Technology
Sigfox
(Sigfox)
Sigfoxモジュール
Sigfox(シグフォックス)は、少量のデータを低消費電力で遠距離へ送信する、IoT向けのLPWA(Low Power Wide Area)通信技術です。
温度、接点状態、メーター値、電池残量などを間欠的に送信する用途に適しており、電池で長期間動作する小型端末や、広い範囲に多数の端末を設置するシステムで利用されます。
Sigfoxは、免許不要の周波数帯を利用する公衆ネットワーク型のLPWAです。端末が送信したデータは基地局を経由してSigfoxクラウドへ集約され、利用者のサーバーや監視システムへ連携されます。日本国内では、京セラコミュニケーションシステム株式会社がネットワークサービスを提供しています。
Sigfoxの通信の仕組み
Sigfox端末は、携帯電話のように基地局と常時接続するのではなく、必要なタイミングで短いメッセージを送信します。
- センサや接点から計測値・状態を取得する
- 端末内で送信用データへ変換する
- Sigfox無線でメッセージを送信する
- 周辺の基地局がメッセージを受信する
- Sigfoxクラウドへデータを集約する
- 利用者のサーバーやアプリケーションへ連携する
利用者側では、コールバックやAPIなどを利用してデータを受け取り、データベースへの保存、グラフ表示、警報通知などを行います。
Sigfoxの主な特長
低消費電力
送信するデータ量と通信回数を抑えることで、端末の消費電力を小さくできます。電源を確保しにくい屋外設備や、頻繁な電池交換が難しい場所に適しています。
実際の電池寿命は、送信周期、センサの測定回数、再送回数、待機電流、温度、電波状況などによって変わります。
広範囲で利用できる
Sigfoxは、狭い帯域幅を利用するウルトラナローバンド方式によって、比較的長距離の通信を実現します。
公衆ネットワークの提供エリア内であれば、利用者が親機や基地局を設置せずに利用できます。ただし、エリア内でも地下、建物内部、金属製制御盤内などでは通信できないことがあるため、実際の設置位置で確認します。
多数の端末を展開しやすい
多数のセンサ端末や管理対象を広い範囲へ分散して設置する用途に適しています。設備監視、環境計測、物流資材管理、メーター値の収集などに利用できます。
送信できるデータ量
Sigfoxは大容量データを高速に送る通信ではなく、小さなデータを低頻度で送ることに特化しています。
代表的な上り通信では、1メッセージのアプリケーションデータは最大12バイトです。送信回数などの利用条件は、契約プランやサービス仕様を確認する必要があります。
限られたデータ量へ複数の情報を格納するため、次のような処理を行います。
- 温度や流量を一定倍率の整数へ変換する
- 複数の接点状態をビット単位でまとめる
- 警報内容を短いコードで表す
- 必要な測定範囲と分解能に合わせてデータ長を決める
文字列のまま送信するのではなく、端末側でデータを圧縮し、受信側で元の単位や状態へ復元します。
下り通信の制約
Sigfoxは端末からクラウドへ送信する上り通信を中心とした方式ですが、限定的な下り通信にも対応します。
ただし、クラウド側から任意のタイミングで端末へ即座に命令を送る常時接続型の通信ではありません。端末が上り送信した後に、下りデータを受信する仕組みです。
測定周期や動作モードをまれに変更する用途には利用できますが、設備のリアルタイム操作や、即時応答が必要な制御には適していません。
Sigfoxに適した用途
- 温度・湿度などの環境計測
- 河川、水位、浸水の監視
- 電気・ガス・水道メーターの読取り
- 設備の運転・停止状態の監視
- 扉や蓋の開閉検知
- パレット、コンテナ、カゴ車などの所在管理
- 農地や屋外設備の遠隔監視
- 電池残量や機器異常の通知
「一定時間ごとの計測値」や「状態が変化したときの通知」を送り、端末を長期間運用する用途で特長を発揮します。
Sigfoxに適さない用途
- 画像や音声を送信する
- 大量のログをまとめて転送する
- 秒単位で連続して計測値を送る
- 機器をリアルタイムに遠隔操作する
- 通信遅延や到達時間を厳密に保証する
- 頻繁な双方向通信を行う
