Technology
マイコン制御
(マイコンせいぎょ)
マイコン制御とは、マイクロコンピュータを製品や装置へ組み込み、センサ入力の処理、演算、表示、通信、データ保存、外部機器の制御などをソフトウェアで実行する技術です。マイコンは、CPU、メモリ、入出力機能、タイマー、通信機能などを小型の半導体へ集約したもので、計測機器、計量機器、表示器、警報器、専用制御装置などに広く使用されています。
マイコンが普及する以前は、判定、タイマー、演算、表示切替などをリレー、トランジスタ、論理回路などで構成していました。処理が複雑になるほど部品や配線が増え、回路変更も難しくなります。マイコンを採用すると、処理の一部をソフトウェアへ置き換えられ、小型化、省電力化、多機能化に加え、通信や履歴保存なども実現しやすくなります。
マイコン制御の仕組み
マイコンは、センサ、スイッチ、接点などから入力を受け取り、あらかじめ書き込まれたプログラムに従って演算・判定し、その結果を表示器、ブザー、リレー、通信回路などへ出力します。
例えば計量機器では、ロードセルの微小な信号をアナログ回路で増幅し、A/D変換器で数値へ変換します。マイコンは、その値から重量を演算し、ゼロ補正、風袋引き、安定判定、上下限判定、警報出力などを実行します。
一般的な組み込みソフトでは、入力確認、演算、表示更新、出力処理を一定周期で繰り返します。高速な計測、正確な時間管理、通信受信などは、タイマーや割り込みを利用して優先的に処理します。
マイコンを構成する主な機能
演算・判定
センサ値を物理量へ換算し、補正、平均化、フィルター処理、積算、最大値・最小値の記録、設定値との比較を行います。センサ断線や計測範囲外などの異常も判定できます。
入力・出力
接点、パルス、電圧、電流、センサ信号などを入力し、ランプ、ブザー、リレー、パルス、アナログ信号などを出力します。外部機器と電圧や信号形式が異なる場合は、増幅、絶縁、保護を行う回路を介して接続します。
表示・操作
液晶やLEDへ計測値、設定値、運転状態、警報内容を表示します。押しボタン、タッチスイッチ、ロータリースイッチなどから操作を受け付け、設定変更や画面切替を行います。
通信
シリアル通信、Modbus、Ethernet、無線通信などを使用し、PLC、パソコン、サーバー、他の計測機器とデータを送受信します。計測値の送信、設定変更、時刻合わせ、遠隔監視、ファームウェア更新などに利用されます。
データ保存
内部の不揮発性メモリ、SDカード、USBメモリなどへ、設定値、計測結果、積算値、警報履歴を保存します。保存件数、書込み周期、停電時のデータ保護を考慮して構成します。
主な用途
- 重量、電力、温度、流量などの計測・演算
- 設定値との比較による警報や接点出力
- 表示器、操作キー、ブザーの制御
- パルス、アナログ信号、センサ信号の入出力
- 計測値、積算値、警報履歴の保存
- PLC、パソコン、サーバーとの通信
- プリンターへの計測・計量結果の出力
マイコン制御は、決められた機能を小型の製品内で完結させたい場合に適しています。同じ基板でも、ソフトウェアや設定を変更することで、演算方法、表示内容、通信データ、警報条件などを調整できる場合があります。
PLC制御との違い
PLCは、工場設備や製造ラインの制御を目的として設計された制御機器です。入出力ユニットを組み合わせやすく、搬送、計量、製造工程などのシーケンス制御や設備改造に適しています。
マイコン制御は、製品内部へ専用の基板とソフトウェアを組み込み、決められた機能を実行する用途に適しています。回路、外形、消費電力、操作方法まで製品専用に設計できるため、小型化や量産に向いています。
実際には、マイコン搭載機器が重量や電力を計測し、測定値をPLCへ送信して設備全体を制御するなど、両者を組み合わせます。
設計上のポイント
ハードウェアとソフトウェアを適切に分担する
信号増幅、絶縁、電源保護、過電流保護、ノイズ除去、安全停止などは、ソフトウェアだけでは確保できません。製品に必要な応答速度、安全性、コストを踏まえ、回路で実現する処理とソフトウェアで実現する処理を分けます。
安全に関わる出力は、マイコンが正常に動作していることだけに依存させず、必要に応じて専用回路、リレー、ヒューズなどを組み合わせます。
処理周期と応答時間を設計する
計測周期、表示更新、通信、データ保存を同時に処理するため、それぞれに必要な応答時間を整理します。重い通信処理やメモリ書込みを待ち処理で実装すると、計測や出力の更新が遅れる場合があります。
優先度の高い計測や保護処理はタイマー割り込みなどで実行し、通信や保存は別の処理へ分けます。処理時間を測定し、最悪条件でも必要周期を守れることを確認します。
メモリ容量と書込み寿命を考慮する
使用するマイコンによって、プログラム容量、RAM、保存領域、通信機能が異なります。将来の機能追加や通信仕様変更も考慮し、一定の余裕を持って選定します。
不揮発性メモリには書込み回数の上限があります。積算値などを短い周期で毎回保存すると寿命を縮めるため、一定時間ごとに保存する、値が変化した場合だけ保存する、複数領域へ分散して書き込むなどの方法を検討します。
電気的ノイズへ対策する
工場では、モーター、インバーター、電磁弁、リレーなどからノイズが発生します。ノイズが回路へ入ると、計測値の乱れ、誤入力、通信異常、マイコンの再起動などにつながります。
