放熱設計とは、電子部品、電源回路、制御盤、モーターなどで発生する熱を外部へ逃がし、機器内部の温度を許容範囲に保つための設計です。温度上昇を抑えることで、部品故障、性能低下、絶縁劣化、寿命短縮を防ぎます。
放熱は、部品の選定だけでなく、基板配置、筐体形状、通風経路、ヒートシンク、ファン、設置環境を含めて検討します。発熱量が小さくても、密閉筐体や高温環境では内部温度が大きく上昇することがあります。
ハカルプラスでは、回路設計、基板設計、板金・樹脂ケース設計、制御盤設計を組み合わせ、使用環境に応じた放熱構造を検討します。
熱が発生する主な部品
- 電源回路、トランス、DC-DCコンバータ
- インバーター、サーボアンプ、パワー半導体
- リレー、電磁接触器、端子台
- CPU、マイコン、通信モジュール
- 抵抗、整流器、レギュレータ
- 盤内ヒーターやバックライト
発熱量は、消費電力と効率から見積もります。入力電力と出力電力の差は、主に熱として機器内部へ放出されます。
熱の伝わり方
熱は、伝導、対流、放射の三つの方法で移動します。
- 伝導:部品から基板、ヒートシンク、筐体へ直接伝わる
- 対流:空気や液体の流れによって運ばれる
- 放射:赤外線として周囲へ放出される
実際の機器では、これらが同時に発生します。密閉筐体では外気との対流が制限されるため、筐体表面から外部へ熱を逃がす構造が重要です。
熱抵抗の考え方
部品の温度上昇は、発熱量と熱抵抗から概算できます。
温度上昇=発熱量×熱抵抗
例えば、発熱量が10W、周囲までの熱抵抗が5℃/Wであれば、温度上昇は約50℃となります。周囲温度が40℃なら、部品温度は約90℃に達する可能性があります。
自然空冷
自然空冷は、温められた空気が上昇する性質を利用して放熱する方法です。ファンを使用しないため、騒音、消費電力、保守部品を減らせます。
発熱部品を上部へ集中させると、下側の部品が温められる場合があります。吸気口を下部、排気口を上部に設け、空気の通り道を確保します。
強制空冷
自然空冷で温度を抑えられない場合は、ファンで空気を循環させます。必要風量は、発熱量、許容温度上昇、筐体内部の圧力損失から検討します。
ファンを設けても、空気が発熱部品を通らず短絡して流れると十分に冷却できません。導風板や部品配置により、冷却対象へ空気を流します。
ヒートシンク
ヒートシンクは、部品から受け取った熱を広い表面積から空気へ放出します。材質、表面積、フィン形状、取付方向、風速によって性能が変わります。
部品とヒートシンクの間には、熱伝導シートやグリスを使用し、微小な隙間による熱抵抗を低減します。絶縁が必要な場合は、熱伝導性と絶縁性の両方を確認します。
基板の放熱設計
基板では、銅箔面積を広げたり、サーマルビアで基板裏面へ熱を逃がしたりします。発熱部品の周囲に温度に弱い部品を配置しないことも重要です。
電解コンデンサ、電池、基準電圧回路、温度センサなどは、発熱部品やヒートシンクから距離を取ります。デジタル回路とアナログ計測回路の温度影響も考慮します。
制御盤の放熱
制御盤では、インバーター、電源、トランスなどの発熱量を合計し、盤内温度を見積もります。機器間には必要な放熱間隔を確保し、メーカー指定の取付方向を守ります。
盤用ファン、熱交換器、クーラーを使用する場合は、周囲温度、粉じん、湿度、油煙、屋外設置などの条件を確認します。
防滴・防じんとの両立
通風口を設けると放熱しやすくなりますが、水や粉じんが侵入しやすくなります。高い保護等級が必要な場合は、密閉型熱交換器、盤用クーラー、筐体表面放熱などを検討します。
フィルタ付きファンを使用すると、フィルタの目詰まりによって風量が低下します。保守周期と交換しやすさを考慮します。
周囲温度と設置条件
直射日光を受ける屋外盤、炉の近く、天井付近、狭い機械内部では、周囲温度が想定以上に高くなる場合があります。
カタログ上の機器定格は、指定された周囲温度や取付条件を前提としています。盤内温度が高い場合は、機器の負荷率を下げるディレーティングが必要になることがあります。
温度監視
重要設備では、盤内や発熱部品の近くに温度センサを設置します。上限温度で警報を出し、さらに上昇した場合は負荷を停止するなど、段階的な保護を行います。
ファン故障、フィルタ目詰まり、周囲温度上昇を履歴として保存すると、予防保全に活用できます。
異常時の確認
温度が高い場合は、ファン停止、フィルタ目詰まり、通風口閉塞、機器の過負荷、端子の接触不良を確認します。
一部だけ異常に高温となる場合は、締付け不良、部品劣化、放熱材のずれ、ヒートシンク取付不良などを点検します。サーモグラフィを利用すると温度分布を確認できます。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、発熱量、周囲温度、筐体寸法、防滴・防じん条件、設置方法を確認して放熱構造を検討します。
