Technology
GNSS時刻同期
(GNSSじこくどうき)
GNSS時刻同期とは、GPSをはじめとする衛星測位システムから受信した正確な時刻情報を利用し、PLC、産業用コンピュータ、データロガー、計測器、ネットワーク機器などの時計を合わせる仕組みです。
複数設備で異常履歴、電力データ、製造実績を記録する場合、機器ごとの時計がずれていると、出来事の発生順序や同時性を正しく判断できません。GNSSを基準に時刻をそろえることで、拠点間や設備間の記録を比較しやすくなります。
ハカルプラスでは、必要な時刻精度、設置場所、同期対象機器を確認し、GNSS受信機、アンテナ、NTP、パルス信号を組み合わせた時刻同期を検討します。
GNSS時刻同期の主な用途
- 複数計測器のデータ時刻を一致させる
- 異常履歴の発生順序を確認する
- 電力・エネルギーデータを同じ時間区分で集計する
- 遠隔拠点の時計を共通基準へ合わせる
- 通信ログ・監査証跡の時刻信頼性を高める
- 高精度計測のサンプリング基準を供給する
GNSSとは
GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemの略で、衛星から送られる信号を利用して位置と時刻を求める仕組みです。
GPSのほか、複数の衛星測位システムをまとめた呼び方として使用されます。受信機が複数システムへ対応すると、利用可能な衛星数を増やせる場合があります。
衛星から得られる時刻
測位衛星には高精度な時計が搭載され、衛星信号には送信時刻情報が含まれています。
GNSS受信機は複数衛星の信号を受信し、内部時計を補正します。位置情報を利用しない場合でも、時刻同期用として使用できます。
時刻同期が必要な理由
一般的な機器内蔵時計は、温度や部品誤差によって徐々にずれます。
一台だけで使用する場合は問題にならなくても、複数機器のデータを比較する場合、数秒・数分のずれが原因分析へ影響します。
RTCとの違い
RTCは、機器内で日時を保持する時計回路です。停電中も電池で動作できますが、長期間では少しずつ誤差が累積します。
GNSS時刻同期では、外部の正確な時刻を基準にRTCを定期補正します。GNSSを受信できない間はRTCで時刻を保持します。
1PPS信号
GNSS受信機から、1秒ごとに高精度なパルスを出力する機能があります。これを1PPS信号と呼びます。
パルスの立上りを秒境界として使用し、マイコン、計測器、時刻サーバーの内部時計を高精度に同期させます。
時刻データと1PPSの組み合わせ
1PPS信号だけでは、何年何月何日の何時何分何秒かを判別できません。
シリアル通信などで受信した日時情報と1PPSを組み合わせ、秒境界と日付・時刻を対応させます。
NTP
NTPは、ネットワーク経由で機器の時計を同期するプロトコルです。
GNSS受信機を備えた時刻サーバーから、工場内のPLC、パソコン、ネットワーク機器へ時刻を配信できます。
GNSS時刻サーバー
屋外アンテナで衛星信号を受信し、NTPなどを利用してネットワーク内へ正確な時刻を配信する装置です。
複数機器をまとめて同期でき、各設備へ個別のGNSSアンテナを設置する必要を減らせます。
PTP
より高い時刻精度が必要な場合は、ネットワーク上で高精度同期を行うPTPが利用されることがあります。
対応するスイッチ、端末、ネットワーク設計が必要です。一般的なNTP同期より構成が複雑になります。
必要な時刻精度
日報や製造実績では秒単位、設備異常の順序確認ではミリ秒単位、高速計測ではさらに高い精度が必要になる場合があります。
目的以上に高精度な構成とすると、機器費用と設計が増えるため、必要精度を明確にします。
アンテナの設置
GNSSアンテナは、できるだけ空が広く見える屋外や窓付近へ設置します。
金属屋根の下、建物中央、制御盤内では衛星信号を受信しにくい場合があります。アンテナケーブル長と雷保護も考慮します。
空の見通し
高い建物、タンク、山などで空が遮られると、受信できる衛星数が減ります。
複数方向が開けた場所を選び、設備増設後にも遮蔽されない位置へ設置します。
屋内設置
窓際で受信できる場合もありますが、ガラスの種類や建物構造によって信号が大きく減衰します。
