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硝酸態窒素計測
(しょうさんたいちっそけいそく)
硝酸態窒素計測とは、植物体、土壌、培養液、排液などに含まれる硝酸態窒素の量を測定することです。硝酸態窒素は、植物が吸収する主要な窒素成分の一つであり、作物の生育状態や窒素施肥の過不足を判断するための指標として利用されます。
窒素肥料が不足すると、葉色が薄くなる、生育が遅れる、収量が低下するといった症状が現れることがあります。一方、窒素を過剰に施用すると、茎葉ばかりが成長する、病害に弱くなる、品質が低下する、未利用の窒素が土壌や排液へ流出するといった問題につながります。
硝酸態窒素を測定し、その結果を施肥判断へ活用することで、作物に必要な窒素量を把握しやすくなります。
硝酸態窒素とは
窒素は、植物が生育するために必要な多量要素です。土壌や肥料中の窒素は、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、有機態窒素など、複数の形で存在します。
硝酸態窒素は、硝酸イオンとして存在する窒素分を表したものです。植物は根から硝酸イオンを吸収し、体内でアミノ酸やタンパク質などの合成に利用します。
硝酸態窒素は水に溶けやすいため、土壌中を移動しやすく、降雨や過剰なかん水によって根域外へ流出する場合があります。そのため、施肥量だけでなく、測定時点で植物や土壌にどの程度存在しているかを確認することが重要です。
硝酸態窒素を測定する対象
硝酸態窒素計測では、目的に応じて測定対象が異なります。
- 葉柄や茎などの植物汁液
- 葉や植物体の抽出液
- 土壌抽出液
- 養液栽培の培養液
- 施設栽培から排出される排液
- かんがい用水や地下水
植物汁液を測定すると、作物体内に蓄積している硝酸態窒素の状態を確認できます。土壌や培養液を測定すると、根が吸収できる環境にどの程度の硝酸態窒素が存在するかを確認できます。
植物体を測定する目的
植物体内の硝酸態窒素量は、窒素吸収量と、その後の代謝や生育による消費量の影響を受けます。
植物体に硝酸態窒素が多く蓄積している場合、窒素が十分に供給されていることを示す場合があります。ただし、日照不足、低温、生育不良などによって、吸収した硝酸を十分に利用できず蓄積している可能性もあります。
反対に測定値が低い場合は、窒素不足だけでなく、生育が旺盛で吸収した窒素を速く利用している場合もあります。そのため、測定値だけで判断せず、生育段階、葉色、天候、収量などと併せて確認します。
主な測定方法
イオン電極式
硝酸イオンに反応する電極を使用し、試料中の硝酸イオン濃度を測定します。植物汁液や養液などを比較的短時間で測定できます。
測定前には校正液を用いて校正し、電極へ試料を接触させます。試料量、温度、共存イオン、電極の汚れなどによって測定値が影響を受ける場合があります。
試験紙・比色法
試料と試薬を反応させ、発色の程度から硝酸態窒素を求める方法です。目視で色見本と比較する方式や、光学機器で吸光度を測定する方式があります。
簡易測定に適していますが、発色時間、試料の色、濁り、測定者の判断によってばらつく場合があります。
光学式測定
試料に光を当て、透過光や吸収光の特徴から硝酸成分を推定します。試薬を使用しない方式では、測定作業や廃液処理を減らせる可能性があります。
光学式では、試料の濁り、色、測定セルの汚れ、温度などの影響を考慮し、対象試料に適した検量線を使用します。
植物汁液を測定する手順
植物汁液を測定する場合は、同じ部位、同じ生育段階、同じ時間帯で採取条件をそろえることが重要です。
一般的な手順は次のとおりです。
- 測定する作物と採取部位を決める
- 代表的な複数株から葉柄などを採取する
- 搾汁器などで植物汁液を採取する
- 必要に応じてろ過または希釈する
- 測定器を校正する
- 試料を測定して結果を記録する
- 施肥量、生育、天候などと比較する
採取部位が異なると硝酸態窒素の蓄積量も異なるため、過去データと比較する場合は採取方法を統一します。
測定値の単位
硝酸態窒素の測定値は、mg/L、ppm、mg/kgなどで表されます。機器によっては硝酸イオン濃度として表示される場合もあります。
硝酸態窒素と硝酸イオンでは、同じ試料でも表示される数値が異なります。硝酸態窒素は、硝酸イオンに含まれる窒素分だけを表します。
データを比較するときは、表示対象と単位が同じであることを確認します。
測定結果を施肥へ活用する方法
継続的に硝酸態窒素を測定し、生育段階ごとの基準値や過去の良好な作型と比較することで、追肥の要否を判断しやすくなります。
測定値が低い場合でも、すぐに追肥するのではなく、根の状態、土壌水分、温度、日射、病害などを確認します。肥料が土壌中にあっても、根傷みや低温によって吸収できていない場合があります。
測定値が高い場合は、次回の施肥量を減らす、施肥間隔を延ばす、培養液濃度を調整するなどの対応を検討します。
測定条件を統一する重要性
植物体内の硝酸態窒素は、一日の時間帯、天候、生育段階、かん水後の経過時間によって変化します。そのため、不規則な条件で測定すると、施肥による変化か測定条件による変化かを判断しにくくなります。
例えば、毎週同じ曜日の午前中に、同じ葉位の葉柄を採取するなど、測定ルールを決めます。複数株を測定して平均値を求めることで、株ごとのばらつきも把握できます。
測定値が不自然な場合の確認
測定値が急に変化した場合は、肥料やかん水だけでなく、採取部位、試料の希釈倍率、機器校正、電極や測定セルの汚れを確認します。
イオン電極式では、電極の乾燥、劣化、校正液の状態によって値が安定しないことがあります。光学式では、測定窓の汚れや気泡によって透過光が変化する場合があります。
同じ試料を複数回測定し、結果の再現性を確認することも有効です。
保守・記録管理
測定器は、使用前後に電極や測定セルを洗浄し、指定された方法で保管します。定期的に校正を行い、校正日や標準液の有効期限を記録します。
測定結果には、日時、圃場、品種、生育段階、採取部位、施肥量、天候などを併せて記録します。数値だけでなく栽培条件を残すことで、翌作以降の施肥改善へ活用できます。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、植物の硝酸態窒素を非破壊で測定する機器について、対象作物、測定部位、栽培方法、記録したい項目などの条件を確認して検討します。
測定値と施肥、生育、収量などを関連付けた栽培試験や履歴管理についても、必要な運用を確認したうえで対応できる場合があります。
よくある質問
Q. 硝酸態窒素を測れば必要な施肥量が自動的に決まりますか?
A. 測定値は施肥判断の材料になりますが、生育段階、天候、土壌、作物の状態なども併せて判断する必要があります。
Q. 植物汁液と土壌では同じ基準値を使用できますか?
A. 測定対象と単位が異なるため、同じ基準値は使用できません。作物、採取部位、測定方法に対応した基準で比較します。
Q. 測定する時間帯によって結果は変わりますか?
A. 日射、吸水、生育などによって変化する場合があります。継続比較する場合は、採取時間をそろえます。
Q. 硝酸態窒素と硝酸イオンは同じ数値ですか?
A. 同じではありません。硝酸態窒素は、硝酸イオンに含まれる窒素分を表すため、換算が必要です。
Q. 植物を切らずに測定できますか?
A. 光学的な測定方式では、葉や葉柄を切り取らずに測定できる場合があります。対象作物や測定部位の仕様を確認します。