MQTTとは、センサ、設備、IoTゲートウェイ、クラウドなどの間で、少量のデータを効率よく送受信するための通信プロトコルです。設備側がデータを送信し、必要なシステムがそのデータを受信するPublish/Subscribe方式を採用しています。

通信量を抑えやすく、回線が不安定な環境や多数端末の接続に適しているため、温度、重量、電力、設備状態、異常通知などのIoTデータ連携に利用されます。

ハカルプラスでは、送信データ、周期、通信回線、クラウド仕様を確認し、トピック設計、QoS、認証、通信断時の保存・再送を含むMQTT連携を検討します。

MQTTの主な用途

  • 設備計測値のクラウド送信
  • 異常・警報の即時通知
  • 複数拠点の設備状態収集
  • 電池駆動センサの少量データ通信
  • IoTゲートウェイと上位システムの連携
  • 設備設定・指令の配信

Publish/Subscribe方式

データを送信することをPublish、受信するために登録することをSubscribeと呼びます。

送信側は特定の受信先を直接指定せず、トピックへデータを送ります。受信側は必要なトピックを購読します。

ブローカー

送信されたデータを受け取り、購読者へ配信する中継サーバーをMQTTブローカーと呼びます。

設備やセンサはブローカーへ接続し、直接互いに通信しません。ブローカーが停止するとデータ配信へ影響するため、可用性と監視を検討します。

クライアント

MQTTブローカーへ接続する設備、ゲートウェイ、サーバー、アプリケーションをクライアントと呼びます。

一つのクライアントがPublishとSubscribeの両方を行うこともできます。

トピック

トピックは、送信データを分類するための名称です。階層をスラッシュで区切って表現します。

例えば、工場、ライン、設備、データ種別の順に階層化すると、必要な範囲だけを購読しやすくなります。

トピック設計

設備ごとに異なる命名をすると、上位システムの処理が複雑になります。

工場コード、設備番号、信号種別などの命名規則を統一します。後から設備を追加しても拡張しやすい構造とします。

ワイルドカード

複数のトピックをまとめて購読するため、ワイルドカードを使用できます。

同じライン内の全設備や、全拠点の異常トピックなどを一括購読できます。広すぎる指定は不要な通信量を増やすため注意します。

ペイロード

トピックへ送信する実際のデータをペイロードと呼びます。

JSON、文字列、バイナリなどを利用できます。日時、値、単位、品質、通し番号を含めると、受信側で扱いやすくなります。

JSON形式

JSONは項目名と値を組み合わせて表現でき、計測値、状態、時刻などを一つのデータへまとめやすい形式です。

人が内容を確認しやすい一方、バイナリ形式よりデータ量が増える傾向があります。通信量と可読性のバランスを取ります。

QoS 0

QoS 0は、メッセージを一度送信し、到達確認を行わない方式です。

通信負荷が小さく、最新値を頻繁に送る用途に適します。途中で失われても次回値で更新できる温度や状態監視などに利用されます。

QoS 1

QoS 1は、少なくとも一回は相手へ届くよう、受信確認が得られるまで再送する方式です。

同じメッセージが複数回届く可能性があります。実績や警報では、メッセージIDや通し番号で重複処理を防ぎます。

QoS 2

QoS 2は、メッセージが一回だけ処理されるように複数段階の確認を行う方式です。

信頼性は高まりますが、通信量と処理負荷が増えます。すべてのデータへ使用せず、用途に応じて選定します。

Retained Message

ブローカーがトピックの最新メッセージを保持し、新しく購読したクライアントへ直ちに配信する機能です。

設備の現在状態や設定値に有効ですが、古い値が最新として見える可能性があります。時刻と通信状態を合わせて確認します。

Last Will

クライアントが正常な切断処理を行わず通信を失った場合に、ブローカーが事前設定したメッセージを配信する機能です。

設備やゲートウェイの通信断通知に利用できます。ただし、回線断と機器故障を区別できない場合があります。

Keep Alive

一定時間データ送信がなくても接続が生きていることを確認するため、Keep Aliveを設定します。

時間が短すぎると通信量が増え、長すぎると通信断の検出が遅れます。回線品質と監視要件から設定します。

Persistent Session

クライアントの接続が一時的に切れても、購読情報や未配信メッセージを保持する構成があります。

