Technology
肥料利用効率
(ひりょうりようこうりつ)
肥料利用効率とは、施用した肥料成分のうち、どの程度が作物の生育、収量、品質に利用されたかを表す考え方です。少ない肥料で必要な収量や品質を確保できるほど、肥料利用効率が高いと評価できます。
施用した肥料のすべてを作物が吸収するわけではありません。一部は土壌へ残留し、一部は水とともに流亡し、窒素成分の一部は気体として失われる場合があります。
肥料利用効率を高めることは、肥料費の削減、収量の安定、地下水や排液への養分流出低減につながります。
肥料が作物に利用されるまで
肥料は、土壌や培養液中で水に溶け、根の近くまで移動します。その後、根から吸収され、植物体内で葉、茎、果実などの形成に利用されます。
肥料成分が利用されるまでには、次の条件が関係します。
- 根の量と活性
- 土壌水分
- 地温と気温
- 土壌pH
- 酸素状態
- 肥料の形態
- 施肥位置
- 施肥時期
- 他の養分とのバランス
肥料が土壌中に十分存在していても、根傷みや低温によって吸収できない場合は、利用効率が低下します。
肥料利用効率の表し方
肥料利用効率には複数の評価方法があります。目的に応じて、肥料吸収量、収量、施肥量などを用います。
施肥窒素回収率
施用した窒素のうち、作物がどの程度吸収したかを表します。概念的には次のように求めます。
施肥窒素回収率=(施肥区の窒素吸収量-無施肥区の窒素吸収量)÷窒素施肥量×100
土壌から供給された窒素分を差し引き、肥料由来の窒素吸収量を評価します。
肥料当たりの収量
施肥量に対してどの程度の収量が得られたかを評価します。
肥料当たり収量=収量÷肥料成分施用量
計算しやすい指標ですが、土壌肥沃度や天候の影響も含まれます。
追加施肥による増収効果
肥料を施用したことで、無施肥の場合よりどの程度収量が増えたかを評価します。
増収効率=(施肥区の収量-無施肥区の収量)÷肥料成分施用量
栽培試験で施肥効果を比較するときに利用されます。
肥料利用効率が低下する主な原因
- 作物の吸収量を超える過剰施肥
- 生育初期に肥料を一度に多く施用する
- 降雨や過剰かん水による流亡
- 根域から離れた位置への施肥
- 低温や過湿による根の活性低下
- 土壌pHが適正範囲から外れている
- 肥料成分のバランスが悪い
- 施肥機や液肥混入装置の設定不良
- 病害や根傷みによる吸収不良
肥料量だけでなく、根が吸収できる環境を整えることが重要です。
分施による改善
肥料を一度に全量施用せず、作物の生育に合わせて複数回に分ける方法を分施と呼びます。
作物が必要とする時期に少量ずつ供給することで、土壌中へ未利用の肥料が多く残ることを防ぎやすくなります。
特に水とともに移動しやすい硝酸態窒素では、多量の一括施肥より分施が有効な場合があります。
適期施肥
同じ施肥量でも、作物の吸収が少ない時期に施用すると利用効率が低下します。
生育が活発になり、根の吸収量が増える時期に合わせて施肥することで、肥料を作物へ利用させやすくなります。
日照不足、低温、過湿などで生育が低下している場合は、通常どおり施肥せず、植物体や土壌の状態を確認します。
施肥位置の影響
肥料を根から遠い位置へ施用すると、作物が利用するまでに時間がかかり、流亡や固定が起こる可能性があります。
根の発達位置に合わせた局所施肥や条施肥により、肥料を根へ届きやすくできます。
ただし、根の近くへ高濃度で施用すると濃度障害を起こす可能性があるため、肥料濃度と位置を調整します。
かん水管理との関係
肥料成分は、土壌水に溶けて根へ移動します。水分が不足すると肥料成分が移動しにくくなり、多すぎると根域外へ流れます。
液肥を使用する場合は、肥料濃度だけでなく、施用液量と排液量を管理します。
