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窒素施肥管理

(ちっそせひかんり)

窒素施肥管理とは、作物の生育段階や栄養状態に合わせて、窒素肥料の種類、施用量、施用時期、施用方法を調整することです。収量や品質を確保しながら、肥料の過不足、肥料費、環境への流出を抑えることを目的とします。

窒素は、葉や茎の生育、葉緑素、タンパク質の形成に必要な主要養分です。不足すると生育が抑えられる一方、過剰に与えると茎葉が伸びすぎる、品質が低下する、病害が発生しやすくなるなどの問題が生じる場合があります。

植物における窒素の役割

窒素は、アミノ酸、タンパク質、核酸、葉緑素などの構成成分です。植物の細胞形成や光合成に関係し、特に茎葉の生育へ大きく影響します。

窒素が不足すると、一般に古い葉から黄化が現れ、生育が遅くなることがあります。作物によっては、葉数、茎径、果実肥大、収量にも影響します。

ただし、葉が黄色くなる原因は窒素不足だけではありません。根傷み、病害、低温、他の養分不足なども考慮します。

窒素肥料の主な形態

アンモニア態窒素

アンモニウムイオンなどの形で供給される窒素です。土壌へ保持されやすい一方、微生物の働きによって硝酸態窒素へ変化します。

硝酸態窒素

硝酸イオンとして存在する窒素です。植物が吸収しやすい形態ですが、水とともに移動しやすく、降雨や過剰かん水によって流亡する可能性があります。

尿素態窒素

尿素として施用され、土壌中でアンモニア態窒素へ変化した後、植物に利用されます。施用条件によってはアンモニア揮散が生じる場合があります。

有機態窒素

堆肥や有機質肥料などに含まれ、微生物による分解を経て植物が吸収可能な形になります。温度や水分によって供給速度が変化します。

基肥と追肥

基肥は、播種や定植前に施用する肥料です。初期生育に必要な養分を供給します。

追肥は、生育途中に追加する肥料です。作物の吸収量が増える時期や、測定によって不足が確認された場合に施用します。

全量を基肥として一度に施すと、生育初期に利用しきれない窒素が流出する可能性があります。作物の吸収時期に合わせて分けて施用する分施が有効な場合があります。

窒素施肥量の考え方

必要な窒素量は、目標収量、作物の吸収量、土壌から供給される窒素量、肥料利用率などから検討します。

概念的には、次のように考えます。

必要窒素施肥量=作物が必要とする窒素量-土壌や有機物から供給される窒素量

実際には、施用した肥料のすべてを作物が吸収するわけではありません。流亡、揮散、土壌への残留などを考慮します。

肥料製品量への換算

肥料袋の表示には、窒素成分の割合が記載されています。必要な肥料製品量は、次のように求めます。

肥料製品量=必要窒素量÷肥料中の窒素割合

例えば、窒素成分10%の肥料で窒素1kgを施用する場合、肥料製品としては10kgが必要です。

複合肥料では、リン酸やカリウムも同時に供給されるため、他成分が過剰にならないか確認します。

生育段階に応じた管理

作物の窒素吸収量は一定ではありません。定植直後は少なく、生育が進むと増加し、収穫期には低下する作物もあります。

生育初期に窒素を過剰に与えると、根より茎葉が優先して成長することがあります。果菜類では、開花や着果への影響も考慮します。

生育段階ごとに目標となる植物体の窒素状態を設定し、測定結果を見ながら追肥を調整します。

植物体測定による管理

葉色、クロロフィル、植物体の硝酸態窒素などを測定すると、作物が実際に吸収した窒素の状態を確認できます。

測定値が目標範囲より低い場合は追肥を検討し、高い場合は次回の施肥を減らす、または延期する判断ができます。

非破壊測定を利用すると、同じ株を繰り返し測定し、施肥後の変化を確認できます。

土壌診断との組合せ

土壌中に硝酸態窒素が多く残っている場合は、追加施肥を減らせる可能性があります。植物体の測定値と土壌分析を組み合わせることで、肥料不足と吸収不良を区別しやすくなります。

有機物の多い土壌では、施肥以外から窒素が供給されます。気温が高くなると有機物の分解が進み、想定以上に窒素が供給される場合があります。

かん水との関係

硝酸態窒素は水に溶けて根へ移動します。そのため、かん水量が少なすぎると肥料が根へ届きにくくなり、多すぎると根域外へ流亡する可能性があります。

液肥を利用する養液土耕や養液栽培では、肥料濃度だけでなく、1回の施用液量と回数を管理します。

排液が発生する場合は、排液量や硝酸態窒素濃度を確認し、供給した肥料がどの程度利用されているかを評価します。

天候による調整

日射が多く生育が活発な時期は、窒素吸収量が増える場合があります。一方、低温や日照不足では、生育と窒素代謝が低下することがあります。

天候不良時に平常時と同じ量を施肥すると、植物体や土壌に窒素が蓄積する可能性があります。

週間天気、生育速度、土壌水分などを確認して、施肥量と時期を調整します。

過剰施肥の主な影響

  • 茎葉の過繁茂や徒長
  • 果実品質や糖度への影響
  • 病害虫への抵抗性低下
  • 成熟や収穫の遅れ
  • 肥料費の増加
  • 土壌への塩類集積
  • 地下水や排液への硝酸流出

窒素不足を避けるだけでなく、必要以上に与えないことも重要です。

窒素不足の主な原因

施肥量不足のほか、降雨による流亡、根域の乾燥、低温、根傷み、土壌pHなどが関係します。

窒素不足が疑われる場合は、葉色や植物体測定に加え、根や土壌の状態を確認します。肥料を増やすだけでは改善しない場合があります。

記録管理

施肥日、肥料名、施用量、窒素成分量、施用方法を記録します。植物体測定、土壌分析、生育、収量、品質も関連付けます。

良好な結果が得られた作型と比較し、施肥量を増減した理由を残すことで、次回の管理へ活用できます。

複数圃場を管理する場合は、圃場ごとの施肥履歴を分けて管理します。

肥料利用効率の改善

窒素施肥管理では、投入した窒素のうち、どの程度が作物の収量や品質へ利用されたかを考えることが重要です。

分施、適期施肥、局所施肥、かん水調整、植物体測定などにより、窒素利用効率を高められる場合があります。

肥料使用量を減らすことだけでなく、収量と品質を維持しながら無駄を減らすことが目的です。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、植物体の硝酸態窒素などの測定結果を利用した窒素施肥管理について、対象作物、栽培方法、測定頻度、記録項目などの条件を確認して検討します。

施肥履歴、生育、収量、品質との比較や、栽培試験データの管理についても、必要な運用を確認して対応できる場合があります。

よくある質問

Q. 窒素肥料は多いほど収量が増えますか?

A. 一定量を超えると収量が増えず、徒長、品質低下、環境流出などにつながる場合があります。

Q. 基肥と追肥はどのように分けますか?

A. 作物の初期生育と、その後の吸収時期を考慮し、生育途中で不足しないよう分けて施用します。

Q. 植物体の測定だけで施肥量を決められますか?

A. 重要な判断材料ですが、土壌、根、天候、かん水、生育なども併せて確認します。

Q. 硝酸態窒素は雨で流れますか?

A. 水とともに移動しやすいため、多量の降雨やかん水で根域外へ流亡する可能性があります。

Q. 窒素施肥の記録には何を残しますか?

A. 肥料名、施用量、窒素成分量、日時、圃場、作物、生育段階などを記録します。

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