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多波長光計測

(たはちょうこうけいそく)

多波長光計測とは、波長の異なる複数の光を測定対象へ照射し、それぞれの反射光や透過光を測定する技術です。物質は成分や状態によって光の吸収・反射特性が異なるため、複数波長の信号を組み合わせることで、単一波長では判別しにくい成分や状態を推定します。

植物計測では、葉、葉柄、果実などへ複数の波長を照射し、硝酸成分、葉色、水分、色素、生育状態などと関係する光学信号を取得します。対象を切断せずに測定できる場合があり、栽培中の同じ株を継続的に調査する用途に利用されます。

波長とは

光は波としての性質を持ち、波の山から次の山までの長さを波長と呼びます。波長によって光の色や、物質に吸収される特性が異なります。

人の目で見える可視光のほかに、紫外光や近赤外光などがあります。植物の成分や組織は、特定の波長を吸収し、別の波長を反射・透過します。

そのため、目的成分の影響を受けやすい波長を選んで測定します。

複数の波長を使用する理由

一つの波長の測定値には、目的成分だけでなく、厚さ、水分、表面状態、色、外光などの影響が含まれます。

複数の波長を使用すると、目的成分に反応しやすい波長と、背景変動の補正に適した波長を組み合わせられます。

例えば、ある波長で硝酸成分の影響を受けた信号を測定し、別の波長で葉柄の厚さや光源変動の影響を補正する方法があります。

波長間の比率や差を使用することで、単純な光量変化の影響を減らせる場合があります。

基本的な測定方式

透過方式

測定対象の一方から光を照射し、反対側へ通過した光を測定します。葉や薄い葉柄など、光を透過できる対象に適しています。

反射方式

対象へ光を照射し、表面や内部で反射して戻った光を測定します。対象の片側だけに光源と受光部を配置できるため、厚い対象や連続搬送物にも使用しやすい方式です。

散乱方式

対象内部で散乱した光を、照射位置とは異なる位置で測定します。組織内部の状態や成分の影響を捉えるために利用される場合があります。

多波長光計測装置の構成

一般的な装置は、次の機器で構成されます。

  • 複数波長のLEDや光源
  • 光を対象へ導くレンズや光ファイバ
  • 外光を遮る測定部
  • 反射光や透過光を受ける受光素子
  • 受光信号を増幅・変換する回路
  • 波長ごとのデータを演算する制御部
  • 測定結果を表示・保存する機能

複数のLEDを順番に点灯し、それぞれの波長に対する受光量を測定する構成があります。

光学信号の演算

多波長光計測では、各波長の受光量をそのまま使用するだけでなく、比率、差分、対数変換などを行います。

波長Aと波長Bの比率は、次のように表せます。

波長比=波長Aの受光信号÷波長Bの受光信号

比率を使用すると、光源全体の明るさ変動や、測定対象との距離変動の影響を低減できる場合があります。

複数の波長信号を統計モデルへ入力し、目的成分を推定する方法もあります。

検量線と推定モデル

光学信号から成分値を求めるため、基準分析結果との関係を用いた検量線や推定モデルを作成します。

検量線作成では、対象成分の濃度が異なる多数の試料を準備し、多波長光学信号と化学分析値を取得します。

対象成分と関係の強い波長や演算値を選び、回帰分析などによって推定式を作成します。

対象作物、品種、部位、栽培時期が変わると、光学特性も変化する場合があります。使用条件に合った検量線であることが重要です。

植物栄養診断への利用

植物の葉や葉柄には、窒素成分、色素、水分、糖などが含まれています。これらの状態によって、各波長の透過・反射特性が変化します。

多波長光計測を使用すれば、葉を採取して搾汁する作業や試薬による分析を行わず、植物栄養状態を推定できる場合があります。

同じ株を定期的に測定し、施肥前後の変化を記録することで、施肥判断や栽培試験に活用できます。

硝酸態窒素計測への応用

植物体内に蓄積する硝酸成分は、特定波長の光学特性と関係する場合があります。目的成分の影響を受ける波長と、厚さや水分などを補正する波長を組み合わせ、硝酸態窒素濃度を推定します。

