Technology
LoRa無線
(LoRaむせん)
LoRaモジュール
LoRa無線は、少ない消費電力で比較的長距離のデータ通信を行う無線技術です。
LoRaは「Long Range」に由来する名称で、LPWA(Low Power Wide Area)に分類されます。LPWAとは、センサ値、接点状態、メーター値などの比較的小さなデータを、低消費電力で広い範囲へ送信することを目的とした通信方式の総称です。
LoRa無線は、携帯電話回線や無線LANのように大量のデータを高速で送る用途ではなく、温度、電流、電力量、設備の運転状態、警報などを一定間隔で送信するIoT・遠隔監視に適しています。通信速度を抑える代わりに、長距離通信、省電力、通信配線工事の削減といった効果を得やすいことが特長です。
LoRaとLoRaWANの違い
LoRaとLoRaWANは関連する技術ですが、同じものではありません。
LoRaは、無線信号をどのような方式で送受信するかを定める物理層の通信技術です。弱い信号を検出しやすい変調方式を利用することで、比較的長距離の通信を実現します。
LoRaWANは、LoRaを物理層として使用し、端末、ゲートウェイ、ネットワークサーバーなどの通信方法を定めたネットワーク規格です。多数のセンサを広い範囲へ配置し、クラウドなどで一元管理する用途に適しています。
一方、LoRaの物理層を利用し、メーカーやシステムごとに独自の通信方式を構築することもできます。ハカルプラスでは、既設設備のアナログ信号、接点信号、RS-485通信などを離れた場所へ伝送する専用無線としてLoRaを活用しています。
LoRa無線の主な特長
長距離通信に適している
LoRa無線は、無線LANやBluetoothなどと比べて長距離通信に適しています。ただし、通信できる距離は一定ではありません。
見通しのよい屋外と、鉄筋コンクリートの壁や金属設備が多い工場内では、通信可能距離が大きく異なります。アンテナの高さや向き、障害物、地形、周囲の電波環境、通信設定などによって通信品質が変化するため、導入前に実際の設置場所で通信試験を行うことが重要です。
低消費電力で運用しやすい
少量のデータを一定時間ごと、または状態変化時だけ送信することで、消費電力を抑えやすくなります。
ただし、実際の電池寿命は、送信周期、再送回数、受信待機時間、接続センサの消費電力、使用温度などによって変わります。LoRaを採用するだけで長期間運用できるわけではなく、機器全体としての省電力設計が必要です。
配線工事を減らせる
建屋間、屋外設備、高所、道路や構内通路を横断する場所などでは、新たな通信配線の敷設が難しいことがあります。LoRa無線を利用すると、既設設備の信号を無線へ変換して送信できるため、大規模な配管、掘削、高所作業などを減らせる場合があります。
ただし、センサや無線機器への電源供給は別途必要です。電池、AC電源、DC電源など、設置条件に合わせて構成します。
LoRa無線に適するデータ
- 温度、湿度、圧力
- 電流、電圧、電力、電力量
- 水位、流量、サイロやタンクの残量
- 設備の運転・停止状態
- 警報や満杯・空などの接点状態
- カウンタ値
- RS-485接続機器の計測値
一方、監視カメラの映像、音声、大容量ファイル、高速で連続する制御データなどの送信には適していません。
通信距離と安定性に影響する要因
障害物と見通し
鉄筋コンクリートの壁、金属製タンク、サイロ、制御盤、機械設備などが送受信機の間にあると、電波が遮られたり反射したりします。
アンテナの設置
アンテナを床面や地面の近くへ設置すると、人、車両、設備などの影響を受けやすくなります。可能な範囲で高い位置へ設置し、金属面への密着を避けます。
無線機本体を金属製制御盤内へ設置する場合は、アンテナを盤外へ取り出すなどの検討が必要です。
電磁ノイズ
インバーター、モーター、溶接機、大電流設備などがある環境では、無線機本体だけでなく、接続する電源線や信号線からノイズが侵入する場合があります。設置位置、配線、接地、電源回路まで含めて確認します。
通信の集中
免許不要の周波数帯は他の無線機器と共用するため、端末数が多い場合や短い周期で一斉送信する場合は、通信が重なる可能性があります。送信タイミング、チャンネル、再送回数などを調整します。
通信設定の考え方
LoRa無線では、拡散率、帯域幅、符号化率、送信出力などの設定によって、通信距離、通信速度、送信時間、消費電力のバランスが変わります。
一般に、弱い電波を受信しやすい設定にすると通信距離を伸ばしやすくなりますが、1回の送信時間が長くなります。送信時間が長くなると、消費電力や通信衝突の可能性も増加します。
設定値を最大にすればよいわけではなく、必要な通信距離、データ量、送信周期、端末数、電源条件を踏まえて調整します。
RS-485通信の無線化