基板、ヒートシンク、板金ケース、制御盤、ファン、熱交換器、温度監視を組み合わせ、機器の安定運転と長寿命化を図ります。
よくある質問
Q. ファンを付ければ放熱問題は解決しますか?
A. 風量だけでなく、空気が発熱部品を通る経路、吸排気口、周囲温度を確認する必要があります。
Q. 密閉筐体でも放熱できますか?
A. 筐体表面、ヒートシンク、熱交換器、盤用クーラーなどを利用して放熱できます。
Q. ヒートシンクは大きいほどよいですか?
A. 放熱性能は高くなりやすいですが、取付方向、風量、熱接触、設置スペースも重要です。
Q. 盤内温度を遠隔監視できますか?
A. 温度センサと通信機器を組み合わせ、現在値、警報、履歴を遠隔監視できます。
Q. 既設制御盤の温度対策もできますか?
A. 発熱源、温度分布、設置環境を確認し、ファン、熱交換器、機器配置変更などを検討できます。
関連ワード
結露対策設計とは、筐体、制御盤、電子機器、センサなどの内部や表面に水滴が発生し、腐食、絶縁低下、短絡、誤動作が起こることを防ぐための設計です。屋外設備、冷蔵・冷凍設備、高湿度環境、温度変化の大きい場所では特に重要です。
結露は、空気中の水蒸気を含む量と、機器表面の温度によって発生します。防滴構造だけでは内部結露を防げないため、温度、湿度、換気、密閉、断熱、加温を組み合わせて対策します。
ハカルプラスでは、設置環境、筐体構造、発熱量、電源条件を確認し、板金・樹脂ケース設計、ヒーター、換気、温度・湿度監視を含む結露対策を検討します。
結露が発生する仕組み
空気中には水蒸気が含まれており、温度が低下すると保持できる水蒸気量が減少します。空気または物体表面の温度が露点温度を下回ると、水蒸気が水滴となって現れます。
例えば、冷えた筐体内へ暖かく湿った空気が入った場合や、夜間に屋外盤の表面温度が低下した場合に結露が発生しやすくなります。
結露が起こりやすい環境
- 昼夜の温度差が大きい屋外
- 冷蔵庫、冷凍庫、低温倉庫の周辺
- 洗浄水や蒸気を使用する工場
- 地下、ピット、沿岸部など湿度の高い場所
- 装置停止後に内部温度が急低下する設備
- 空調された室内と屋外を移動する機器
筐体が密閉されていても、組立時に内部へ入り込んだ湿気や、パッキン、ケーブル引込部から徐々に侵入した水分によって結露する場合があります。
結露による機器への影響
基板や端子へ水滴が付着すると、絶縁抵抗が低下し、短絡や漏電が起こる可能性があります。水分に粉じんや塩分が混ざると導電性が高まり、腐食も進みやすくなります。
- 基板パターンや端子の腐食
- センサ入力やアナログ信号の変動
- リレー、スイッチ、コネクタの接触不良
- 絶縁低下による漏電・地絡
- 表示器や透明窓の曇り
- カビや異臭の発生
筐体の密閉と換気
外気の侵入を抑えるために筐体を密閉する方法があります。ただし、完全密閉が困難な場合や、内部に湿気が残った場合は、かえって水分が抜けにくくなります。
自然換気を行う場合は、通気口へ防水・防じんフィルタを設けます。通気膜を利用すると、気圧差を調整しながら液体水の侵入を抑えられる場合があります。
盤用ヒーターによる対策
盤内ヒーターで内部温度を周囲よりわずかに高く保つと、部品表面が露点温度を下回りにくくなります。設備停止中や夜間だけヒーターを運転する方法もあります。
ヒーター容量が不足すると効果が得られず、過大だと部品温度上昇や消費電力増加につながります。筐体容積、断熱性、外気温、換気量を考慮して選定します。
湿度調節器と温度制御
湿度調節器を使い、盤内湿度が設定値を超えたときにヒーターやファンを運転できます。温度調節器と組み合わせ、低温時のみ加温する構成もあります。
湿度だけでなく温度も測定し、露点に近づいた段階で加温する制御を行うと、必要以上のヒーター運転を抑えられます。
断熱と熱橋対策
筐体の一部だけが外気で冷やされると、その部分が最初に結露します。金属製の取付金具、ボルト、筐体壁などが熱を伝える経路を熱橋と呼びます。
断熱材、二重構造、樹脂スペーサなどを使用し、局所的な低温部を減らします。ただし、断熱材が水分を吸収すると性能が低下するため、材質と施工方法を確認します。
水抜きと排水構造
結露を完全に防げない設備では、発生した水が電子部品へ到達しない構造とします。筐体底部に水がたまらないよう傾斜や排水口を設け、端子台や基板を底面から離して配置します。
ケーブルを伝って水が浸入しないよう、引込部の位置、ケーブルグランド、ドリップループを検討します。
基板・部品側の対策
基板へ防湿コーティングを施すと、水分や腐食性物質から回路を保護できます。ただし、コネクタ、スイッチ、調整部品など、塗布できない部分があります。
防湿コーティングだけに依存せず、筐体構造、温度管理、部品配置と併用します。腐食しにくい端子・ねじ・金属材料の選定も重要です。
放熱設計との両立
結露対策のために筐体を密閉すると、内部の熱が逃げにくくなります。一方、通風口を増やすと湿気や粉じんが侵入しやすくなります。
発熱量が大きい場合は、密閉型熱交換器、筐体外部のヒートシンク、盤用クーラーなどを検討し、防滴・防じんと放熱を両立させます。
異常時の確認
盤内に水滴や腐食が見つかった場合は、パッキン、ケーブル引込部、通気口からの浸水か、内部結露かを切り分けます。雨天時だけ発生する場合は浸水、急な気温変化や設備停止後に発生する場合は結露が疑われます。
ヒーター、ファン、湿度調節器が正常に動作しているか、通気口やフィルタが詰まっていないかも確認します。
保守と定期点検
筐体内部の水滴、さび、緑青、変色、カビを点検します。パッキンの硬化や亀裂、ケーブルグランドの緩み、排水口の詰まりも確認します。
温湿度を継続記録すると、結露が発生しやすい時間帯や運転条件を把握できます。異常傾向が見られた場合は、ヒーター設定や換気方法を見直します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、屋内・屋外、温度、湿度、洗浄水、粉じんなどの条件を確認し、筐体、パッキン、通気、断熱、盤用ヒーターを含む結露対策を検討します。
