Technology
直流絶縁回路
(ちょくりゅうぜつえんかいろ)
直流絶縁回路とは、入力側と出力側を電気的に切り離したまま、DC4~20mA、DC1~5V、DC0~10Vなどの直流信号を伝送する回路です。計測機器や制御盤の間で発生する接地電位差、グランドループ、電気ノイズなどの影響を抑え、安定した信号伝送を行うために使用されます。
交流信号はトランスによって絶縁できますが、一定値の直流は、そのままではトランスを通過しません。そのため、直流信号をいったんパルスや交流成分へ変調し、絶縁素子を介して伝送した後、出力側で復調して直流信号へ戻します。
ハカルプラスでは、光半導体を用いる方式、トランスを介した変調・復調回路、パルス幅変調などの技術を利用し、直流信号を絶縁・変換する信号変換器を製品化しています。
直流信号を絶縁する目的
異なる制御盤や設備間をアナログ信号で接続すると、それぞれの接地点にわずかな電位差が生じることがあります。信号線の0Vやシールドを通じて電流が流れると、測定値のずれや変動、機器の誤動作につながる場合があります。
直流絶縁回路には、主に次の役割があります。
- 接地電位差による測定誤差の抑制
- グランドループの防止
- インバーターやモーターからのノイズ対策
- 異常電圧からPLCや計測機器を保護
- 異なる電源系統間での信号伝送
- 信号変換や信号分配を伴う設備間連携
直流をトランスで直接絶縁できない理由
トランスは、一次側を流れる電流の変化によって磁束を変化させ、二次側へ電圧を発生させます。交流では電流と磁束が周期的に変化するため信号を伝送できますが、一定の直流では、通電開始時を除いて磁束が変化しません。
そこで、直流信号の大きさをパルス幅、周波数、デューティ比などへ変換し、時間的に変化する信号として絶縁部を通過させます。出力側では、その信号を演算・平滑化して元の直流値へ戻します。この処理を変調・復調と呼びます。
光半導体による絶縁
光半導体を使用する方式では、入力信号をLEDなどの発光素子によって光へ変換し、絶縁障壁を越えて出力側へ伝送します。出力側では、フォトダイオードやフォトトランジスタなどによって光を電気信号へ戻します。
入力側と出力側が導体で直接接続されないため、電気的な絶縁を確保できます。一方、発光量や受光感度には、ばらつき、温度変化、経年変化があります。高精度なアナログ信号を扱う場合は、補正回路やフィードバック回路によって特性を安定させます。
トランスによる変調・復調方式
入力した直流信号を交流やパルス列へ変調し、小型トランスを介して出力側へ伝送する方式です。出力側では、受け取った信号を整流・平滑・演算し、直流電圧または直流電流へ復調します。
トランスの周波数特性、磁気飽和、漏れ磁束などが精度へ影響するため、変調周波数、巻線、回路定数を適切に設計する必要があります。
パルス幅変調
パルス幅変調は、直流信号の大きさをパルスのON時間とOFF時間の割合へ変換する方式です。英語ではPulse Width Modulationといい、PWMと表記します。
一定周期に占めるON時間の割合をデューティ比と呼びます。入力信号が大きくなるほどON時間を長くすることで、信号の大きさをパルスとして伝送できます。
出力側ではデューティ比を測定し、演算やフィルタ処理によって直流信号へ戻します。光半導体やパルストランスと組み合わせやすい方式です。
代表的な直流アナログ信号
DC4~20mA
工場設備で広く使用される電流信号です。配線抵抗の影響を受けにくく、比較的長い距離の伝送に適しています。測定範囲の下限を4mAとするため、0mAになった場合に断線や電源異常を判別しやすいことも特長です。
DC1~5V
計測機器やPLCのアナログ入力に使用される電圧信号です。4~20mAを250Ωの抵抗へ流すことで1~5Vへ変換できます。配線抵抗や入力インピーダンス、電気ノイズの影響を確認します。
DC0~10V
インバーターの速度指令、調節弁の開度指令、設定信号などに利用されます。0Vが正常な下限値となるため、信号断線と測定下限を区別しにくい場合があります。
絶縁変換器の構成
直流信号用の絶縁変換器は、入力信号を絶縁して同じ信号形式で出力するほか、異なる信号形式へ変換する用途にも使用されます。
- DC4~20mAからDC4~20mAへの絶縁
- DC4~20mAからDC1~5Vへの変換
- DC0~10VからDC4~20mAへの変換
- 一つの入力信号を複数系統へ分配
- 入力信号のゼロ・スパン調整