培養液と排液の成分濃度を比較すると、供給した肥料がどの程度利用されずに残っているかを確認できます。
植物体測定による改善
植物体の硝酸態窒素、葉色、クロロフィルなどを測定すると、作物が肥料を吸収した結果を確認できます。
測定値が高い状態で追加施肥を行わないことで、過剰施肥を防ぎやすくなります。低い場合も、根や土壌の状態を確認してから追肥します。
施肥前後の測定値を比較することで、施肥に対する作物の反応を確認できます。
土壌診断による改善
土壌中に肥料成分が残っている場合は、次作の基肥量を減らせる可能性があります。
土壌分析では、硝酸態窒素、リン酸、カリウム、EC、pHなどを確認します。有機物から供給される養分も考慮します。
毎作同じ量を施用するのではなく、土壌残存量に応じて調整します。
収量だけで評価しない理由
肥料利用効率を収量だけで評価すると、品質低下や環境負荷を見落とす場合があります。
窒素を増やして収量がわずかに増えても、果実糖度や保存性が低下し、排液中の硝酸態窒素が増えれば、総合的な効率は高いとは限りません。
収量、品質、肥料費、作業時間、環境への流出を併せて評価します。
肥料使用量を減らすときの注意点
肥料利用効率の改善は、単純に肥料を大幅に減らすことではありません。必要量を下回ると、収量や品質が低下します。
少量ずつ段階的に減らし、植物体測定、生育、収量を比較します。圃場の一部で試験を行い、慣行区と比較する方法もあります。
良好な結果を確認してから、対象面積を広げます。
栽培試験による評価
異なる施肥量や施肥時期を設定した試験区を設け、測定値、収量、品質を比較します。
例えば、慣行施肥量、10%削減、20%削減などの区を設定し、生育への影響を確認します。
試験では、施肥条件以外の品種、定植日、かん水などを可能な範囲でそろえます。複数年のデータを蓄積すると、天候による影響も評価しやすくなります。
データ管理
肥料利用効率を評価するには、肥料製品量ではなく、窒素などの成分量を記録します。
併せて、植物体測定、土壌分析、かん水量、排液、収量、品質を保存します。
施肥条件別のグラフや一覧を作成すると、肥料を増減したときの結果を比較しやすくなります。
肥料価格への対応
肥料利用効率を高めれば、収量や品質を維持しながら肥料使用量を減らし、肥料価格の上昇による影響を抑えられる可能性があります。
ただし、測定や施肥作業にかかる費用も含め、栽培全体の費用対効果を確認します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、植物体の硝酸態窒素などの測定値を利用し、施肥量と収量・品質の関係を確認する栽培試験について、対象作物、測定条件、記録項目などを確認して検討します。
施肥量、測定履歴、生育、収量などを関連付け、肥料利用効率を比較するデータ管理についても、必要な運用を確認して対応できる場合があります。
よくある質問
Q. 肥料利用効率が高いとはどういう状態ですか?
A. 必要な収量や品質を維持しながら、施用した肥料の多くを作物が有効に利用している状態です。
Q. 肥料を減らせば利用効率は必ず上がりますか?
A. 施肥量が不足して収量が低下すると、効率が改善しない場合があります。収量と品質を併せて評価します。
Q. 肥料利用効率を改善する方法は何ですか?
A. 分施、適期施肥、施肥位置の調整、かん水管理、植物体測定、土壌診断などがあります。
Q. 植物体測定は肥料利用効率の改善に使えますか?
A. 作物の栄養状態を確認し、不要な追肥を抑えるための判断材料として活用できます。
Q. 肥料利用効率を比較するには何を記録しますか?
A. 肥料成分量、植物体測定値、土壌、収量、品質、かん水量などを条件ごとに記録します。