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過剰施肥
(かじょうせひ)
過剰施肥とは、作物が必要とする量や土壌が保持できる量を超えて、肥料を施用することです。肥料不足を避けようとして多めに施した場合や、土壌・植物に肥料成分が残っている状態で慣例的な追肥を続けた場合に発生します。
肥料を多く与えても、すべてが収量や品質の向上につながるわけではありません。作物が吸収できない肥料は、土壌へ蓄積したり、水とともに流出したりします。また、作物の生育バランスを崩す原因になる場合があります。
過剰施肥が発生する主な原因
- 不足を避けるために毎回多めに施肥する
- 土壌分析や植物体測定を行わない
- 複数の肥料から同じ成分を重複して施用する
- 有機物から供給される養分を考慮しない
- 液肥濃度や混入倍率を間違える
- 施肥機やポンプの設定が正しくない
- 生育が遅い時期にも通常量を施用する
- 降雨やかん水による肥料移動を正しく把握できていない
肥料製品の使用量だけでなく、窒素、リン酸、カリウムなどの成分量で管理することが重要です。
窒素の過剰施肥
窒素を過剰に施用すると、茎葉が必要以上に成長する徒長や過繁茂が起こることがあります。
葉が大きく濃い緑色になる一方、茎が軟弱になる、花芽形成や着果が遅れる、果実品質が低下するなどの影響が現れる場合があります。
日照不足や低温で生育が低下している時期は、吸収した硝酸態窒素を十分に利用できず、植物体内へ蓄積する可能性があります。
作物に現れる主な影響
- 茎葉が伸びすぎる
- 節間が長くなる
- 茎や組織が軟弱になる
- 病害虫の影響を受けやすくなる
- 開花、着果、成熟が遅れる
- 果実の糖度や品質が低下する
- 葉菜類などに硝酸成分が蓄積する
- 根の生育が抑えられる
症状は作物や生育段階によって異なります。葉色が濃いだけで過剰施肥と判断せず、植物体測定や土壌分析と組み合わせます。
濃度障害と根への影響
土壌や培養液中の肥料濃度が高くなると、根が水を吸収しにくくなることがあります。土壌水の浸透圧が高くなり、土壌に水分があっても作物がしおれる場合があります。
肥料が局所的に高濃度で接触すると、根が傷み、根先の変色や枯死が起こる可能性があります。
根傷みが進むと、肥料成分が多く存在していても吸収できず、地上部に欠乏症状のような状態が現れることがあります。
土壌への塩類集積
施設栽培では、雨による洗い流しが少ないため、施用した肥料成分が土壌へ蓄積しやすくなります。
肥料成分が蓄積すると、土壌のECが上昇し、根の吸水や生育へ影響します。特定の成分だけが多くなると、他の養分吸収を妨げる拮抗作用が起こる場合もあります。
土壌分析やEC測定によって、肥料成分の蓄積状態を定期的に確認します。
環境への影響
作物が吸収できなかった硝酸態窒素は、水とともに土壌の深い部分へ移動し、地下水へ到達する可能性があります。
養液栽培や施設栽培では、排液に肥料成分が残ったまま施設外へ排出される場合があります。
過剰施肥を抑えることは、肥料費の削減だけでなく、水環境への負荷を減らすことにもつながります。
過剰施肥を確認する方法
植物体の測定
葉色、クロロフィル、硝酸態窒素などを測定します。良好な作型の基準値より高い状態が続く場合は、施肥量を見直します。
土壌分析
硝酸態窒素、EC、pH、交換性塩基などを確認します。土壌に十分な養分が残っている場合は、基肥や追肥を減らせる可能性があります。
培養液・排液の測定
培養液と排液のEC、pH、硝酸態窒素などを比較します。排液に多くの肥料成分が残っている場合、供給過多の可能性があります。
生育と収量の確認
茎径、節間、葉色、開花、着果、収量、品質を確認します。肥料を増やしても収量が増えていない場合は、過剰施肥を疑います。
液肥濃度の管理
液肥を使用する場合は、原液の濃度、希釈倍率、ポンプ設定、施用液量を確認します。
同じ肥料濃度でも、かん水量が増えると作物へ供給する肥料成分の総量も増えます。
施用成分量は、概念的に次のように考えます。
施用成分量=肥料成分濃度×施用液量
濃度だけでなく、1日または一定期間に供給した総量で管理します。
過剰施肥が疑われる場合の対応
まず、追加施肥を停止または減量し、植物体、土壌、培養液の状態を確認します。
土壌中の塩類濃度が高い場合は、排水条件を確認したうえで、かん水によって肥料成分を洗い流す方法が検討されることがあります。ただし、排液による環境負荷や根傷みに注意が必要です。
養液栽培では、培養液を調整・交換する、原液混入量を減らすなどの対応を行います。
不足を恐れて肥料を増やすリスク
目に見える欠乏症状が出てから対応することを避けるため、予防的に多く施肥する場合があります。しかし、過剰状態では肥料を追加しても改善せず、別の問題を引き起こします。
測定値と生育を定期的に確認し、小さな調整を繰り返す方が、過剰と不足の両方を防ぎやすくなります。
分施による対策
必要量を一度に施用せず、生育に合わせて複数回に分ける方法を分施と呼びます。
分施により、作物が吸収できない肥料が一時的に多く残ることを防ぎやすくなります。降雨による流亡リスクも抑えられる場合があります。
ただし、施肥回数が増えるため、作業性や施肥設備も考慮します。
測定データを使った予防
植物体の硝酸態窒素を継続して測定すると、外観に症状が現れる前に窒素状態の変化を把握できる場合があります。
施肥量、測定値、生育、収量を関連付け、良好な結果が得られた範囲を確認します。
測定値が高い状態で慣例的な追肥を行わないよう、施肥前に測定する運用を設けます。
過剰施肥と肥料利用効率
投入した肥料のうち、作物に利用されない割合が増えると、肥料利用効率が低下します。
過剰施肥を抑え、必要な時期に必要な量を施用することで、同じ収量を少ない肥料で得られる可能性があります。
単純に肥料を減らすのではなく、収量と品質を確認しながら適正量へ近づけます。
記録管理
肥料名、施用量、成分量、施用日時、圃場、作物、生育段階を記録します。複数の肥料を使用する場合は、成分ごとに合計します。
植物体測定、土壌分析、収量、品質も併せて記録し、肥料量を減らした場合の影響を確認します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、植物体の硝酸態窒素などを測定し、過剰施肥の可能性を確認する運用について、対象作物、測定部位、測定頻度などの条件を確認して検討します。
測定履歴、施肥量、生育、収量、品質を関連付けたデータ管理についても、必要な項目を確認して対応できる場合があります。
よくある質問
Q. 肥料を多く与えれば収量も増えますか?
A. 作物が必要とする量を超えると、収量が増えず、徒長、品質低下、環境流出などにつながる場合があります。
Q. 葉色が濃ければ過剰施肥ですか?
A. 可能性はありますが、品種、葉齢、日照などでも変化します。植物体測定や土壌分析と併せて判断します。
Q. ECが高い場合は肥料過多ですか?
A. 肥料成分の蓄積が考えられますが、塩類の種類や土壌水分も影響します。詳しい分析と併せて確認します。
Q. 過剰施肥になったら水で流せばよいですか?
A. 条件によっては洗い流す方法がありますが、根傷み、排水、環境流出を考慮して行う必要があります。
Q. 過剰施肥を防ぐにはいつ測定しますか?
A. 追肥前や生育段階の節目に測定し、現在の栄養状態を確認してから施肥を判断する方法が有効です。