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定電圧回路設計
(ていでんあつかいろせっけい)
定電圧回路設計とは、入力電圧、負荷電流、周囲温度などが変化しても、電子回路やセンサへ安定した電圧を供給するための回路を設計することです。マイコン、計測回路、通信回路、センサなどは電源電圧の変動に影響されやすいため、用途に適した電圧精度、電流容量、ノイズ特性を確保する必要があります。
代表的な方式には、ツェナダイオードを使う回路、三端子レギュレータなどのリニアレギュレータ、スイッチング方式のDC-DCコンバータがあります。回路の簡単さだけでなく、発熱、効率、出力ノイズ、入力電圧範囲、保護機能を比較して選定します。
定電圧回路が必要な理由
電源電圧は常に一定とは限りません。ACアダプタやバッテリーの電圧変動、負荷の起動・停止、配線による電圧降下、周囲温度の変化などによって、回路へ入力される電圧は変化します。
マイコンやセンサの許容範囲を超える電圧が加わると、誤動作や故障につながります。反対に電圧が低すぎる場合も、マイコンの再起動、通信異常、計測値の変動などが発生します。定電圧回路は、これらの影響を抑えて必要な電圧を供給します。
主な定電圧方式
ツェナダイオード方式
ツェナダイオードは、逆方向へ一定以上の電圧を加えると、端子間電圧をおおむね一定に保つ特性があります。抵抗と組み合わせることで、比較的簡単な定電圧回路を構成できます。
部品点数が少なく、小電流の基準電圧や過電圧制限に適しています。ただし、素子ごとの電圧ばらつき、温度変化、負荷電流の変動による影響があるため、高精度または大電流の電源には適さない場合があります。
リニアレギュレータ方式
三端子レギュレータに代表されるリニアレギュレータは、入力、出力、GNDの端子を持ち、入出力へコンデンサを接続することで定電圧を得られます。回路が比較的簡単で、出力ノイズが小さいことが特長です。
一方、入力電圧と出力電圧の差を熱として消費するため、電圧差や負荷電流が大きい場合は発熱が増えます。放熱板、基板の銅箔面積、周囲温度を考慮した設計が必要です。
スイッチングレギュレータ方式
半導体スイッチを高速にON・OFFし、コイル、ダイオード、コンデンサなどを用いて電圧を変換します。降圧、昇圧、昇降圧などの方式があり、リニアレギュレータより高い効率を得やすいことが特長です。
入力電圧と出力電圧の差が大きい場合や、負荷電流が大きい場合に適しています。ただし、スイッチングノイズ、部品配置、基板配線、電磁ノイズ対策を考慮する必要があります。
リニアレギュレータの発熱
リニアレギュレータで消費される電力PLは、入力電圧Vin、出力電圧Vout、出力電流Ioutから概算できます。
PL=(Vin-Vout)×Iout
入力12V、出力5V、出力電流1Aの場合は、次のようになります。
PL=(12-5)×1=7W
負荷へ供給される電力Poutは5Wです。
Pout=5×1=5W
この例では、負荷で使用する電力よりレギュレータで熱として失われる電力の方が大きくなります。概算効率ηは次のようになります。
η=Pout/(Pout+PL)×100≒42%
このような条件では、スイッチングレギュレータで電圧を下げた後に、低ノイズ化を目的としてリニアレギュレータを使用する二段構成も検討します。
設計上のポイント
入力電圧範囲を確認する
通常時の入力電圧だけでなく、電源投入時、バッテリー満充電時、負荷変動時の最大・最小電圧を確認します。リニアレギュレータには、安定した出力に必要な最低入出力電圧差があります。
入力電圧が不足すると出力電圧を維持できません。低い電圧差で動作できるLDOを使用する場合も、ドロップアウト電圧と負荷電流の関係を確認します。
負荷電流と突入電流を考慮する
マイコン、通信モジュール、表示器などは、通常時より起動時や送信時に大きな電流が流れる場合があります。平均電流だけでなく、最大電流と継続時間を確認します。
電源容量が不足すると、瞬間的な電圧低下によってマイコンが再起動したり、無線通信が不安定になったりします。出力コンデンサの容量と電源の過渡応答も確認します。
発熱と放熱を確認する