移動通信や不安定な回線で有効ですが、長期間接続しない端末の情報がブローカーへ残り続けないよう管理します。

通信断時の一時保存

ブローカーへ接続できない場合は、IoTゲートウェイや設備側へ送信データを保存します。

復旧後に古い順から再送します。保存容量を超えた場合の動作、データ優先順位、欠測表示を決めます。

重複データの処理

QoS 1や再接続後の再送によって、同じデータが複数回届く場合があります。

設備ID、時刻、通し番号を組み合わせ、受信側で重複を判定します。生産数量や積算値を単純加算しないようにします。

送信周期

温度や電力量は数分ごと、モーター状態は数秒ごと、異常は発生時すぐなど、データごとに送信条件を分けます。

すべてのデータを短周期で送ると、通信量とクラウド保存量が増えます。変化時送信と定期送信を組み合わせます。

時刻情報

受信時刻だけでなく、設備がデータを取得した時刻をペイロードへ含めます。

通信断後にまとめて再送した場合でも、本来の発生時刻を判別できます。設備とゲートウェイの時計を同期します。

認証

ブローカーへの接続時に、ユーザー名・パスワード、証明書、トークンなどを使用します。

設備ごとに認証情報を分けると、特定機器だけを停止・更新できます。共通パスワードの広範囲利用は避けます。

TLS暗号化

インターネットや移動通信網を利用する場合は、TLSによって通信を暗号化します。

証明書の有効期限、時刻、暗号方式を確認します。証明書更新時に遠隔設備が接続できなくならない運用が必要です。

アクセス制御

クライアントごとに、Publish・Subscribeできるトピックを制限します。

計測装置が他設備の指令トピックへ書き込めないようにし、必要最小限の権限を設定します。

設備への指令配信

上位システムから設備へ、設定値や動作要求をMQTTで送ることもできます。

通信が届いただけで即時動作させず、設備側で権限、値範囲、運転状態、安全条件を確認します。指令受付と実行結果を別メッセージで返します。

ブローカーの冗長化

多数設備が一台のブローカーへ依存すると、故障時の影響が大きくなります。

クラスタ構成、待機系、クラウドサービスなどを利用し、必要な可用性を確保します。切替時の再接続と重複配信を確認します。

監視とログ

接続クライアント数、送受信件数、未配信数、認証失敗を監視します。

設備側では、最終送信時刻、未送信件数、再接続回数を表示・保存します。

異常時の確認

接続できない場合は、ブローカーアドレス、ポート、認証、証明書、時刻を確認します。

データが届かない場合は、トピック名、購読条件、QoS、アクセス権限を点検します。重複する場合は、通し番号と再送処理を確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、設備データ、異常、計量実績などの送信項目と周期を整理し、MQTTのトピック構成を検討します。

IoTゲートウェイ、LTE・5G、TLS、証明書、一時保存、再送を組み合わせ、クラウドや監視サーバーへ安定してデータを送る構成に対応できる場合があります。

よくある質問

Q. MQTTは設備同士が直接通信する方式ですか?

A. 一般にはブローカーを介し、送信側と受信側がトピックを通じてデータを交換します。

Q. 通信が切れた場合にデータを再送できますか?

A. 設備側へ一時保存し、接続復旧後に時刻や通し番号を付けて再送できます。

Q. QoSは高いほどよいですか?

A. 信頼性は高まりますが通信負荷も増えるため、最新値、警報、実績など用途別に選定します。

Q. MQTTで設備へ運転指令を送れますか?

A. 送信できますが、設備側で権限、状態、安全条件を確認してから実行する必要があります。

Q. MQTT通信を暗号化できますか?

A. TLSと証明書を使用して暗号化・認証できます。

関連ワード

TCP/IP系アプリケーションプロトコルとは、IPネットワーク上でWeb表示、メール送信、ファイル転送、時刻同期など、特定の用途を実現するための通信規約です。

同じEthernet回線を使用していても、Web画面にはHTTP、メール通知にはSMTP、ファイル転送にはFTP、時刻同期にはNTPというように、目的に応じて使用するプロトコルが異なります。

ハカルプラスでは、HTTP、SMTP、FTP、TFTP、NTPなどを利用し、計測機器、IoTゲートウェイ、PLC、SBC、FAパソコン、サーバー、上位システムを連携する製品・システムを開発しています。