温度・湿度センサ、警報、ヒーター制御、通信、履歴保存を組み合わせ、結露リスクを監視できる構成にも対応します。
よくある質問
Q. 防滴構造なら結露は発生しませんか?
A. 防滴構造は外部からの水の侵入を抑えますが、内部の湿気や温度変化による結露は別途対策が必要です。
Q. 密閉すれば結露を防げますか?
A. 湿気の侵入は抑えられますが、内部に水分が残ると結露する場合があります。
Q. 盤用ヒーターは常時運転が必要ですか?
A. 使用環境によって異なります。温度・湿度条件に応じて自動運転する方法があります。
Q. 防湿コーティングだけで十分ですか?
A. 回路保護には有効ですが、端子やコネクタを含め、筐体と温湿度管理を組み合わせる必要があります。
Q. 既設盤へ結露監視を追加できますか?
A. 温湿度センサ、ヒーター、調節器、通信機器を追加できる場合があります。
関連ワード
樹脂ケース設計とは、計測機器、通信機器、センサ機器などの内部部品を保護し、操作性や外観を整える樹脂製の筐体を設計することです。プラスチックケース設計とも呼ばれます。
量産品では、一般に射出成形によって樹脂ケースを製作します。加熱して溶かした樹脂を金型へ流し込み、冷却・固化した後に取り出します。そのため、外観や収納寸法だけでなく、金型から取り出せる形状、樹脂の流れ、収縮、強度、組立方法まで考慮しなければなりません。
樹脂ケースは、電気絶縁性、軽量性、形状の自由度に優れます。一方、肉厚の偏りによる変形、成形時のひけ、ねじ部の破損、温度や紫外線による劣化などが発生する可能性があります。製品の使用環境と量産方法を踏まえた設計が重要です。
樹脂ケースの主な用途
- 電力・電流・電圧などの計測機器
- 表示器、操作器、通信機器
- センサや変換器の保護ケース
- 壁面取付形・盤面取付形の機器
- 卓上形や携帯形の組み込み製品
- 基板、電源、端子台、アンテナの収納
製品によって、表示部の見やすさ、ボタンの押しやすさ、配線のしやすさ、防じん・防水性、施工性など、優先する要件は異なります。
樹脂ケースの基本構成
一般的な樹脂ケースは、上ケース、下ケース、前面パネル、端子カバー、透明窓、取付金具などで構成されます。
内部には、プリント基板、液晶表示器、LED、スイッチ、電源、端子台、通信モジュールなどを配置します。ケース内部のボスやリブを利用して基板を固定し、外部からの荷重や振動が直接基板へ加わらない構造とします。
製品の組立方法には、ねじ固定、スナップフィット、溶着、接着などがあります。保守や分解の必要性、生産数量、防水性を考慮して選定します。
射出成形の仕組み
射出成形では、樹脂材料を成形機で加熱・溶融し、金型内部の空間へ高い圧力で注入します。樹脂が冷えて固まった後、金型を開き、突出しピンなどで成形品を取り出します。
この工程では、樹脂が金型内へ均一に流れること、冷却後に大きく変形しないこと、金型から無理なく取り出せることが必要です。
複雑な形状でも製作できますが、金型の分割方向と直交する引っ掛かり形状がある場合は、スライド機構などが必要となり、金型が複雑になります。
抜き勾配とアンダーカット
抜き勾配
抜き勾配とは、成形品を金型から取り出しやすくするために、側面へわずかな傾斜を設けることです。側面が金型に対して完全な垂直であると、樹脂の収縮によって金型へ密着し、取り出しにくくなります。
必要な勾配は、樹脂材料、表面の模様、成形品の深さによって異なります。外観面にしぼ加工を施す場合は、通常より大きな抜き勾配が必要になることがあります。
アンダーカット
アンダーカットとは、通常の金型開閉方向だけでは成形品を取り出せない引っ掛かり形状です。横向きの穴、内側へ張り出した爪、深い溝などが該当します。
アンダーカットを設ける場合は、スライドコアや傾斜ピンなどを使用します。ただし、金型費、保守部品、成形時間が増えるため、形状変更によって避けられないか検討します。
肉厚設計
樹脂ケースでは、壁の厚さを可能な限り均一にすることが重要です。厚い部分は冷却に時間がかかり、表面がへこむ「ひけ」や内部の空洞が発生しやすくなります。
