力率制御とは、設備の負荷に応じて変化する力率や無効電力を監視し、進相コンデンサを段階的に投入・遮断することで、電源側へ流れる無効電流を抑える制御です。自動力率調整とも呼ばれ、モーターや変圧器などの誘導性負荷が多い工場・ビルで使用されます。
力率が低いと、同じ有効電力を使用する場合でも電流が大きくなり、配線の発熱、電圧降下、変圧器や遮断器の負担が増えます。力率制御によって遅れ無効電力を適切に補償すれば、電力設備を効率よく利用しやすくなります。
力率制御の基礎となる電力
有効電力
モーターを回す、ヒーターを加熱する、照明を点灯するといった、実際の仕事や熱に使われる電力です。記号はP、単位はWまたはkWです。
無効電力
モーターや変圧器の磁界、コンデンサの電界をつくるため、電源と負荷の間を行き来する電力です。記号はQ、単位はvarまたはkvarです。仕事として直接消費されませんが、配線には電流が流れます。
皮相電力
電圧と電流の実効値から求める、電源設備が負担する電力の大きさです。記号はS、単位はVAまたはkVAです。
正弦波交流では、次の関係があります。
S=√(P2+Q2)
力率=P/S=cosφ
φは電圧と電流の位相差です。力率が1に近いほど、皮相電力に対して有効電力の割合が大きくなります。

力率制御の仕組み
モーターや変圧器などの誘導性負荷では、電流が電圧より遅れ、遅れ無効電力が発生します。これを補償するため、設備へ進相コンデンサを接続します。コンデンサは進み無効電力を発生させるため、電源側から見た無効電力を小さくできます。
自動力率調整器は、電圧入力とCTで測定した電流から、有効電力、無効電力、力率、進み・遅れを演算します。遅れ無効電力が増えた場合はコンデンサを投入し、負荷が減少した場合や進み側へ補償しすぎた場合は遮断します。
コンデンサを複数段へ分けておけば、負荷変動に合わせて必要な容量だけを投入できます。例えば10kvar、20kvar、20kvarの3段を設けると、0~50kvarの範囲で段階的に補償できます。
必要なコンデンサ容量
改善前の力率角をφ1、改善後の目標力率角をφ2、有効電力をPとすると、必要な補償無効電力Qcは次の式で概算できます。
Qc=P(tanφ1-tanφ2)
例えば、有効電力100kW、改善前力率0.7、目標力率0.95の場合、必要な補償量は概ね次のようになります。
Qc≒100×(1.02-0.33)=69kvar
実際には負荷が変動するため、約69kvarを1段で投入するのではなく、複数段へ分割して制御します。高調波、設備電圧、既設コンデンサ、将来増設も確認して容量を決定します。
自動力率調整器の基本動作
力率制御では、設定した目標力率だけでなく、不感帯、投入遅延時間、遮断遅延時間、再投入禁止時間などを設定します。
負荷がわずかに変動するたびにコンデンサを切り替えると、電磁接触器やコンデンサの寿命が短くなります。一定時間継続して補償が必要と判断した場合だけ切り替えることで、不要な頻繁動作を防ぎます。
コンデンサを遮断した直後は内部に電荷が残っています。十分に放電する前に再投入すると、大きな突入電流が流れるため、放電時間を考慮した再投入禁止時間を設けます。
制御設計上のポイント
過補償による進み力率を防ぐ
夜間や休止時間など負荷が小さいときにコンデンサが接続されたままだと、進み力率になる場合があります。進み側へ移行したことを検出したら、速やかに不要な段を遮断します。
目標値を力率1.00へ固定すると、段容量によって進みと遅れを繰り返しやすいため、設備条件に応じた目標力率と不感帯を設定します。
コンデンサの段数と容量を決める
1段当たりの容量が大きすぎると、投入後に一気に進み側へ移り、遮断すると再び遅れ側へ戻るハンチングが発生します。負荷の最小変動量に対して細かく追従できる段容量を検討します。
等容量で構成する方法のほか、10、20、40kvarのように容量を変えて、少ない段数で広い補償範囲を持たせる方法もあります。
投入順序と使用回数を管理する
常に同じ段から投入すると、特定のコンデンサや接触器だけが早く劣化します。先入れ先切り、循環投入、使用回数の少ない段を優先する方式などにより、動作回数を分散します。
高調波共振を確認する
インバーター、UPS、スイッチング電源などが多い設備では、高調波とコンデンサが共振し、コンデンサ電流や電圧が増大することがあります。力率だけを見て容量を追加せず、高調波電圧・電流を確認します。
必要に応じて直列リアクトル付きコンデンサを使用します。コンデンサをインバーターの出力側へ直接接続してはいけない場合があるため、機器メーカーの仕様も確認します。
CTの相と向きを正しくする
CTの取付方向や電圧入力との相対応が誤っていると、無効電力の符号や進み・遅れを正しく判定できません。コンデンサを投入するほど力率が悪化するような場合は、CT極性、電圧相、相順を確認します。
接触器と保護機器を適切に選ぶ
コンデンサ投入時には大きな突入電流が流れます。一般負荷用の接触器では接点溶着や寿命低下を招く場合があるため、コンデンサ開閉に適した接触器や抵抗付き接触器を使用します。
各段には遮断器、ヒューズ、放電抵抗などを設けます。異常段だけを切り離し、正常な段で制御を継続できる構成も検討します。
異常監視とフェイルセーフ
主な異常には、電圧入力異常、CT断線、相違い、コンデンサ用遮断器の動作、接触器の溶着、コンデンサ劣化、温度上昇があります。
コンデンサへ投入指令を出したにもかかわらず力率や無効電力が変化しない場合は、接触器不良、ヒューズ切れ、コンデンサ容量低下が考えられます。投入前後の無効電力変化を監視すると、段ごとの異常を検出しやすくなります。
計測異常や通信異常が発生した場合は、誤った判定でコンデンサを投入し続けないよう、自動制御を停止して各段を安全側へ遮断します。復電後も負荷状態を再計測してから制御を再開します。
保守と設備更新
定期点検では、コンデンサの膨れ、液漏れ、変色、異音、接触器の接点摩耗、端子緩み、リアクトルの発熱を確認します。コンデンサは経年劣化によって容量が低下し、投入しても期待した補償量が得られなくなる場合があります。
自動力率調整器を更新する場合は、電圧入力、CT定格、相線式、出力段数、接点仕様、目標力率、遅延時間を確認します。旧機器の設定値をそのまま移すだけでなく、現在の負荷とコンデンサ状態を再確認します。
負荷設備の増設やインバーター化によって高調波環境が変化している場合は、コンデンサ設備全体の見直しが必要になることがあります。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、電圧とCT入力から有効電力、無効電力、皮相電力、力率を計測し、電力用コンデンサを段階制御する自動力率調整器を開発・提供しています。