入力、出力、電源のうち、どの回路間を絶縁するかによって構成が異なります。入力と出力を絶縁する方式のほか、入力・出力・電源を相互に分離する3ポート絶縁があります。
グランドループの防止
二つの機器が異なる場所で接地され、信号線の0Vでも接続されると、接地点間の電位差によって循環電流が流れることがあります。これをグランドループと呼びます。
グランドループが発生すると、アナログ値のずれ、周期的な変動、通信機器の誤動作などにつながります。直流絶縁回路で信号経路を電気的に切り離すことで、循環電流を遮断できます。
ただし、別の0V配線やシールド線を通じて経路が形成される場合もあるため、変換器だけでなく設備全体の接地と配線を確認します。
絶縁耐圧と絶縁抵抗
絶縁変換器を選定する際は、信号範囲、精度、応答速度に加えて、絶縁耐圧と絶縁抵抗を確認します。
絶縁耐圧は、入力・出力・電源間へ所定時間印加できる試験電圧を示します。絶縁抵抗は、絶縁された回路間に電流が流れにくい程度を示す値です。
設備の電源電圧、接地方式、使用環境に応じて必要な性能を選定します。絶縁変換器だけですべての雷サージや過電圧を防げるわけではないため、必要に応じて避雷器やサージ保護機器を併用します。
精度と応答速度
絶縁変換器では、入力信号を変調・復調する過程で誤差が発生します。光半導体、抵抗、基準電圧回路などの特性は周囲温度によって変化するため、常温時の精度だけでなく温度特性も確認します。
入力信号が変化してから出力が追従するまでには、一定の応答時間があります。出力の変動を抑えるためにフィルタを強くすると、信号は安定しますが応答が遅くなります。
温度、液面、電力などの監視では一定の遅れを許容できますが、高速な制御へ使用する場合は、設備が必要とする応答時間に適合するかを確認します。
異常時の確認
出力信号が変化しない場合は、変換器の電源、入力信号、端子接続、信号の極性を確認します。電流入力では、入力回路へ電流が流れる経路が成立しているかも確認します。
表示値が大きくずれる場合は、入力・出力レンジ、PLC側のスケーリング、小数点位置、負荷抵抗を確認します。
値が周期的に変動する場合は、インバーターやモーターのノイズ、シールド接地、信号線と動力線の配線経路を確認します。変換器を設置しても、配線方法が不適切であればノイズの影響が残ることがあります。
既設設備への追加・更新
既設設備へ直流絶縁回路を追加する場合は、現在の入力・出力信号、電源、接地方式、配線距離、PLC入力仕様を確認します。
既設変換器を更新する際は、信号範囲だけでなく、絶縁方式、応答時間、精度、端子配列、電源電圧を比較します。同じ4~20mA対応でも、入力側が外部給電方式か変換器給電方式かによって配線が異なる場合があります。
更新後は、入力下限、中間値、上限の模擬信号を与え、PLCや表示器まで含めて正しい値になることを確認します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、光半導体、トランスを用いた変調・復調回路、パルス幅変調などの技術により、直流信号を絶縁・変換する信号変換器を製品化しています。
入力信号、出力信号、必要精度、応答速度、絶縁性能、電源条件を確認し、用途に適した回路と製品構成を検討します。
信号変換器単体だけでなく、計測機器、PLC、表示器、制御盤との接続、アナログ入力のスケーリング、ノイズ対策を含めたシステム構成にも対応します。
既設変換器の更新や異なる設備間の信号連携についても、現在の配線、接地、信号仕様を確認し、適切な構成を検討します。
よくある質問
Q. 直流信号はなぜトランスでそのまま絶縁できないのですか?
A. トランスは磁束の変化によって電圧を伝えるため、一定値の直流は連続して伝送できません。パルスなどへ変調した後、出力側で直流へ復調します。
Q. 4~20mA信号にも絶縁は必要ですか?
A. すべての回路に必要とは限りませんが、異なる制御盤間の接続、接地電位差、ノイズの影響がある場合は、絶縁によって安定することがあります。
Q. 絶縁変換器を設置すれば、すべてのノイズを除去できますか?
A. グランドループなどの影響を抑えられますが、配線へ直接混入するノイズが残る場合があります。シールド、接地、配線経路も合わせて見直します。
Q. 一つの直流信号を複数の機器へ分配できますか?
A. 信号分配機能を持つ絶縁変換器を使用すれば可能です。出力間も絶縁することで、各接続先の影響を抑えられます。
Q. 既設の信号変換器を現行機種へ更新できますか?
A. 入出力信号、電源、絶縁性能、応答時間、端子配列を確認し、対応する機種へ更新できる場合があります。