半導体の温度は、消費電力、パッケージの熱抵抗、周囲温度によって決まります。許容温度を超えると保護機能が動作したり、部品寿命が短くなったりします。
基板の銅箔を広くする、放熱板を設ける、発熱部品から距離を取るなどの対策を行います。密閉筐体では、筐体内部の温度上昇も考慮します。
コンデンサを適切に選定する
レギュレータの入力・出力には、電圧変動やノイズを抑えるコンデンサを接続します。必要な容量、耐圧、等価直列抵抗、温度特性はICによって異なります。
指定範囲外のコンデンサを使用すると、出力が発振して不安定になる場合があります。メーカーが示す推奨回路と基板配置を確認します。
ノイズに配慮する
計量信号、アナログセンサ、無線通信などでは、電源ノイズが測定精度や通信品質へ影響します。スイッチング電源の高周波電流が信号回路へ回り込まないよう、電源とGNDの配線を設計します。
アナログ回路とデジタル回路で電源を分ける、フェライトビーズやフィルターを設ける、低ノイズレギュレータを追加する方法があります。
保護回路を設ける
入力逆接続、過電圧、過電流、短絡、静電気、サージなどを想定します。ダイオード、ヒューズ、保護IC、サージ吸収素子などを組み合わせ、異常が他の回路へ広がらないようにします。
出力側から入力側へ電流が逆流する可能性がある場合は、レギュレータの破損を防ぐ保護ダイオードが必要になることがあります。
異常時の確認と切り分け
出力電圧が低い場合は、入力電圧不足、負荷の過電流、配線による電圧降下、保護機能の動作を確認します。負荷を外すと正常になる場合は、負荷側の短絡や電源容量不足が考えられます。
出力が周期的に上下する場合は、過電流保護や温度保護が繰り返し動作している可能性があります。部品温度、出力電流、コンデンサ、基板配線を確認します。
計測値や通信だけが不安定な場合は、出力電圧の平均値だけでなく、オシロスコープでリップルや瞬間的な電圧低下を確認します。
部品変更・設備更新時の注意点
レギュレータを後継品へ変更する場合は、入出力電圧、最大電流、ドロップアウト電圧、端子配列、必要コンデンサ、保護機能を確認します。同じ外形でも端子配置や安定動作条件が異なる場合があります。
スイッチングレギュレータでは、スイッチング周波数、コイル、ダイオード、補償回路が変わるとノイズや応答特性も変化します。部品置換後は、負荷変動、温度、起動・停止、ノイズの評価を行います。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、計測機器、通信機器、センサ機器、組み込み製品などに必要な定電圧回路を検討します。
入力電源、必要な出力電圧、最大負荷電流、温度条件、許容ノイズを確認し、ツェナダイオード、リニアレギュレータ、スイッチングレギュレータなどを選定します。
電源回路だけでなく、マイコン、センサ、通信回路、アナログ計測回路を含む基板設計と組み込みソフトウェアを構成します。電圧低下の監視、異常時のリセット、データ保持などについても、製品仕様に応じて検討します。
部品の生産終了に伴う電源ICの変更についても、回路定数、基板配置、発熱、ノイズ、既存製品との互換性を確認して対応を検討します。
よくある質問
Q. 三端子レギュレータが異常に熱くなる場合は何を確認しますか?
A. 入出力電圧差、負荷電流、短絡、周囲温度、放熱条件を確認します。消費電力が大きい場合は、入力電圧の低減やスイッチング方式への変更を検討します。
Q. 出力電圧が負荷を接続すると低下するのはなぜですか?
A. 電源容量不足、入力電圧不足、過電流保護、配線抵抗などが考えられます。起動時の突入電流も含めて確認します。
Q. ツェナダイオードでマイコン用電源を作れますか?
A. 小電流で精度要求が低い場合は可能ですが、負荷変動や温度による電圧変化があります。安定性が必要な場合はレギュレータを使用します。
Q. リニアレギュレータとスイッチングレギュレータはどう使い分けますか?
A. 低ノイズや簡単な回路を重視する場合はリニア方式、高効率、大電流、大きな電圧変換を重視する場合はスイッチング方式が適しています。
Q. 既存の電源ICを別の製品へ交換できますか?
A. 電圧、電流、端子配置、必要コンデンサ、発熱、ノイズ特性が適合すれば交換できる場合があります。基板と実機での評価が必要です。