反対に薄すぎる部分では、樹脂が十分に流れず、未充填や強度不足が発生する場合があります。
厚い部分が必要な場合は、全体を厚くするのではなく、リブやボスを追加して強度を確保します。肉厚が急激に変化する形状は避け、なだらかにつなぎます。
リブによる補強
リブは、ケース内面へ設ける細長い補強形状です。板面のたわみを抑え、板厚を過度に増やさずに剛性を高められます。
広い平面や、押しボタン操作によって力が加わる部分、コネクタの抜き差しを行う部分などへ配置します。
リブを厚くしすぎると、外観面へひけが現れる場合があります。基本肉厚との比率、配置、根元の丸みを考慮して設計します。
ボスとねじ固定
ボスは、基板や上下ケースをねじで固定するための円筒状の形状です。タッピンねじを使用し、樹脂へ直接ねじ山を形成する構造が一般的です。
ボスの肉厚が大きすぎると外観面にひけが発生し、薄すぎるとねじ締結時に割れる可能性があります。周囲へリブを設け、荷重を分散させます。
ねじ径、下穴径、ねじ込み深さ、締付トルクは樹脂材料に合わせて決定します。何度も分解する製品では、金属製のインサートナットを使用する場合があります。
スナップフィット設計
スナップフィットは、樹脂の弾性を利用した爪で部品同士を固定する方法です。ねじを減らせるため、組立時間の短縮と部品点数の削減につながります。
爪をたわませた際に過大な応力が加わると、組立時や分解時に破損します。爪の長さ、厚さ、根元形状、引っ掛かり量を調整します。
保守時に分解する製品では、解除方法と工具の入り方も考慮します。誤って外れないことと、必要時に破損せず外せることを両立させます。
樹脂材料の選定
ABS樹脂
成形性、外観性、強度のバランスに優れ、一般的な機器ケースへ使用されます。塗装や印刷にも対応しやすい材料です。
ポリカーボネート
耐衝撃性が高く、透明部品にも使用できます。温度や難燃性が求められる用途で検討されますが、薬品によって割れが生じる場合があります。
ポリカーボネート・ABS混合材
ポリカーボネートの耐熱性や強度と、ABS樹脂の成形性を組み合わせた材料です。電気・電子機器のケースで使用されることがあります。
ポリアミド
強度と耐摩耗性に優れ、端子部品や機構部品に利用されます。ただし、吸湿によって寸法や特性が変化するため、用途に応じた確認が必要です。
材料選定では、強度、耐熱性、難燃性、絶縁性、耐候性、耐薬品性、色、成形性、価格を比較します。
難燃性と安全性
電源回路や端子を収納するケースでは、異常発熱や電気的故障を想定し、燃えにくい樹脂材料を使用することがあります。
必要な難燃性能は、製品用途、電圧、発熱部品、設置場所などによって異なります。材料の難燃グレードだけでなく、実際に使用する肉厚で要求性能を満たすか確認します。
充電部とケース表面、異なる電位の部品間には、必要な空間距離と沿面距離を確保します。樹脂製であっても、導電性の汚れや結露によって絶縁性能が低下する場合があります。
放熱設計
樹脂は金属より熱を伝えにくいため、ケース内部の熱が外へ逃げにくい傾向があります。電源、抵抗、通信モジュール、表示器などの発熱量を確認します。
自然放熱だけで対応できない場合は、通風口、内部空間の拡大、発熱部品の分散、金属製放熱部品などを検討します。
通風口を設けると粉じんや水分が入りやすくなるため、必要な保護性能との両立が重要です。密閉ケースでは、内部温度を測定して部品の許容温度を超えないことを確認します。
防じん・防水設計
屋外、工場、厨房などで使用する製品では、ケースの合わせ面、表示窓、ボタン、コネクタ、配線引込部から水や粉じんが侵入しない構造を検討します。
上下ケースの間にパッキンを設ける場合は、全周で均一に圧縮できる形状とします。ねじ位置が少ないと、合わせ面が浮いて隙間が生じる場合があります。
パッキン溝の寸法、ケースの剛性、ねじ締付力を一体で設計します。防水性能が必要な場合は、成形品の寸法ばらつきや反りも考慮します。
