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樹脂ケース設計

(じゅしけーすせっけい)

樹脂ケース設計

樹脂ケース

樹脂ケース設計とは、計測機器、通信機器、センサ機器などの内部部品を保護し、操作性や外観を整える樹脂製の筐体を設計することです。プラスチックケース設計とも呼ばれます。

量産品では、一般に射出成形によって樹脂ケースを製作します。加熱して溶かした樹脂を金型へ流し込み、冷却・固化した後に取り出します。そのため、外観や収納寸法だけでなく、金型から取り出せる形状、樹脂の流れ、収縮、強度、組立方法まで考慮しなければなりません。

樹脂ケースは、電気絶縁性、軽量性、形状の自由度に優れます。一方、肉厚の偏りによる変形、成形時のひけ、ねじ部の破損、温度や紫外線による劣化などが発生する可能性があります。製品の使用環境と量産方法を踏まえた設計が重要です。

樹脂ケースの主な用途

  • 電力・電流・電圧などの計測機器
  • 表示器、操作器、通信機器
  • センサや変換器の保護ケース
  • 壁面取付形・盤面取付形の機器
  • 卓上形や携帯形の組み込み製品
  • 基板、電源、端子台、アンテナの収納

製品によって、表示部の見やすさ、ボタンの押しやすさ、配線のしやすさ、防じん・防水性、施工性など、優先する要件は異なります。

樹脂ケースの基本構成

一般的な樹脂ケースは、上ケース、下ケース、前面パネル、端子カバー、透明窓、取付金具などで構成されます。

内部には、プリント基板、液晶表示器、LED、スイッチ、電源、端子台、通信モジュールなどを配置します。ケース内部のボスやリブを利用して基板を固定し、外部からの荷重や振動が直接基板へ加わらない構造とします。

製品の組立方法には、ねじ固定、スナップフィット、溶着、接着などがあります。保守や分解の必要性、生産数量、防水性を考慮して選定します。

射出成形の仕組み

射出成形では、樹脂材料を成形機で加熱・溶融し、金型内部の空間へ高い圧力で注入します。樹脂が冷えて固まった後、金型を開き、突出しピンなどで成形品を取り出します。

この工程では、樹脂が金型内へ均一に流れること、冷却後に大きく変形しないこと、金型から無理なく取り出せることが必要です。

複雑な形状でも製作できますが、金型の分割方向と直交する引っ掛かり形状がある場合は、スライド機構などが必要となり、金型が複雑になります。

抜き勾配とアンダーカット

抜き勾配

抜き勾配とは、成形品を金型から取り出しやすくするために、側面へわずかな傾斜を設けることです。側面が金型に対して完全な垂直であると、樹脂の収縮によって金型へ密着し、取り出しにくくなります。