安定性が必要な場合は、屋外アンテナを設けて同軸ケーブルで受信機へ接続します。
アンテナケーブル
アンテナケーブルが長いと、衛星信号が減衰します。
受信機の許容長を確認し、必要に応じて低損失ケーブルや増幅器を使用します。余分なケーブルを小さく巻きすぎないようにします。
雷・サージ対策
屋外アンテナは雷サージの侵入経路になる可能性があります。
同軸避雷器、接地、建物への引込位置を検討し、受信機と内部ネットワークを保護します。
受信開始までの時間
電源投入後、衛星情報を取得して時刻が確定するまで一定時間かかる場合があります。
前回情報を保持している場合と、長期間停止後では開始時間が異なります。時刻確定前のデータをどのように扱うかを決めます。
同期状態
単に日時を表示するだけでなく、現在GNSSへ同期しているか、RTCで自走しているかを管理します。
最終同期時刻、受信衛星数、アンテナ異常などを表示すると保守しやすくなります。
受信不能時の動作
アンテナ故障や遮蔽によりGNSS信号を受信できなくなった場合は、内部RTCや高安定発振器で時刻を継続します。
受信不能時間が長くなるほど誤差が増えるため、一定時間を超えたら時刻精度低下の警報を出します。
急な時刻補正
機器の時計が大きくずれている状態で、一度に正しい時刻へ変更すると、ログ時刻が逆戻りしたり重複したりする可能性があります。
少しずつ時計を速める・遅らせる方法や、運転停止時に補正する方法を検討します。
日付またぎ
時刻補正によって日付が変わると、日報、積算値、製造実績の集計へ影響する場合があります。
日次締め時刻と同期処理の関係を確認し、重複・欠落を防ぎます。
タイムゾーン
GNSSから得られる基準時刻と、画面へ表示する日本標準時などを区別します。
海外設備やクラウド連携では、内部保存は共通基準時刻、画面表示は現地時間とする構成が有効です。
うるう秒
時刻システムでは、うるう秒の扱いが機器によって異なる場合があります。
高精度な記録や複数システム連携では、GNSS受信機、NTPサーバー、データベースの対応を確認します。
複数機器への配信
一台のGNSS時刻サーバーから、複数のPLC、パソコン、計測器へ時刻を配信できます。
ネットワーク機器がNTPへ対応しているか、同期周期と通信経路を確認します。
異常履歴との連携
設備異常、停電、通信断などの履歴へ正確な時刻を付けることで、複数設備の出来事を時系列で比較できます。
電力系統の瞬低と設備停止、上流設備と下流設備の異常発生順などを確認しやすくなります。
データロギングとの連携
複数のデータロガーや計測器を同じ時刻基準へ同期すると、異なる場所の波形や計測値を重ねて分析できます。
各機器のサンプリング周期と時刻付与方法も確認します。
異常時の確認
同期しない場合は、アンテナ位置、ケーブル、受信衛星数、時刻サーバー設定を確認します。
時刻がずれる場合は、タイムゾーン、同期周期、RTC誤差、ネットワーク遅延を点検します。時刻が飛ぶ場合は、補正方式と再起動時処理を確認します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、必要な時刻精度、同期対象機器、ネットワーク構成を確認します。
GNSS受信機、1PPS、NTP、RTCを組み合わせ、計測データ、異常履歴、製造実績の時刻を設備間でそろえる構成を検討します。
よくある質問
Q. GNSSは位置情報を使わなくても時刻同期できますか?
A. 位置表示を行わない用途でも、衛星信号の時刻情報を利用できます。
Q. 屋内でもGNSS時刻を受信できますか?
A. 窓際で受信できる場合もありますが、安定性を重視する場合は屋外アンテナを使用します。
Q. GNSSを受信できない間は時計が止まりますか?
A. 内部RTCで時刻を継続できますが、受信不能時間に応じて誤差が増えます。
Q. 一台の受信機で複数設備を同期できますか?
A. GNSS時刻サーバーからNTPなどで複数機器へ時刻を配信できます。
Q. 既設PLCもGNSS時刻へ同期できますか?
A. NTP、通信書込み、接点・パルス入力など、PLCの対応機能に応じて同期できる場合があります。