アプリケーションプロトコルの役割

TCP/IPは、異なる機器同士がネットワークを通じてデータを届けるための基本的な仕組みです。その上で、データの意味、形式、要求と応答の手順などを定めるのがアプリケーションプロトコルです。

プロトコル 主な用途 主に使用する通信
HTTP・HTTPS Web画面・API連携 TCPまたはQUIC
SMTP 電子メールの送信 TCP
FTP・FTPS ファイル転送 TCP
TFTP 簡易的なファイル転送 UDP
NTP 時刻同期 UDP

HTTP・HTTPS

HTTPは、WebブラウザとWebサーバーの間で、HTML、画像、JSONなどをやり取りするためのプロトコルです。

産業用システムでは、計測値や設備状態の表示、設定値の変更、履歴検索、Web APIによる上位システム連携などに使用されます。

HTTP通信は基本的に暗号化されません。認証情報、設定値、計測データなどを安全に扱う場合は、TLSで通信を暗号化するHTTPSを使用します。

組込み機器では処理能力や対応ライブラリの制約があるため、新しい通信方式へ対応できるかだけでなく、証明書の保存・更新方法も確認します。

SMTP

SMTPは、電子メールを送信・中継するためのプロトコルです。設備異常、上限値超過、停電、通信異常などを担当者へ通知する用途に利用されます。

現在のメールサーバーでは、SMTP認証とTLS暗号化を求められることが一般的です。古い計測機器が新しい認証方式や暗号化方式へ対応できない場合は、社内メールリレーやゲートウェイを介して送信します。

通信復旧後に同じ警報メールを繰り返し送らないよう、送信済み状態や再送回数を管理することも重要です。

FTP・FTPS・SFTP

FTPは、ファイルのアップロード、ダウンロード、一覧取得、名称変更などを行うプロトコルです。

  • 計測値や製造実績のCSVファイル転送
  • 設定ファイルの配布
  • ログや保守データの回収
  • 上位システムへの定期実績送信

FTPは、制御用接続とデータ転送用接続を分けて使用します。ファイアウォールやルーターを介する場合は、アクティブモードとパッシブモードの違いを考慮します。

通常のFTPでは利用者名、パスワード、転送データが暗号化されません。暗号化が必要な場合は、TLSを利用するFTPSや、SSH上で動作するSFTPを検討します。SFTPは名称が似ていますが、FTPとは別のプロトコルです。

TFTP

TFTPは、指定したファイルを簡単な手順で送受信するためのプロトコルです。利用者認証、フォルダー一覧、名称変更などの機能を基本的に持たず、読込みと書込みに機能を絞っています。

処理能力やメモリが限られた組込み機器へのファームウェア転送、設定ファイルの配布、起動用ファイルの取得などに利用されます。

TFTPには標準的な認証や暗号化がないため、外部ネットワークへ公開せず、設備内や保守専用の閉じたネットワークで使用します。不要な場合はサーバー機能を停止します。

NTPによる時刻同期

NTPは、パソコン、サーバー、計測機器などの内部時計を、ネットワーク上の基準時刻へ同期させるプロトコルです。

複数機器の時刻がずれていると、警報の発生順序を正しく判断できない、PLCとサーバーの履歴を照合できない、日報の集計範囲がずれるといった問題が起こります。

工場内では、各機器が外部の時刻サーバーへ直接接続するのではなく、社内NTPサーバーへ同期させる構成があります。

時刻が急激に変更されると、実績の重複や順序逆転が起こる場合があります。システムによっては、時刻差を徐々に補正する方法や、大きな差を警報として扱う方法を採用します。

通信異常時の設計

ネットワーク通信は、ケーブル断線、相手機器の停止、アドレス重複、通信混雑、サーバー保守などによって途切れる可能性があります。

  • 接続・応答のタイムアウト
  • 通信失敗時の再接続・再送
  • 未送信データの一時保存
  • 重複送信・重複登録の防止
  • 古い受信データの無効化
  • 通信履歴・エラーログの保存
  • 復旧後の自動再開