必要な勾配は、樹脂材料、表面の模様、成形品の深さによって異なります。外観面にしぼ加工を施す場合は、通常より大きな抜き勾配が必要になることがあります。

アンダーカット

アンダーカットとは、通常の金型開閉方向だけでは成形品を取り出せない引っ掛かり形状です。横向きの穴、内側へ張り出した爪、深い溝などが該当します。

アンダーカットを設ける場合は、スライドコアや傾斜ピンなどを使用します。ただし、金型費、保守部品、成形時間が増えるため、形状変更によって避けられないか検討します。

肉厚設計

樹脂ケースでは、壁の厚さを可能な限り均一にすることが重要です。厚い部分は冷却に時間がかかり、表面がへこむ「ひけ」や内部の空洞が発生しやすくなります。

反対に薄すぎる部分では、樹脂が十分に流れず、未充填や強度不足が発生する場合があります。

厚い部分が必要な場合は、全体を厚くするのではなく、リブやボスを追加して強度を確保します。肉厚が急激に変化する形状は避け、なだらかにつなぎます。

リブによる補強

リブは、ケース内面へ設ける細長い補強形状です。板面のたわみを抑え、板厚を過度に増やさずに剛性を高められます。

広い平面や、押しボタン操作によって力が加わる部分、コネクタの抜き差しを行う部分などへ配置します。

リブを厚くしすぎると、外観面へひけが現れる場合があります。基本肉厚との比率、配置、根元の丸みを考慮して設計します。

ボスとねじ固定

ボスは、基板や上下ケースをねじで固定するための円筒状の形状です。タッピンねじを使用し、樹脂へ直接ねじ山を形成する構造が一般的です。

ボスの肉厚が大きすぎると外観面にひけが発生し、薄すぎるとねじ締結時に割れる可能性があります。周囲へリブを設け、荷重を分散させます。

ねじ径、下穴径、ねじ込み深さ、締付トルクは樹脂材料に合わせて決定します。何度も分解する製品では、金属製のインサートナットを使用する場合があります。

スナップフィット設計

スナップフィットは、樹脂の弾性を利用した爪で部品同士を固定する方法です。ねじを減らせるため、組立時間の短縮と部品点数の削減につながります。

爪をたわませた際に過大な応力が加わると、組立時や分解時に破損します。爪の長さ、厚さ、根元形状、引っ掛かり量を調整します。

保守時に分解する製品では、解除方法と工具の入り方も考慮します。誤って外れないことと、必要時に破損せず外せることを両立させます。

樹脂材料の選定

ABS樹脂

成形性、外観性、強度のバランスに優れ、一般的な機器ケースへ使用されます。塗装や印刷にも対応しやすい材料です。

ポリカーボネート

耐衝撃性が高く、透明部品にも使用できます。温度や難燃性が求められる用途で検討されますが、薬品によって割れが生じる場合があります。

ポリカーボネート・ABS混合材

ポリカーボネートの耐熱性や強度と、ABS樹脂の成形性を組み合わせた材料です。電気・電子機器のケースで使用されることがあります。

ポリアミド

強度と耐摩耗性に優れ、端子部品や機構部品に利用されます。ただし、吸湿によって寸法や特性が変化するため、用途に応じた確認が必要です。

材料選定では、強度、耐熱性、難燃性、絶縁性、耐候性、耐薬品性、色、成形性、価格を比較します。

難燃性と安全性

電源回路や端子を収納するケースでは、異常発熱や電気的故障を想定し、燃えにくい樹脂材料を使用することがあります。

必要な難燃性能は、製品用途、電圧、発熱部品、設置場所などによって異なります。材料の難燃グレードだけでなく、実際に使用する肉厚で要求性能を満たすか確認します。

充電部とケース表面、異なる電位の部品間には、必要な空間距離と沿面距離を確保します。樹脂製であっても、導電性の汚れや結露によって絶縁性能が低下する場合があります。

放熱設計

樹脂は金属より熱を伝えにくいため、ケース内部の熱が外へ逃げにくい傾向があります。電源、抵抗、通信モジュール、表示器などの発熱量を確認します。

自然放熱だけで対応できない場合は、通風口、内部空間の拡大、発熱部品の分散、金属製放熱部品などを検討します。

通風口を設けると粉じんや水分が入りやすくなるため、必要な保護性能との両立が重要です。密閉ケースでは、内部温度を測定して部品の許容温度を超えないことを確認します。

防じん・防水設計

屋外、工場、厨房などで使用する製品では、ケースの合わせ面、表示窓、ボタン、コネクタ、配線引込部から水や粉じんが侵入しない構造を検討します。

上下ケースの間にパッキンを設ける場合は、全周で均一に圧縮できる形状とします。ねじ位置が少ないと、合わせ面が浮いて隙間が生じる場合があります。

パッキン溝の寸法、ケースの剛性、ねじ締付力を一体で設計します。防水性能が必要な場合は、成形品の寸法ばらつきや反りも考慮します。

表示部・操作部の設計

液晶表示器、LED、押しボタン、タッチキーなどを使用する製品では、視認性と操作性を確認します。

表示窓の透明度、反射、見る角度、周囲照明によって見え方が変わります。透明樹脂を一体成形する方法と、別部品の窓を取り付ける方法があります。

ボタンは、押下量、操作力、指の大きさを考慮します。ケース側のボタンと基板上のスイッチ位置がずれると、操作感が悪くなったり、スイッチへ斜めの力が加わったりします。