表示部・操作部の設計
液晶表示器、LED、押しボタン、タッチキーなどを使用する製品では、視認性と操作性を確認します。
表示窓の透明度、反射、見る角度、周囲照明によって見え方が変わります。透明樹脂を一体成形する方法と、別部品の窓を取り付ける方法があります。
ボタンは、押下量、操作力、指の大きさを考慮します。ケース側のボタンと基板上のスイッチ位置がずれると、操作感が悪くなったり、スイッチへ斜めの力が加わったりします。
基板・端子・配線との関係
基板外形、取付穴、コネクタ位置を確認し、ケース側のボスや開口を配置します。部品高さに対してケース内面との余裕を確保します。
端子台のねじを締める製品では、ドライバーを差し込める空間と、電線を曲げる空間が必要です。端子カバーを設ける場合も、配線後に取り付けやすい構造とします。
通信アンテナを内蔵する場合は、金属部品、基板のGND、電源部品との位置関係が通信性能へ影響します。外観設計だけでなく、電気設計と合わせて配置を検討します。
金型設計を考慮した形状
樹脂ケースの金型には、樹脂を流し込むゲート、内部の空気を逃がすベント、成形品を押し出すピンなどが設けられます。
ゲート位置によって、樹脂の流れ、外観、ウェルドライン、変形の出方が変わります。表示面や銘板面など、外観を重視する箇所にゲート跡が残らないよう検討します。
突出しピンの跡も成形品へ残るため、外から見えにくく、機能へ影響しない位置へ配置します。
主な成形不良
ひけ
肉厚部分の冷却・収縮によって、表面がへこむ現象です。ボスやリブの裏側で発生しやすいため、肉厚と配置を見直します。
反り・変形
冷却速度や収縮の差によって、ケースが曲がる現象です。肉厚の偏り、リブ配置、ゲート位置、材料特性が影響します。
ショートショット
樹脂が金型の末端まで届かず、形状の一部が成形されない現象です。薄肉部、長い流路、空気が抜けにくい部分で発生することがあります。
ウェルドライン
分かれて流れた樹脂が合流する位置に線が現れる現象です。外観だけでなく、位置によっては強度低下につながります。
試作・初期成形では、これらの状態を確認し、製品形状や金型条件を調整します。
3次元CADによる設計
樹脂ケースは曲面、リブ、ボスなど立体的な形状が多いため、3次元CADを使用して設計します。
基板や内部部品の3次元データを配置し、ケースとの干渉、組立方向、ねじ位置、工具空間を確認します。上下ケースを分解した状態や、基板の取付工程も検討します。
必要に応じて、3Dプリンターなどで試作ケースを製作し、持ちやすさ、操作感、組立性、配線性を確認してから金型製作へ進みます。
異常・不具合と対策
ケースが閉まりにくい場合は、成形品の反り、内部配線の挟み込み、ボス位置、パッキン厚さを確認します。
ねじ部が割れる場合は、下穴径、締付トルク、ボス肉厚、樹脂材料を見直します。電動工具による過大な締付けが原因となることもあります。
使用中にケースが変色・ひび割れする場合は、紫外線、薬品、油、温度などの影響が考えられます。使用環境に適した材料へ変更できるか検討します。
内部温度が高い場合は、発熱量、通風、ケース容積、部品配置を確認します。材料の許容温度だけでなく、内部電子部品の温度も測定します。
金型修正・製品更新
金型完成後の形状変更には制限があります。樹脂を削って空間を広げる方向の金型修正は比較的対応しやすい場合がありますが、成形品へ形状を追加する変更は金型への肉盛りや部品交換が必要です。
設計段階で、将来変更する可能性がある表示窓、端子開口、基板固定部などを整理しておくことが重要です。
基板や表示器を後継品へ変更する場合は、取付穴、部品高さ、コネクタ、操作部の位置を確認します。既存金型を流用できない場合は、変換部品や金型改修、新規ケースを検討します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、計測機器、センサ機器、通信機器などに使用する樹脂ケースを、内部の電子回路や使用環境に合わせて設計します。