受電方式、相線式、負荷容量、力率変動、既設コンデンサの段数・容量、CT定格、高調波環境を確認し、用途に応じた計測・制御構成を検討します。
コンデンサの投入・遮断出力、進み・遅れ判定、不感帯、動作遅延、再投入禁止時間、段の循環制御、異常警報などを設備条件に合わせて設定します。
既設の力率調整器やコンデンサ盤の更新についても、電源回路、CT配線、接触器、保護機器、通信仕様を確認し、盤改造や上位監視システムとの連携を検討します。
よくある質問
Q. コンデンサを投入しても力率が改善しない場合は何を確認しますか?
A. CTの相と向き、接触器、ヒューズ、コンデンサ容量、電圧入力を確認します。高調波や負荷変動により表示が安定しない場合もあります。
Q. コンデンサが頻繁に投入・遮断を繰り返す場合はどうしますか?
A. 1段当たりの容量、不感帯、投入・遮断遅延時間を確認します。段容量が大きすぎる場合は、細分化を検討します。
Q. 夜間に進み力率になる原因は何ですか?
A. 負荷が減少しているのにコンデンサが残っている可能性があります。自動遮断条件や、個別負荷に直結されたコンデンサを確認します。
Q. 既設の自動力率調整器だけを交換できますか?
A. CT入力、相線式、出力段数、接点仕様が適合すれば交換できる場合があります。既設コンデンサや接触器の劣化状態も合わせて確認します。
Q. 高調波が多い設備でも力率制御できますか?
A. 可能な場合がありますが、コンデンサとの共振や過電流を確認する必要があります。高調波測定を行い、直列リアクトルなどを含めて構成します。
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デマンド制御は、一定時間内に使用する平均電力を監視し、契約電力や社内の管理目標を超えないように設備の運転を調整する制御です。工場、ビル、店舗などで複数の電気設備を同時に使用すると、短時間に電力使用が集中し、最大デマンドが上昇することがあります。
デマンド制御装置は、現在までの使用電力量、デマンド時限の残り時間、現在の負荷状態などから、時限終了時のデマンド値を予測します。予測値が目標を超える可能性がある場合は、警報を出す、優先度の低い設備を一時停止する、インバーターの出力を下げるなどの制御を行い、電力使用の集中を抑えます。
デマンド電力の基本
デマンド電力は、定められた計量時間内に使用した電力量を平均電力へ換算した値です。日本の高圧・特別高圧受電設備では、一般に30分単位のデマンド値が管理に用いられます。
計量時間内の使用電力量をE、計量時間をT、デマンド電力をPとすると、次の式で表せます。
P=E÷T
Eの単位をkWh、Tの単位をhとした場合、Pの単位はkWです。30分は0.5時間であるため、30分間の使用電力量が250kWhの場合、デマンド電力は次のようになります。
P=250÷0.5=500kW
この500kWは、30分間の平均電力です。瞬間的に500kWを超えていても、その前後の使用電力が低ければ、最終的な30分デマンドが500kWを下回る場合があります。反対に、高負荷状態が長く続くと最大デマンドが上昇します。
デマンド制御の仕組み
デマンド制御装置は、取引用電力量計や電力計測機器から、電力量パルス、時限信号、通信データなどを受け取ります。入力した電力量を積算し、現在デマンド、予測デマンド、目標値までの余裕電力などを演算します。
予測値が注意設定値へ近づくと、表示灯、ブザー、メール、タッチパネルなどで警報を出します。さらに上昇する場合は、あらかじめ登録した負荷を優先順位に従って停止または出力抑制します。使用電力に余裕が戻ると、設備条件を確認しながら順番に復帰させます。
現在デマンドと予測デマンド
デマンド時限の開始から現在までに使用した電力量をEnow、経過時間をtnowとすると、現時点までの平均電力Pnowは次の式で求められます。
Pnow=Enow÷tnow