基板・端子・配線との関係

基板外形、取付穴、コネクタ位置を確認し、ケース側のボスや開口を配置します。部品高さに対してケース内面との余裕を確保します。

端子台のねじを締める製品では、ドライバーを差し込める空間と、電線を曲げる空間が必要です。端子カバーを設ける場合も、配線後に取り付けやすい構造とします。

通信アンテナを内蔵する場合は、金属部品、基板のGND、電源部品との位置関係が通信性能へ影響します。外観設計だけでなく、電気設計と合わせて配置を検討します。

金型設計を考慮した形状

樹脂ケースの金型には、樹脂を流し込むゲート、内部の空気を逃がすベント、成形品を押し出すピンなどが設けられます。

ゲート位置によって、樹脂の流れ、外観、ウェルドライン、変形の出方が変わります。表示面や銘板面など、外観を重視する箇所にゲート跡が残らないよう検討します。

突出しピンの跡も成形品へ残るため、外から見えにくく、機能へ影響しない位置へ配置します。

主な成形不良

ひけ

肉厚部分の冷却・収縮によって、表面がへこむ現象です。ボスやリブの裏側で発生しやすいため、肉厚と配置を見直します。

反り・変形

冷却速度や収縮の差によって、ケースが曲がる現象です。肉厚の偏り、リブ配置、ゲート位置、材料特性が影響します。

ショートショット

樹脂が金型の末端まで届かず、形状の一部が成形されない現象です。薄肉部、長い流路、空気が抜けにくい部分で発生することがあります。

ウェルドライン

分かれて流れた樹脂が合流する位置に線が現れる現象です。外観だけでなく、位置によっては強度低下につながります。

試作・初期成形では、これらの状態を確認し、製品形状や金型条件を調整します。

3次元CADによる設計

樹脂ケースは曲面、リブ、ボスなど立体的な形状が多いため、3次元CADを使用して設計します。

基板や内部部品の3次元データを配置し、ケースとの干渉、組立方向、ねじ位置、工具空間を確認します。上下ケースを分解した状態や、基板の取付工程も検討します。

必要に応じて、3Dプリンターなどで試作ケースを製作し、持ちやすさ、操作感、組立性、配線性を確認してから金型製作へ進みます。

異常・不具合と対策

ケースが閉まりにくい場合は、成形品の反り、内部配線の挟み込み、ボス位置、パッキン厚さを確認します。

ねじ部が割れる場合は、下穴径、締付トルク、ボス肉厚、樹脂材料を見直します。電動工具による過大な締付けが原因となることもあります。

使用中にケースが変色・ひび割れする場合は、紫外線、薬品、油、温度などの影響が考えられます。使用環境に適した材料へ変更できるか検討します。

内部温度が高い場合は、発熱量、通風、ケース容積、部品配置を確認します。材料の許容温度だけでなく、内部電子部品の温度も測定します。

金型修正・製品更新

金型完成後の形状変更には制限があります。樹脂を削って空間を広げる方向の金型修正は比較的対応しやすい場合がありますが、成形品へ形状を追加する変更は金型への肉盛りや部品交換が必要です。

設計段階で、将来変更する可能性がある表示窓、端子開口、基板固定部などを整理しておくことが重要です。

基板や表示器を後継品へ変更する場合は、取付穴、部品高さ、コネクタ、操作部の位置を確認します。既存金型を流用できない場合は、変換部品や金型改修、新規ケースを検討します。

ハカルプラスの対応

ハカルプラスでは、計測機器、センサ機器、通信機器などに使用する樹脂ケースを、内部の電子回路や使用環境に合わせて設計します。

3次元CADを用いて、外形、肉厚、抜き勾配、リブ、ボス、表示窓、端子部、基板取付構造などを検討します。

ケース単体ではなく、プリント基板、電源、表示器、スイッチ、通信部品、組み込みソフトウェアを含め、製品全体として組立・操作・保守しやすい構造を設計します。

難燃性、耐熱性、耐候性などを考慮した樹脂材料の選定や、金型製作、試作、初期成形品の評価についても、製品仕様と生産数量を確認して対応を検討します。

よくある質問

Q. どのような形状でも樹脂ケースとして成形できますか?

A. 金型から取り出せないアンダーカットや、樹脂が流れにくい薄肉形状には制約があります。分割構造や形状変更、スライド機構などを検討します。

Q. ケース表面にへこみが発生するのはなぜですか?

A. ボスやリブなどの厚肉部が冷却時に収縮して発生するひけが考えられます。肉厚、補強形状、成形条件を確認します。

Q. 樹脂ケースに防水性を持たせられますか?

A. 合わせ面のパッキン、ねじ配置、ケース剛性、配線引込部を適切に設計することで対応できる場合があります。

Q. 既存の金型を使って内部基板だけ変更できますか?

A. 基板寸法、取付穴、部品高さ、端子位置が既存ケースへ収まれば可能です。必要に応じて変換ブラケットや金型修正を検討します。

Q. 燃えにくい樹脂材料を選ぶことはできますか?

A. 製品用途、使用電圧、必要肉厚、要求規格を確認し、適切な難燃グレードの材料を選定します。

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