3次元CADを用いて、外形、肉厚、抜き勾配、リブ、ボス、表示窓、端子部、基板取付構造などを検討します。
ケース単体ではなく、プリント基板、電源、表示器、スイッチ、通信部品、組み込みソフトウェアを含め、製品全体として組立・操作・保守しやすい構造を設計します。
難燃性、耐熱性、耐候性などを考慮した樹脂材料の選定や、金型製作、試作、初期成形品の評価についても、製品仕様と生産数量を確認して対応を検討します。
よくある質問
Q. どのような形状でも樹脂ケースとして成形できますか?
A. 金型から取り出せないアンダーカットや、樹脂が流れにくい薄肉形状には制約があります。分割構造や形状変更、スライド機構などを検討します。
Q. ケース表面にへこみが発生するのはなぜですか?
A. ボスやリブなどの厚肉部が冷却時に収縮して発生するひけが考えられます。肉厚、補強形状、成形条件を確認します。
Q. 樹脂ケースに防水性を持たせられますか?
A. 合わせ面のパッキン、ねじ配置、ケース剛性、配線引込部を適切に設計することで対応できる場合があります。
Q. 既存の金型を使って内部基板だけ変更できますか?
A. 基板寸法、取付穴、部品高さ、端子位置が既存ケースへ収まれば可能です。必要に応じて変換ブラケットや金型修正を検討します。
Q. 燃えにくい樹脂材料を選ぶことはできますか?
A. 製品用途、使用電圧、必要肉厚、要求規格を確認し、適切な難燃グレードの材料を選定します。
関連ワード
板金ケース・パーツ設計とは、制御盤、計測機器、センサ機器、通信機器などに使用する金属製の筐体や取付部品を設計することです。機器を収納するケースだけでなく、内部の基板取付板、端子台取付金具、仕切板、操作パネル、ブラケットなども対象となります。
板金部品は、薄い金属板を切断し、曲げ、穴あけ、溶接などによって立体形状へ加工します。設計では、収納する機器の寸法だけでなく、配線作業、放熱、防水・防じん、強度、製造方法、組立性、保守性まで考慮する必要があります。
同じ外形寸法のケースでも、板厚、曲げ位置、補強方法、通風口、扉構造によって使いやすさや耐久性は大きく変わります。電子回路、制御機器、操作部品との関係を整理し、製品や設備に適した構造を設計することが重要です。
板金ケース・パーツの主な用途
- 制御盤や操作盤の筐体
- 計測機器・表示器のケース
- センサや通信機器の保護ケース
- 基板、電源、端子台の取付板
- スイッチ、表示灯、タッチパネルの操作面
- 機器固定用のブラケットや補強部品
屋内の制御盤、屋外設置の計測器、壁面取付機器、卓上機器など、使用環境によって求められる形状や性能は異なります。
基本的な設計の流れ
収納機器と必要空間の整理
最初に、基板、電源、端子台、リレー、PLC、通信機器、表示器など、ケース内部へ収納する機器を整理します。
各機器の外形寸法だけでなく、コネクタの抜き差し、配線の曲げ、工具を使用する空間、部品交換に必要な作業範囲も確保します。
部品同士を詰め込みすぎると、組立や保守が難しくなり、発熱部品の温度も上昇します。将来の部品変更や増設を考慮して余裕を設ける場合もあります。
外形と分割構造の決定
ケースを一体構造とするか、前面・背面・底面などに分割するかを決めます。小型機器では、曲げ加工した本体と着脱式カバーを組み合わせる構造が一般的です。
制御盤では、箱本体、扉、内部取付板、底板、ケーブル引込板などに分けることがあります。分割方法は、加工性、組立性、配線作業、保守方法に影響します。
板厚と材質の選定
板厚は、ケース寸法、収納機器の重量、取付方法、必要な強度から決定します。板厚が薄すぎると、扉のたわみ、振動、ねじ部の変形などが発生します。
厚くすると強度は上がりますが、重量と材料費が増え、曲げ加工も難しくなります。必要に応じてリブ、折り返し、補強板を設け、板厚を過度に増やさず強度を確保します。
主な材料
冷間圧延鋼板
一般的な制御盤や屋内用ケースに使用されます。加工しやすく、強度を確保しやすい材料です。腐食を防ぐため、塗装やめっきなどの表面処理を行います。
表面処理鋼板
亜鉛めっきなどの表面処理が施された鋼板です。塗装前の防食性を高めたい場合や、内部部品として使用する場合に適しています。
ステンレス鋼板
水分、薬品、塩分などによる腐食が懸念される場所で使用します。食品工場、屋外、洗浄を行う設備などに適しています。
材質によって加工性、表面仕上げ、溶接条件が異なるため、使用環境と製造方法を確認して選定します。
アルミニウム板
軽量化が必要な機器や、持ち運ぶ製品に使用されます。熱を伝えやすいため、放熱を考慮したケースにも適しています。
ただし、鋼板と比べて柔らかく、ねじ部や取付部が変形しやすい場合があります。必要に応じて板厚や補強を見直します。
曲げ加工を考慮した設計
板金は、曲げ部分で材料が伸び縮みするため、単純に外形寸法を足し合わせただけでは正しい展開寸法になりません。
曲げ半径、板厚、材質、加工方法によって伸び量が変わります。製造設備や加工会社の曲げ条件を確認し、曲げ代や展開寸法を設定します。
曲げ線の近くへ穴や切欠きを配置すると、加工時に穴が変形することがあります。曲げ部から必要な距離を確保するか、加工順序を変更します。
複数の曲げが近接する形状では、金型や加工機が干渉し、設計どおりに加工できない場合があります。図面だけでなく、実際の曲げ方向と加工順序を確認します。
穴・開口部の設計
板金ケースには、スイッチ、表示灯、タッチパネル、コネクタ、ケーブルグランド、ファンなどを取り付ける穴を設けます。
