 既設設備のノイズ問題だけでも相談できますか?

A. 発生条件、対象機器、配線図、盤内配置、接地、波形、警報履歴などを確認し、発生源・伝達経路・影響を受ける回路を切り分けながら対策を検討します。

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