例えば、時限開始から10分間で80kWhを使用した場合、10分は10÷60時間であるため、現時点までの平均電力は480kWです。ただし、これは時限途中の平均値であり、その後の設備運転によって最終値は変わります。
現在までの使用電力量をEnow、現在の使用電力をPinst、残り時間をtrem、時限全体をTとすると、単純な予測デマンドPpredは次の式で表せます。
Ppred=(Enow+Pinst×trem)÷T
30分時限のうち20分が経過し、使用電力量が150kWh、現在電力が600kWの場合、残り10分間の予測電力量は100kWhです。時限終了時の予測電力量は250kWhとなり、予測デマンドは500kWです。
実際のシステムでは、直近の負荷変化、設備の起動予定、過去の傾向などを考慮して予測する場合があります。大型設備が急に起動する工場では、単純な一定負荷予測だけでは追従が遅れることがあるため、警報値や制御余裕を含めて調整します。
目標値までの余裕電力
目標デマンドをPtarget、時限全体をTとすると、時限内で使用できる電力量の上限Etargetは次の式で求められます。
Etarget=Ptarget×T
目標デマンドが500kW、時限が30分の場合、使用できる電力量の上限は250kWhです。現在までの使用電力量が180kWhであれば、残り時間で使用できる電力量Eremは70kWhです。
Erem=Etarget-Enow
残り時間が10分の場合、目標値を超えないために許容される平均電力Pallowは次のようになります。
Pallow=70÷(10÷60)=420kW
現在の使用電力が520kWであれば、必要な負荷抑制量Pcutは概算で100kWです。
Pcut=520-420=100kW
ただし、遮断した負荷の実際の消費電力は運転状態によって変わります。余裕を持った制御量を設定し、停止後の電力変化を確認する必要があります。
負荷制御の方法
警報による手動対応
予測デマンドが設定値へ達したときに、表示灯、ブザー、タッチパネルなどで警報を出し、作業者が不要な設備を停止します。生産設備を自動停止しにくい現場や、運転判断を作業者へ委ねたい場合に適しています。
自動負荷遮断
停止可能な設備を優先順位別に登録し、予測デマンドの上昇に応じて自動停止します。空調、ヒーター、ポンプ、集塵機、充電設備などが対象になりますが、安全、品質、生産への影響を確認して選定します。
出力抑制
インバーター、温度調節計、電力変換器などと連携し、設備を完全停止させずに回転速度や出力を下げます。工程への影響を抑えやすい反面、出力指令と実際の削減電力が一致するかを確認する必要があります。
負荷の選定と優先順位
停止対象は、消費電力の大きさだけで決めるものではありません。設備の重要度、停止可能時間、再起動時間、製品品質、安全性、周辺設備への影響などを確認します。
例えば、冷却設備や集塵設備は一時停止できる場合がありますが、停止時間が長くなると温度上昇や作業環境の悪化につながる可能性があります。コンプレッサーや大型モーターでは、再起動時に電力が増加することもあるため、停止と復帰を一体で設計します。
同じ設備を繰り返し停止させないように、停止回数や累積停止時間を管理し、負荷を順番に切り替える制御を行う場合もあります。
復帰制御とハンチング防止
電力に余裕が戻った直後に停止負荷を一斉復帰させると、再び予測デマンドが上昇します。そのため、余裕電力を確認し、一定時間を空けて1台ずつ復帰させます。
短時間に停止と復帰を繰り返す現象を防ぐため、不感帯、最小停止時間、最小運転時間、復帰待ち時間などを設定します。設備側に再起動禁止時間や暖機運転条件がある場合は、その条件もインターロックへ組み込みます。
設計・運用上の注意点
デマンド時限の同期
デマンド制御装置の計量時限と、取引用電力量計の時限を一致させる必要があります。時限の開始時刻がずれると、制御装置の予測値と電力会社側のデマンド値に差が生じます。