取付部品の外形寸法だけでなく、取付ねじ、抜け止め、裏面の締付け工具、配線コネクタのスペースも確認します。
角穴を設ける場合、加工方法によって内側の角に半径がつきます。部品側の角が干渉しないよう、隅部へ逃げ形状を設けます。
穴同士や穴と板端の距離が小さすぎると、加工時の変形や強度不足が発生します。重い部品を取り付ける部分では、補強板や溶接ナットを使用する場合があります。
ねじ・取付構造
板金部品の固定には、タップ加工、圧入ナット、溶接ナット、スタッドボルト、リベットなどを使用します。
板厚が薄い場合、直接タップを加工しても十分なねじ山を確保できません。その場合は、圧入ナットや溶接ナットを使用します。
頻繁に開閉するカバーでは、ねじの紛失を防ぐ構造や、工具を使わずに操作できる締結部品を採用する場合があります。
基板取付部には、スペーサやスタッドを設け、板金面との絶縁距離を確保します。基板裏面のはんだ部や部品がケースへ接触しないことも確認します。
強度と振動への対策
大型の扉や広い平面は、板厚が十分でも振動やたわみが発生する場合があります。折り返し、補強材、リブ加工などを追加して剛性を高めます。
モーターや振動機の近くに設置するケースでは、共振による騒音、ねじの緩み、基板や端子台への負荷を考慮します。
壁面取付やポール取付では、ケース本体だけでなく、取付金具とボルトへ加わる荷重も確認します。扉を開いた状態では重心位置が変わるため、ヒンジや筐体の変形にも注意が必要です。
放熱設計
ケース内部には、電源、制御機器、通信機器などの発熱部品が収納されます。密閉度を高めると防じん・防水性は向上しますが、内部の熱が逃げにくくなります。
自然放熱で対応できない場合は、通風口、ファン、フィルター、熱交換器などを検討します。屋外設置では、直射日光による温度上昇も考慮します。
発熱部品は、熱に弱い部品から離して配置し、上下方向の空気の流れを妨げない構造とします。ファンを設ける場合は、吸気と排気の位置、フィルターの交換方法も確認します。
防水・防じん構造
粉じん、水滴、洗浄水などが存在する場所では、ケースの隙間から内部へ侵入しない構造が必要です。
扉やカバーの接合部にはパッキンを設け、均一に圧縮されるようにします。板金のゆがみが大きいと、パッキンを設けても隙間が生じます。
ケーブル引込部には、使用するケーブル径に合ったケーブルグランドを使用します。未使用穴はプラグで閉じます。
屋外では、雨水が上面にたまらない形状、水切り、二重屋根などを検討します。結露が想定される場合は、ヒーターや通気部品を使用することがあります。
操作性と保守性
スイッチ、表示灯、タッチパネルは、作業者が見やすく操作しやすい高さと位置へ配置します。操作中に手が危険箇所へ近づかないことも確認します。
扉を開けた際に配線が引っ張られないよう、可動部の配線経路と曲げ半径を確保します。扉と本体を接地線で接続する場合は、開閉に追従できる長さとします。
内部部品の交換時に他の部品を大量に取り外す必要がないよう、取付順序や工具の入り方を確認します。消耗部品や調整部品は、点検しやすい位置へ配置します。
表面処理と表示
鋼板ケースでは、防食と外観のために塗装を行います。屋内・屋外、薬品、紫外線などの環境に応じて塗装仕様を選定します。
塗装する部分と、接地や導通のために金属面を露出させる部分を分けます。塗装膜があると、接地端子や部品取付部で十分な導通を確保できない場合があります。
機器名称、端子番号、警告表示などは、銘板、シール、印刷によって表示します。海外向け製品では、言語、単位、警告記号も確認します。
製造図面で必要な情報
板金部品の図面には、外形寸法、板厚、材質、曲げ方向、穴寸法、加工公差、溶接箇所、表面処理などを記載します。
寸法を重複して指示すると、加工時の基準が不明確になる場合があります。組立時に重要となる面や穴を基準にして寸法を設定します。
外観面の傷、溶接跡、塗装品質などに要求がある場合は、図面や仕様書へ明記します。製造方法によって仕上がりが異なるため、必要以上に厳しい公差や外観要求を設定しないことも重要です。
異常・不具合と対策
扉が閉まりにくい場合は、箱本体のゆがみ、ヒンジ位置、パッキンの厚さ、扉のたわみを確認します。溶接熱によって板金が変形している場合もあります。
内部温度が高い場合は、発熱量、通風経路、ファンの向き、フィルターの目詰まりを確認します。通風口を追加すると防じん・防水性能へ影響するため、使用環境と合わせて検討します。
ねじが緩みやすい場合は、振動、板厚、締結方法を確認します。圧入ナットや緩み止め部品へ変更する方法があります。
水や粉じんが侵入する場合は、パッキンの圧縮状態、扉の変形、ケーブル引込部、未使用穴を点検します。
既設ケースの改造・更新
既設機器の内部部品を更新する場合、取付穴、表示器の開口、端子位置が新旧部品で異なることがあります。
既設ケースを再利用する場合は、追加板金や変換ブラケットを設計し、新しい部品を固定できる構造を検討します。
開口を拡大すると、ケースの強度や防水性が低下する場合があります。必要に応じて補強枠や新しいパネルを追加します。
老朽化、腐食、変形が進んでいる場合は、部分改造よりケース全体を更新した方が適することがあります。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、計測機器、センサ機器、通信機器、制御盤などに使用する板金ケースや取付パーツを設計します。