計測実績や製造実績では、送信元でデータ番号を付与し、受信側からの応答を確認して送信済みにするなど、欠損と二重登録を防ぐ仕組みを設けます。

セキュリティ上の注意点

HTTP、FTP、TFTPなどには、標準状態では認証や暗号化が十分でないものがあります。

  • HTTPS、FTPS、SFTPなどを使用する
  • 設備ネットワークと社内ネットワークを分離する
  • 接続元・接続先のIPアドレスを制限する
  • 不要なポートやサービスを停止する
  • 初期パスワードを変更する
  • 証明書や認証情報を適切に管理する
  • 通信ログと操作履歴を保存する

旧型機器が暗号化通信に対応していない場合は、外部ネットワークへ直接接続せず、ゲートウェイや中継サーバーを介して保護します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、Web監視画面、Web API、警報メール、CSV・ログファイル転送、組込み機器へのファイル配布、機器間の時刻同期などに対応しています。

プロトコル単体の実装だけでなく、PLC、計測機器、SBC、FAパソコン、データベース、基幹システムを含め、通信異常時の動作やセキュリティまで考慮したシステムとして設計します。

よくある質問

Q. HTTPとHTTPSはどのように使い分けますか?

A. 閉じたネットワークで認証情報を扱わない場合はHTTPを使用することもありますが、ログイン、設定変更、外部接続を伴う場合はHTTPSを基本として検討します。

Q. 古い機器から現在のメールサービスへ警報メールを送れますか?

A. 機器が必要な認証やTLSへ対応していない場合、直接送信できないことがあります。社内メールリレーやゲートウェイを介する方法を検討します。

Q. FTPで送信中に通信が切れた場合はどうなりますか?

A. 不完全なファイルが残る可能性があります。一時ファイル名で転送し、完了後に正式名称へ変更する方法や、ファイルサイズ・チェック値を確認する方法があります。

Q. NTP同期によって装置の時刻が急に変わることはありますか?

A. 設定や時刻差によっては変わる可能性があります。実績管理への影響を避けるため、大きな時刻差を警報にする、徐々に補正するなどの方法を検討します。

Q. 暗号化に対応していない既設機器を上位システムへ接続できますか?

A. 設備内の閉じたネットワークで通信し、ゲートウェイ側で暗号化や認証を行う構成を検討できます。既設機器を外部へ直接公開しないことが重要です。

関連ワード

ネットワーク通信基盤技術とは、パソコン、PLC、タッチパネル、産業用端末、組み込み機器、サーバーなどを接続し、データを送受信するための基礎技術です。TCP、UDP、IP、PPP、Ethernetは、それぞれ異なる役割を持つ通信プロトコルまたは通信規格であり、複数を組み合わせることでネットワーク通信を実現します。

例えば、有線LANではEthernetを使って機器を物理的に接続し、IPアドレスによって通信相手を識別します。その上で、欠落させたくないデータにはTCP、短い周期で繰り返し送るデータにはUDPを使用するなど、用途に応じて通信方式を選びます。安定したシステムを構築するには、各技術の役割だけでなく、通信断や電源断が発生した際の処理まで設計することが重要です。

ネットワーク通信を構成する階層

ネットワーク通信は、1つの規格だけで完結するものではありません。ケーブルや電気信号を扱う部分、同一ネットワーク内でデータを運ぶ部分、ネットワークを越えて宛先へ届ける部分、アプリケーション間でデータを受け渡す部分など、役割を分けて構成されます。

Ethernetは主に有線LANの配線、信号、フレーム転送を担い、IPは通信相手の宛先を管理します。TCPとUDPはIPの上でアプリケーション間のデータ転送を行います。さらに、その上位ではHTTP、FTP、Modbus TCPなどのアプリケーションプロトコルが使用されます。

このように、同じEthernetケーブルで接続していても、IPアドレス、TCPまたはUDP、ポート番号、データ形式が一致していなければ通信できません。

IPの役割

IPは「Internet Protocol」の略で、ネットワーク上の機器へデータを届けるための宛先管理を行います。各機器にはIPアドレスを設定し、送信元と送信先を識別します。

IPアドレスだけで通信できる範囲は、サブネットマスクによって決まります。異なるネットワークへ通信する場合は、ルーターやデフォルトゲートウェイを経由します。設備内で使用する場合でも、社内LANや上位システムへ接続する際には、ネットワーク管理部門とアドレス体系を調整する必要があります。