必要なデータ量、送信周期、応答時間、双方向通信の必要性を整理し、Sigfox、LoRa、LTE-M、NB-IoTなどから適切な方式を選定します。
SigfoxとLoRa Privateの違い
| 項目 | Sigfox | LoRa Private |
|---|---|---|
| ネットワーク | 通信事業者の公衆ネットワーク | 利用者が構築する自営ネットワーク |
| 基地局・親機 | 原則として利用者側で設置不要 | 利用場所へ親機を設置する |
| 利用範囲 | サービス提供エリアに依存 | 親機の通信範囲内 |
| 通信費用 | 端末ごとの回線契約が必要 | 自営網では回線契約が不要な場合がある |
| 設計の自由度 | サービス仕様の範囲で利用 | 通信周期やシステム構成を設計しやすい |
広い地域に点在する端末を既存ネットワークへ接続する場合はSigfox、工場や施設内に独自の無線網を構築する場合はLoRa Privateが適することがあります。
通信できなかった場合の設計
無線通信では、建物、地形、電波干渉、アンテナ状態などによってメッセージが届かない可能性があります。
Sigfoxでは、同じメッセージを時間や周波数を変えて複数回送信し、通信の到達性を高める仕組みがあります。ただし、すべてのデータ到達を保証するものではありません。
- 端末内へ未送信データを一時保存する
- 次回通信時に過去データを送信する
- 一定時間受信できない端末を警報として検出する
- 電池残量や通信状態を監視する
- データ番号によって欠損や重複を判定する
設備の安全停止やリアルタイム制御など、確実性が求められる処理をSigfox通信だけに依存させないことが重要です。
端末設計で重要な項目
アンテナと設置位置
アンテナの種類、向き、筐体、周囲の金属や配線によって通信性能が変化します。金属製の制御盤へ組み込む場合は、外部アンテナの使用などを検討します。
送信周期と電池寿命
送信回数を増やすと細かな監視ができますが、消費電力も増加します。通常時は低頻度で送信し、状態変化や異常時だけ追加送信する方法があります。
電池寿命は、無線モジュールだけでなく、センサ、CPU、電源回路、待機電流、低温時の電池性能を含めて評価します。
技術基準への適合
日本国内で使用する端末には、電波法に適合した無線モジュールや機器を使用します。認証済みモジュールであっても、指定外アンテナへの変更や実装条件によっては追加確認が必要です。
ハカルプラスにおけるSigfoxへの対応
Sigfoxを利用したシステムでは、無線端末だけでなく、センサ入力、電源、アンテナ、送信データ、クラウド連携、データベース、監視画面まで含めた設計が必要です。
ハカルプラスでは、電力計測、設備監視、IoTゲートウェイ、無線通信で培った技術を基に、利用目的や設置環境に応じた構成を検討します。
対応にあたっては、設置場所の通信環境、端末数、送信周期、必要な電池寿命、データ連携先などを確認し、Sigfoxが適しているかを含めて判断します。
よくある質問
Q. サービスエリア内であれば必ず通信できますか?
A. エリア内でも、地下、建物内部、金属製筐体内などでは通信できない場合があります。実際の設置位置とアンテナで通信試験を行うことが重要です。
Q. 通信できなかったデータを後から送信できますか?
A. 端末に保存領域を設け、データ番号や測定時刻とともに次回以降へ送信する構成を検討できます。ただし、保存容量と通信回数の制限を考慮する必要があります。
Q. Sigfoxで設備を緊急停止できますか?
A. 即時性や到達保証が必要な緊急停止には使用しません。安全制御は設備側で完結させ、Sigfoxは状態監視や警報通知に使用します。
Q. 電池交換なしで長期間使用できますか?
A. 送信頻度を抑えれば長期間運用できる場合がありますが、センサの消費電力、温度、電波環境、電池の自己放電を含めて実測評価します。
Q. SigfoxとLoRaのどちらを選べばよいですか?
A. 広域の公衆ネットワークを利用したい場合はSigfox、工場や施設内に自営網を構築したい場合はLoRa Privateが候補になります。端末数、通信量、設置範囲、運用費用を比較して選定します。
関連ワード
同じカテゴリの『ハカル技術辞典』を見る