基板パターン、接地、シールド、絶縁、電源フィルター、サージ保護を検討し、ソフトウェアでも入力の連続確認や異常値除外を行います。対策後は、実際の使用環境を想定した試験が重要です。
計測値の補正とフィルターを行う
センサ信号には、ばらつきやノイズが含まれます。複数回の測定値を平均する移動平均などで表示を安定させられますが、平均回数を増やすほど応答が遅くなります。
例えば、直近n回の測定値をx1からxnとすると、平均値x̄は次の式で求められます。
x̄=(x1+x2+…+xn)÷n
ノイズ低減と応答速度のどちらを優先するかを用途に応じて決めます。急激な変化を検出する警報処理では、表示用とは別の値を使用する場合もあります。
異常時は安全側へ移行する
ソフトウェアの停止、電源電圧低下、メモリ異常、センサ断線、通信断などが起きても、危険な出力を継続しない設計が必要です。ウォッチドッグタイマーで処理停止を検出し、マイコンを再起動させる方法があります。
再起動時は、出力を一度安全な状態にし、設定値、センサ状態、通信状態を確認してから通常動作へ戻します。設備を自動復帰させるか、作業者の確認を必要とするかは、接続先と安全性に応じて決定します。
通信異常とデータ欠落への対応
PLCや上位システムとの通信が切れた場合、最後に受信した指令を継続するのか、出力を停止するのかを決めます。古い指令を使い続けると危険な用途では、一定時間通信がない場合に出力を安全側へ切り替えます。
データ送信では、同じデータの重複送信や欠落を防ぐため、通番、時刻、チェックサム、応答確認などを使用します。通信復旧後に未送信データを再送する場合は、保存容量と再送順序を設計します。
停電とデータ保存
停電時に設定値や積算値を保持するには、不揮発性メモリへ保存します。ただし、書込み途中に電源が切れると、データが不完全になる可能性があります。
データ本体に加えて識別番号やチェック値を保存し、起動時に正常性を確認する方法があります。複数世代を保存し、最新データが破損している場合に一つ前のデータを使用する構成も検討します。
電源電圧低下を早めに検出し、残された時間で必要データを保存する方法もあります。保存に必要な時間と電源保持時間を確認する必要があります。
ソフトウェアの試験と変更管理
組み込みソフトの試験では、通常操作だけでなく、センサ断線、通信断、メモリ異常、電源の瞬断、設定範囲外、連続操作なども確認します。異常が同時に発生した場合の動作も重要です。
プログラムを変更すると、計測、表示、通信、保存など複数の機能へ影響する可能性があります。ソフトウェアの版、変更内容、対象製品、試験結果を管理し、変更箇所だけでなく関連機能も再確認します。
現地で更新する場合は、更新中の停電、誤ったファイルの書込み、更新失敗からの復旧方法も準備します。更新後は設定値や校正値が正しく引き継がれていることを確認します。
部品変更と既存製品の更新
マイコンやメモリ、表示器、通信部品が生産終了となり、代替部品へ変更する場合があります。端子配置や電気仕様が似ていても、処理速度、周辺機能、起動時間、メモリ構成が異なることがあります。
部品変更時は回路だけでなく、ソフトウェア、製造検査、通信互換性、ノイズ性能まで確認します。既存製品との接続互換性が必要な場合は、通信データ形式や応答時間を維持できるかも検証します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、計測機器や計量機器を中心に、マイコンを搭載した製品の回路・組み込みソフトウェアを設計しています。製品仕様に応じて、マイコン、電源、アナログ入力、接点入出力、表示、操作、通信インターフェースなどを構成します。
重量、電力、温度、パルスなどの計測処理に加え、補正演算、表示、警報出力、プリンター制御、SDカードへの保存、PLCやパソコンとの通信などを組み込むことができます。
通信断、停電、センサ異常、メモリ異常などを考慮したフェイルセーフ動作や、データの欠落・重複を抑える処理も、製品用途を確認して設計します。
既存製品の機能追加、部品生産終了に伴う基板更新、通信仕様変更、ソフトウェア改修についても、処理能力、メモリ容量、回路互換性、既存機器への影響を確認して対応を検討します。
よくある質問
Q. 既存のマイコン製品へ新しい機能を追加できますか?
A. プログラム容量、RAM、処理時間、入出力端子に余裕があれば追加できる場合があります。新しいセンサや通信回路が必要な場合は、基板変更も検討します。
Q. マイコンが動作しなくなった場合はどのように復旧しますか?
A. ウォッチドッグタイマーなどで処理停止を検出し、自動再起動させる方法があります。再起動後は出力を安全状態とし、設定値やセンサ状態を確認してから復帰します。
Q. 停電時に設定値や積算値が壊れることはありますか?
A. 書込み途中に停電すると破損する可能性があります。複数世代保存、チェック値、電圧低下検出などを組み合わせて保護します。
Q. PLCとの通信が切れた場合も運転を続けられますか?
A. 製品用途によって異なります。単独運転を継続する構成と、一定時間通信がなければ出力を停止する構成があり、安全性を考慮して決定します。
Q. 生産終了したマイコンを別品へ置き換えられますか?
A. 置き換えられる場合がありますが、回路、ソフトウェア、処理速度、通信、ノイズ性能の再確認が必要です。必要に応じて基板とソフトを合わせて更新します。
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