IP自体には、データが確実に届いたことを保証する機能はありません。到達確認や再送が必要な場合はTCPを使用し、簡潔な送信を優先する場合はUDPを使用します。

TCP/IPとは

TCP/IPは、インターネットや社内LAN、工場内ネットワークで広く使用される通信技術の総称です。IPがデータを宛先へ運び、TCPがデータの到達確認、再送、順序管理を行います。

TCPでは、通信開始前に送信側と受信側で接続を確立します。送信したデータが欠落した場合は再送し、到着順序が入れ替わった場合は正しい順番へ並べ直します。そのため、計量実績、製造指示、設定値、ファイルなど、欠落や順序違いを避けたいデータに適しています。

ただし、TCPを使用すれば必ず通信できるわけではありません。相手機器の停止、ケーブル断、スイッチングハブの故障などが発生すると接続できないため、ソフトウェア側で接続タイムアウト、再接続、未送信データの保持などを設けます。

UDP/IPとは

UDP/IPは、IPを利用してデータを送信しますが、通信前の接続確立、到達確認、再送、順序制御をUDP自体では行いません。送信側はデータを送り出しますが、受信側へ届いたかは確認しません。

処理が比較的簡潔で、確認応答を待たずに送信できるため、短い周期で繰り返す状態通知、同じ情報を複数機器へ送る配信、多少の欠落より遅延の少なさを優先する用途などに使用されます。

欠落が問題になる場合は、アプリケーション側で通番、応答確認、タイムアウト、再送処理を追加します。UDPを使用すれば常に高速になるわけではなく、ネットワーク負荷、受信側の処理能力、データ量などによって応答性は変わります。

PPPとは

PPPは「Point-to-Point Protocol」の略で、2つの通信機器を1対1で接続するためのプロトコルです。通信条件の調整、認証、IPアドレスに関する設定などの機能を持ちます。

以前はモデムを用いた電話回線のダイヤルアップ接続で広く使用されました。現在でも、Ethernet上でPPPを利用するPPPoE、一部の通信モジュール、モバイル回線対応の組み込み機器などで関連技術が用いられます。

PPPは多数の機器を接続するLAN規格ではなく、基本的には2点間の通信路を確立するための技術です。設備へ採用する場合は、接続、認証、切断、回線断後の再接続方法まで検討します。

Ethernetとは

Ethernetは、パソコン、PLC、タッチパネル、産業用機器などを有線LANへ接続するための通信規格です。ケーブル、コネクタ、電気信号、通信速度、フレームと呼ばれるデータ単位などを定めています。

一般にはLANケーブルとスイッチングハブを使用し、複数の機器を接続します。通信速度には100Mbps、1Gbpsなどがあり、機器、ケーブル、スイッチングハブが同じ規格へ対応している必要があります。

産業設備では、制御盤内のノイズ、ケーブル長、配線経路、コネクタの固定、周囲温度なども通信品質に影響します。動力線と通信線を近接させる場合は、配線分離やシールド、接地方法を検討します。

通信量と応答時間の考え方

データ量をD、通信速度をRとすると、データを伝送するための理論時間tは次の式で概算できます。

t=D÷R

例えば、1MBのデータを100Mbpsで送る場合、1MBを約8Mbitとすると、理論上の伝送時間は約0.08秒です。

ただし、実際にはTCPやEthernetの制御情報、再送、ネットワーク機器の処理、受信側ソフトウェアの待ち時間が加わります。設備制御では理論速度だけでなく、通信周期、応答時間のばらつき、同時通信台数を確認します。

主な用途

  • PLCとタッチパネル、パソコン、計量機器の接続
  • 計量値、運転状態、警報、製造実績の収集
  • 生産管理システムや基幹システムとの連携
  • 組み込み機器とサーバー間の通信
  • 設備の遠隔監視や保守支援
  • ネットワークカメラやセンサデータの送信

計量・配合設備では、上位システムから品種、配合、目標重量を受信し、製造完了後に実績を返す構成があります。制御に必要なデータと、履歴保存用のデータでは重要度や周期が異なるため、用途に応じて通信経路や方式を分けることがあります。

設計・制御上のポイント

IPアドレスとポート番号の管理

同じネットワーク内でIPアドレスが重複すると、通信先が不安定になったり、別の機器へ接続したりする可能性があります。IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ポート番号を一覧化し、設備増設や機器交換時にも管理します。