工場設備では、計測器やセンサとの通信にRS-485が広く利用されています。RS-485通信をLoRa無線へ変換することで、離れた場所にある機器からデータを収集できる場合があります。
ただし、RS-485は電気的な通信方式であり、実際のデータ内容や通信手順はModbusなどの上位プロトコルによって決まります。無線化する際は、通信速度、通信周期、親局と子局の関係、応答待ち時間、タイムアウト、再試行方法などを確認します。
有線通信と比べて無線区間には遅延や再送が発生するため、既設機器のタイムアウト設定によっては、そのまま置き換えられない場合があります。
アナログ信号・接点信号の無線化
アナログ信号
4~20mAや0~10Vなどのアナログ信号を無線機へ入力し、デジタル値へ変換して送信します。入力範囲、分解能、精度、更新周期、断線時の扱いなどを確認します。
接点信号
設備の運転、停止、異常、満杯、空、扉の開閉などの状態を送信します。状態変化時だけ送信する方式では通信異常を判別しにくいため、一定時間ごとの定期送信を組み合わせることがあります。
通信できない場合の設計
無線通信では、障害物の増加、周囲の電波環境の変化、電池切れ、アンテナの破損、機器故障などにより、一時的にデータを受信できないことがあります。
最後に受信した値をそのまま表示すると、現在値と誤認される可能性があります。そのため、最終受信時刻、通信状態、データの有効期限などを管理し、一定時間受信できない場合は通信異常として表示します。
送信側にデータを一時保存し、通信復旧後に再送する構成では、保存容量、再送順序、重複登録の防止なども検討します。
非常停止、安全装置、高速な位置決めなど、安全性や即時性が重要な制御を無線だけに依存させることは避け、有線回路や設備側の安全機能を組み合わせます。
データ保存と可視化
LoRa無線で受信したデータは、現在値を表示するだけでなく、継続的に保存することで設備管理に活用できます。
- 日・週・月単位の履歴グラフ
- 上限値・下限値を超えたときの警報
- 設備の稼働時間の集計
- 電力量や使用量の傾向確認
- 異常発生前後の履歴確認
- 複数地点の一括監視
- CSVなどへのデータ出力
継続的な変化を確認することで、設備の異常兆候、エネルギー使用量の増加、運転状態の変化などを把握しやすくなります。
法令とセキュリティ
日本国内で使用する場合は、国内の技術基準に適合した無線機器を使用し、周波数、送信出力、アンテナなどの条件を守る必要があります。
認証済みの無線モジュールであっても、指定外のアンテナへの変更や無線回路の変更によって、認証条件から外れる可能性があります。
設備データを無線で送信する場合は、用途に応じて端末認証、暗号化、改ざん検知、端末識別などを検討します。独自のLoRa通信を使用する場合は、通信方式だけでなく、セキュリティの設計も必要です。
ハカルプラスのLoRa無線機器
ハカルプラスでは、アナログ信号、接点信号、RS-485信号などをLoRa無線で送信し、離れた事務所や監視場所でデータを確認できる無線機器を開発しています。
既設設備へ後付けし、受信したデータを保存・グラフ化することで、現場へ確認に行く作業の削減や、設備状態の継続的な把握に活用できます。
無線機器だけでなく、既設信号の確認、アンテナ設置、通信試験、電源、受信装置、データ保存、グラフ表示、警報、上位システム連携まで、現場の運用に合わせて構成を検討します。
LoRa無線機器の詳細
よくある質問
Q. 設置後に通信が不安定になった場合、何を確認しますか?
A. アンテナの向きや固定状態、周囲に追加された金属設備や障害物、受信電波の状態、電源、通信エラーの発生頻度などを確認します。設備の稼働状況によって通信状態が変化する場合は、インバーターなどのノイズ源との関係も調査します。
Q. 通信試験では一度受信できれば問題ありませんか?
A. 一度の受信確認だけでは十分ではありません。設備稼働中、車両通過時、扉の開閉時、天候や設置条件が異なる状態でも確認し、一定期間の受信率や再送回数を評価します。
Q. 通信が途絶えたときも最後の値を表示できますか?
A. 表示できますが、現在値と誤認しないよう、最終受信時刻や通信異常を併せて表示する必要があります。一定時間更新されないデータを無効として扱う方法もあります。
Q. 既設のRS-485配線の一部だけをLoRa無線へ置き換えられますか?
A. 通信プロトコル、親局・子局の構成、応答時間、タイムアウトなどが適合すれば可能な場合があります。無線区間の遅延を含め、実機での通信確認が必要です。
Q. 将来、監視する設備を追加できますか?
A. 追加できる場合がありますが、受信機の収容台数、通信周期、データ保存項目、電波の混雑などを確認する必要があります。将来の追加台数を考慮して初期構成を設計することが重要です。
関連ワード
同じカテゴリの『ハカル技術辞典』を見る
