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非破壊植物栄養診断

(ひはかいしょくぶつえいようしんだん)

非破壊植物栄養診断とは、葉や茎などの植物体を切断・搾汁せずに測定し、作物の窒素状態や栄養状態を推定する方法です。光、画像、電気的特性などを利用して植物の状態を測定し、追肥の要否や施肥量を判断するための情報として活用します。

従来の植物分析では、葉や葉柄を採取し、搾汁、抽出、試薬反応などを行う方法があります。これらは成分を詳しく確認できる一方、試料採取や前処理に手間がかかり、測定した部位をその後の生育調査に使用できません。

非破壊方式では、同じ株や同じ部位を繰り返し測定できるため、施肥前後や生育期間中の変化を継続的に確認できます。

植物栄養診断とは

植物栄養診断とは、植物体の色、成分、生育量などを調べ、窒素、リン酸、カリウムなどの栄養状態を判断することです。

肥料が不足すると生育や収量が低下する可能性があります。一方、肥料を過剰に与えると、徒長、品質低下、病害への抵抗性低下、肥料成分の流出などにつながります。

植物自体を測定することで、土壌や培養液に肥料成分が存在するかだけでなく、作物が実際に吸収した結果を確認できます。

非破壊で診断する主な方法

葉色・画像による測定

葉の色や画像情報を利用して、クロロフィル量や窒素状態を推定します。葉色は窒素状態と関係する場合がありますが、品種、葉齢、日照、病害などの影響も受けます。

光の反射による測定

葉へ光を照射し、反射して戻る光を測定します。可視光や近赤外光など、複数の波長を利用することで、葉色や組織状態の違いを捉えます。

光の透過による測定

葉や葉柄を光源と受光部の間に挟み、内部を通過した光を測定します。特定波長の透過率や吸光度から、硝酸態窒素などと関係する値を推定できる場合があります。

蛍光による測定

植物へ特定波長の光を照射し、植物から発生する蛍光を測定します。光合成状態や葉緑素の状態を評価する用途に利用されます。

光学測定の仕組み

植物へ光を当てると、一部は表面で反射し、一部は植物内部で吸収・散乱され、残りが透過します。

植物に含まれる色素、水分、硝酸成分などは、波長によって光を吸収する程度が異なります。この違いを測定し、基準となる化学分析値との関係から成分値を推定します。

透過率は、次のように表されます。

透過率=透過光強度÷入射光強度

目的成分の影響を受ける波長だけでなく、葉の厚さ、水分、光源変動などを補正する波長も測定することで、推定の安定性を高めます。

多波長で測定する理由

一つの波長で得られる値には、目的成分だけでなく、植物体の厚さ、表面状態、色、測定位置などの影響が含まれます。

複数波長の比率や差分を使用すると、目的成分以外の影響を補正できる場合があります。

例えば、硝酸成分に反応しやすい波長の信号と、厚さや水分の影響を受ける基準波長の信号を組み合わせて演算します。

ただし、使用する波長や演算式は、対象作物、品種、部位などによって異なります。

検量線の役割

非破壊測定器が表示する成分値は、一般に光学信号と基準分析値の関係から推定した値です。この関係を表す式を検量線または推定モデルと呼びます。

検量線を作成するには、濃度の異なる多数の植物試料について、光学信号と化学分析値を取得します。得られたデータを統計的に解析し、光学信号から成分値を求める式を作ります。

対象作物や測定部位が異なる場合、同じ検量線を使用できないことがあります。対象条件に対応した検量線で測定することが重要です。

同じ株を繰り返し測定できる利点

植物体を切断しないため、同じ株を生育期間中に繰り返し測定できます。施肥前、施肥後、収穫前などの変化を追跡しやすくなります。

栽培試験では、同じ個体の変化を追うことで、株ごとの個体差の影響を抑えながら施肥処理の効果を比較できます。

また、多数の株を短時間で測定できる方式であれば、圃場内のばらつきを把握する用途にも活用できます。

測定部位を統一する重要性

植物の栄養成分は、葉位、葉齢、葉柄の位置などによって異なります。古い葉と新しい葉、先端側と基部側では、同じ株でも測定値が変化する場合があります。

継続比較する場合は、次の条件を統一します。

  • 測定する葉位
  • 葉や葉柄の測定位置
  • 測定面の向き
  • 測定する時間帯
  • かん水や施肥からの経過時間
  • 測定時の押さえ方

測定手順を標準化し、記録へ残すことで、担当者が変わっても比較しやすくなります。

診断結果を施肥判断へ活用する方法

診断値が低い場合は、窒素不足の可能性があります。ただし、根傷み、低温、過湿などによって、肥料が存在しても吸収できていない場合があります。

診断値が高い場合は、肥料が十分に吸収されている、または植物体内に硝酸成分が蓄積している可能性があります。追肥を減らす、施肥時期を遅らせるなどの判断材料にできます。

一回の測定値だけで判断せず、過去の測定値、生育、葉色、収量、品質、天候などを併せて評価します。

非破壊診断の注意点

非破壊測定は、植物成分を化学的に直接分離して測定する方式ではなく、光学信号などから推定する方法です。

測定対象が検量線の範囲外である場合や、病害、傷、汚れ、水滴などがある場合は、推定誤差が大きくなる可能性があります。

新しい品種や栽培条件へ適用するときは、必要に応じて従来分析との比較を行い、測定値の傾向を確認します。

測定値が不自然な場合の確認

同じ株で測定値が大きく変わる場合は、測定位置、葉や葉柄の挟み方、表面の水滴、測定窓の汚れを確認します。

すべての試料で同じ方向にずれる場合は、光源、受光部、校正状態を確認します。基準部材や既知の試料を測定し、機器の再現性を確認する方法があります。

対象部位が厚すぎる場合は、透過光量が不足して安定した測定ができないことがあります。

測定データの記録

測定結果には、日時、圃場、作物、品種、株番号、葉位、測定部位、生育段階などを関連付けます。

施肥量、かん水量、天候、収量、品質なども保存すると、どのような栽培条件で良好な結果が得られたかを分析できます。

個々の測定値だけでなく、平均値、最大値、最小値、ばらつきを確認することも重要です。

保守・校正

光源や受光窓に汚れが付着すると、測定光量が変化します。使用後は指定された方法で清掃し、傷を付けないようにします。

光源は使用時間や温度によって出力が変化する場合があります。基準板などを用いて定期的に測定状態を確認します。

機器やソフトウェアを更新した場合は、過去の測定値との連続性も確認します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、多波長の光を利用して植物体の硝酸態窒素などを非破壊で測定する機器について、対象作物、測定部位、測定範囲などの仕様を確認して検討します。

測定結果の履歴保存、施肥条件との比較、栽培試験データの管理についても、必要な項目や運用を確認して構成します。

よくある質問

Q. 非破壊植物栄養診断では葉を切り取る必要がありますか?

A. 光学式などでは、葉や葉柄を切り取らずに挟んで測定できる場合があります。

Q. 測定値は化学分析と同じですか?

A. 光学信号と基準分析値の関係から推定した値です。測定対象や検量線によって誤差が生じます。

Q. 同じ作物ならどの葉を測定してもよいですか?

A. 葉位や部位によって値が異なるため、比較する場合は測定位置を統一します。

Q. 測定結果だけで追肥量を決められますか?

A. 施肥判断の材料になりますが、生育、天候、土壌、収量なども併せて判断します。

Q. 同じ株を繰り返し測定できますか?

A. 非破壊方式であれば、同じ株の生育に伴う変化を継続的に測定できます。

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