ただし、光学信号は硝酸成分だけで決まるものではありません。作物、品種、生育段階、測定位置などの影響を受けるため、対象条件に対応した測定モデルが必要です。

測定位置を統一する重要性

植物の葉や葉柄は、部位によって厚さ、色、組織構造、成分濃度が異なります。同じ株でも、先端側と基部側では測定結果が異なる場合があります。

継続的に比較する場合は、同じ葉位、同じ位置、同じ向きで測定します。機器で対象を挟む場合は、押さえる力も一定にします。

測定手順を標準化し、作業者による違いを減らすことが重要です。

外光と温度の影響

屋外で使用する場合、太陽光が受光部へ入ると測定値が変化します。測定部を遮光し、光源を消灯したときの信号を測定して外光を補正する方法があります。

LEDの発光量や受光素子の出力は、温度によって変化することがあります。温度センサを用いた補正や、一定温度に達してから測定する方法を検討します。

測定対象の汚れや水滴

葉や葉柄の表面に泥、農薬、水滴などが付着していると、光の反射や透過が変化します。測定前に状態を確認し、必要に応じて表面を整えます。

測定窓やレンズへ樹液や汚れが付着した場合も、すべての波長の受光量が変化します。使用後は指定された方法で清掃します。

単一波長計測との違い

単一波長計測は、装置構成や演算が比較的簡単です。目的成分以外の変動が小さい対象では、単一波長でも安定した測定ができる場合があります。

多波長計測は、複数要因の補正や複数成分の推定に利用しやすい一方、装置、校正、データ解析が複雑になります。

必要な測定精度、対象物のばらつき、運用方法を確認して方式を選定します。

測定結果の評価

多波長光計測による成分値は、光学信号から推定した値です。導入時には、基準となる化学分析値と比較し、誤差や再現性を確認します。

推定値が管理目的に十分な精度であれば、日常的な栽培判断や試験データ収集に活用できます。

絶対値だけでなく、同じ条件で測定したときの増減傾向を利用する方法もあります。

異常値が出た場合の確認

測定値が不自然な場合は、対象の挟み方、測定位置、外光、表面の水滴、測定窓の汚れを確認します。

同じ部位を複数回測定し、再現性を確認します。すべての対象で同じ方向にずれる場合は、光源劣化、受光部、校正データなどを確認します。

保守・校正

光源と受光部の間に基準板や標準部材を設置し、波長ごとの信号が規定範囲内にあるか確認します。

光源の交換や制御回路の更新を行った場合は、過去の検量線を継続使用できるか確認します。必要に応じて基準分析との比較を行い、推定モデルを更新します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、多波長光計測を利用して植物体の硝酸態窒素などを非破壊で測定する機器について、対象作物、測定部位、栽培条件などの仕様を確認して検討します。

測定結果の表示、栽培履歴への保存、施肥や収量との比較についても、必要なデータ項目を確認して構成します。

よくある質問

Q. なぜ複数の波長を使用するのですか?

A. 目的成分の情報と、厚さ、水分、光源変動などの影響を分けて補正しやすくするためです。

Q. 多波長光計測で成分を直接測定していますか?

A. 光学信号と基準分析値の関係から成分値を推定します。対象に対応した検量線が必要です。

Q. 同じ検量線をすべての作物に使用できますか?

A. 作物や測定部位によって光学特性が異なるため、同じ検量線を使用できない場合があります。

Q. 太陽光の下でも測定できますか?

A. 測定部を遮光し、外光補正を行える構造であれば使用できる場合があります。

Q. 同じ植物を繰り返し測定できますか?

A. 非破壊で測定できる方式であれば、同じ株や部位の経時変化を確認できます。

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