通信異常時の安全側動作

通信が途絶えた場合に、前回受信した値を使い続けると危険なことがあります。運転許可、目標重量、搬送先など、設備動作に関係する情報が更新されない場合は、一定時間後に無効として扱い、安全側へ停止させます。

通信復旧後も、無条件に自動運転へ戻さず、データの整合性や設備状態を確認してから復帰させる構成を検討します。

通信周期とネットワーク負荷

短い周期で大量のデータを送ると、PLC、タッチパネル、スイッチングハブなどの負荷が増えます。高速更新が必要な制御データと、数秒または数分ごとでよい実績データを分け、適切な周期を設定します。

画像や大容量ファイルと設備制御通信を同じネットワークへ集中させると、応答時間が変動する場合があります。必要に応じてVLANや物理的なネットワーク分離を検討します。

データ欠落と再送

上位システムやサーバーが停止している間も製造を継続する場合は、PLC、タッチパネル、組み込み機器などへ未送信データを一時保存します。通信復旧後に再送し、製造番号や連番によって二重登録を防止します。

セキュリティ対策

工場内ネットワークを社内LANやインターネットへ接続する場合は、ネットワーク分離、ファイアウォール、接続先制限、利用者認証、アクセス履歴、ソフトウェア更新などを検討します。

遠隔保守では、常時無制限に設備へ接続できる構成を避け、必要な時間だけ接続を許可する方法や、操作権限を分ける方法があります。

異常監視・復旧・保守

主な異常には、通信タイムアウト、接続切断、IPアドレス重複、通信データ異常、スイッチングハブ故障、ケーブル断などがあります。タッチパネルには、通信相手、異常発生時刻、最終受信時刻などを表示すると、原因を特定しやすくなります。

通信異常の調査では、電源、リンクランプ、ケーブル、IP設定、ポート番号、ファイアウォール、アプリケーションの順に確認します。機器交換時には、IPアドレスだけでなく、通信方式、データ形式、バイト順、文字コードなどの互換性も確認します。

定期的にネットワーク構成図、アドレス一覧、通信仕様書、機器設定のバックアップを更新しておくと、故障時や設備更新時の復旧を行いやすくなります。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、TCP/IP、UDP/IP、PPP、Ethernetを利用する製品やシステムについて、接続対象、通信データ、更新周期、異常時動作を確認し、ネットワーク構成を検討します。

制御盤内のスイッチングハブや通信機器の選定、IPアドレス設計、PLC通信プログラム、タッチパネル画面、組み込みソフト、通信異常時のインターロックまで、設備全体に合わせて構成します。

計量値、製造指示、警報、運転状態、実績データなどをパソコンやサーバーへ保存し、生産管理システムや基幹システムへ連携する構成も検討します。通信断時の一時保存、再送、重複防止、電源断後の復旧処理まで含めて設計します。

既設設備のネットワーク化では、現在のシリアル通信、PLC、配線、データ形式、セキュリティ条件を確認し、通信変換器の利用や段階的な更新を検討します。

よくある質問

Q. TCP通信が切断された後は自動で再接続できますか?

A. ソフトウェアに再接続処理を設ければ可能です。ただし、短時間に再接続を繰り返さないよう待ち時間を設定し、復旧後にデータの整合性を確認する必要があります。

Q. UDPでデータが欠落したことを検出できますか?

A. UDP自体には欠落検出機能がありませんが、データへ連番を付けることで抜けを検出できます。必要に応じてアプリケーション側で応答確認や再送を行います。

Q. LANケーブルを交換しても通信しない場合は何を確認しますか?

A. 機器の電源、リンク状態、IPアドレス、サブネットマスク、ポート番号、通信プロトコル、ファイアウォール設定などを確認します。ケーブル以外の設定不良が原因の場合もあります。

Q. 既設のRS-232CやRS-485機器をEthernetへ接続できますか?

A. 通信変換器を使用できる場合があります。ただし、電気信号を変換するだけでなく、通信速度、データ形式、プロトコル、応答時間が既設機器と合うかを確認します。

Q. PLCや通信機器を更新しても既存システムと接続できますか?

A. 新旧機器で通信プロトコル、アドレス、データ長、バイト順、文字コードなどが一致すれば接続できる場合があります。更新前に通信仕様と既存プログラムを確認し、必要に応じて変換処理を追加します。

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