パルス定数と変成比
電力量パルスを使用する場合は、1パルス当たりの電力量を正しく設定します。CT比、VT比、乗率、パルス定数などを誤ると、表示値と実際の電力量が一致しません。更新時には新旧機器の設定値を照合します。
通信断・信号異常
通信データやパルス入力が途絶えると、予測値の信頼性が失われます。一定時間データが更新されない場合は警報を出し、自動負荷制御を停止する、直前値を保持するなど、異常時の動作を決めておきます。
停電後の復旧
停電後にすべての設備が同時復帰すると、急激な電力上昇が起こる場合があります。復電時は、設備の優先順位や安全条件に従って順次起動します。時限途中で停電した場合の積算値やデータ保存方法も確認します。
計測値と実際の請求値の確認
デマンド制御装置の表示値と、取引用電力量計や請求明細の値には、計測周期、通信遅延、時限同期などによって差が出る場合があります。導入後は定期的に照合し、設定や計測系統に誤りがないか確認します。
異常監視・保守
主な監視項目には、電力量パルス未入力、通信異常、時限同期異常、接点出力異常、負荷停止指令後の電力低下不足、PLC異常などがあります。警報が発生した場合は、計測機器、配線、通信経路、設定値、負荷側の動作を順番に確認します。
定期点検では、デマンド値の照合、時刻同期、接点出力試験、負荷制御試験、バックアップデータの確認などを行います。設備増設や生産条件の変更後は、目標値、負荷容量、優先順位を見直すことが重要です。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、電力量パルスや通信データを取り込み、現在デマンド、予測デマンド、余裕電力を演算し、警報や負荷制御を行うシステムを検討します。
電力計測機器、制御盤、PLC、タッチパネル、接点入出力、通信機器を組み合わせ、時限管理、負荷の優先順位設定、自動遮断、段階復帰、異常監視などを構成します。設備側の運転許可条件や再起動条件も確認し、安全や生産へ影響しにくい制御を検討します。
設備ごとの電力使用量、デマンド履歴、警報履歴、負荷制御履歴を保存し、傾向表示や帳票作成に利用することもできます。上位監視システムや生産管理システムとの連携については、通信方式、必要なデータ項目、通信断時の処理を確認して対応を検討します。
既設設備を更新する場合は、電力量計の出力仕様、パルス定数、CT・VT比、既設負荷制御回路、PLCや表示器との互換性を確認し、必要な改造範囲を整理します。
よくある質問
Q. デマンド制御を導入すると消費電力量も減りますか?
A. 主な目的は、一定時間に電力使用が集中することを抑えることです。設備の運転時間が変わらなければ、消費電力量そのものは大きく減らない場合があります。ただし、運転の見直しによって省エネルギーにつながることもあります。
Q. 予測デマンドが実際の値と合わない場合は何を確認しますか?
A. 時限同期、パルス定数、CT・VT比、通信周期、計測点の違いを確認します。大型設備の急な起動など、予測後に負荷が大きく変化した場合にも差が生じます。
Q. 生産設備を停止せずにデマンドを抑えられますか?
A. 空調や補機を優先的に制御する、インバーターで出力を下げる、設備の起動時刻をずらすなどの方法があります。生産設備を停止しない構成が可能かは、削減可能な負荷容量によって異なります。
Q. 停止した設備が何度も入り切りするのを防げますか?
A. 不感帯、最小停止時間、最小運転時間、復帰待ち時間を設定することで抑えられます。設備ごとの再起動条件をPLCへ組み込むことも重要です。
Q. 既設設備へデマンド制御を追加できますか?
A. 電力量計から必要な信号を取得でき、停止対象設備へ制御信号を接続できれば追加できる場合があります。既設制御盤の空き入出力、通信仕様、設備停止時の影響を確認して改造範囲を検討します。