収納する基板、電源、PLC、端子台、タッチパネルなどの構成を確認し、外形、材質、板厚、取付方法、配線スペース、放熱、防じん・防水構造を検討します。
板金部品だけでなく、電子回路、基板、制御盤、組み込みソフトウェアを含め、製品全体として組立・操作・保守しやすい構造を設計します。
既設製品の部品更新や筐体変更についても、既存取付寸法、製造数量、使用環境を確認し、追加ブラケットやケース更新を含めて対応可能な構成を検討します。
よくある質問
Q. 収納部品が増えた場合、既存ケースをそのまま使用できますか?
A. 空きスペース、配線作業、発熱、重量を確認します。収納できても放熱や保守が難しくなる場合は、ケースの大型化や内部配置の見直しが必要です。
Q. 屋外で使用するケースはどのように設計しますか?
A. 防水・防じん、腐食、直射日光、結露を考慮します。ステンレス材、パッキン、ケーブルグランド、二重屋根などを使用する場合があります。
Q. 薄い板金へ機器をねじ止めできますか?
A. 板厚によっては十分なねじ山を確保できません。圧入ナット、溶接ナット、補強板などを使用して固定します。
Q. 既設ケースへタッチパネルを追加できますか?
A. 扉の寸法、強度、内部の干渉、配線スペースを確認し、開口加工や補強によって追加できる場合があります。
Q. ケース内部の温度が高い場合はどう改善しますか?
A. 発熱部品の配置、自然通風、ファン、フィルター、熱交換器などを検討します。防水・防じん性能との両立も必要です。
関連ワード
防滴設計とは、製品に水滴や結露水がかかる環境でも、内部の電子回路や電気部品へ水が侵入しにくい構造を設計することです。屋外、工場、厨房、介護施設、農業設備などでは、雨、清掃時の水滴、配管からの結露などへの対策が求められます。
防滴性能は、ケースを密閉するだけでは実現できません。ケースの合わせ面、表示部、操作スイッチ、コネクタ、ケーブル引込部、ねじ穴など、水の侵入口となる箇所を洗い出し、パッキン、シール材、ベントシートなどを組み合わせて設計します。
ハカルプラスでは、製品の設置場所、水のかかり方、必要な保護性能、使用温度などを確認し、ケース構造、部品配置、パッキン、防水コネクタ、通気構造を含む防滴設計を検討します。
防滴と防水の違い
防滴は、水滴が落ちたり飛散したりする環境で、製品内部への浸入を抑える考え方です。一方、防水は、より強い水流や一時的な水没などを想定する場合にも使用されます。
必要以上に高い密閉性を求めると、ケースが大型化したり、コストや組立工数が増えたりします。製品が実際に受ける水の方向、量、時間、清掃方法を整理し、必要な性能を設定することが重要です。
水が侵入しやすい箇所
ケース内部への水は、目立つ隙間だけでなく、ねじ部やケーブルを伝って侵入する場合があります。主な確認箇所は次のとおりです。
- ケース本体と蓋の合わせ面
- 液晶、LED、操作スイッチの取付部
- コネクタ、ケーブルグランド、配線引込部
- 取付ねじ、放熱穴、通気穴
- ケースの接合部や板金の曲げ部
製品の上面に水がたまり、時間をかけて隙間へ浸入することもあります。水を受けにくく、受けても外部へ流れやすい形状とすることが基本です。
ケース構造による対策
ケースの合わせ面は、直接水が当たりにくい位置へ配置します。蓋をケースの外側へかぶせる構造や、段差を設けた迷路構造にすることで、水が内部まで到達しにくくなります。
上面を平らにすると水がたまりやすいため、傾斜や水切り形状を設ける場合があります。ケーブルは、引込部より一度低い位置を通す水切り配線とすることで、ケーブルを伝った水の侵入を抑えられます。
板金ケースでは、溶接部、継ぎ目、塗装範囲も確認します。樹脂ケースでは、成形による反りや締結時の変形がパッキンの圧縮状態へ影響するため、材質と肉厚を含めて設計します。
パッキンとシール材
ケースの合わせ面には、ゴムパッキンや発泡材などを使用します。パッキンは隙間を埋めるだけでなく、所定の量だけ均一に圧縮することが重要です。
圧縮が不足すると水が入りやすくなり、圧縮しすぎるとパッキンが変形して寿命が短くなります。ねじの配置や締付力が不均一な場合も、部分的な隙間が生じます。
使用温度、紫外線、油、薬品などによって適した材質は異なります。屋外や薬品を使用する環境では、耐候性や耐薬品性も確認します。
ベントシートによる圧力調整
密閉性の高いケースでは、温度変化によって内部の空気が膨張・収縮します。内部圧力が変化すると、パッキン部から外気や水分を吸い込んだり、ケースが変形したりする場合があります。
ベントシートは、液体の水を通しにくく、空気や水蒸気を通す膜です。ケース内外の圧力差を緩和しながら、水滴の侵入を抑える目的で使用します。
ベントシートの取付位置が、水たまりや高圧の水流を直接受ける場所になると、本来の性能を発揮しにくくなります。通気量、取付面積、設置方向を確認して選定します。
コネクタとケーブル引込部
外部配線の接続部には、防滴・防水仕様のコネクタやケーブルグランドを使用します。適合するケーブル径から外れると、締め付けても十分に密閉できません。
複数のケーブルを一本のグランドへまとめたり、丸形グランドへ平形ケーブルを通したりすると、隙間が生じやすくなります。使用するケーブルごとに、適した部品と取付穴を設定します。
コネクタを下向きや側面に配置すると、水が直接たまりにくくなります。保守時の抜き差しや配線作業も考慮して配置します。
結露への対策
外部から水が入らなくても、ケース内部で結露が発生する場合があります。昼夜の温度差が大きい屋外設備や、冷暖房の影響を受ける場所では注意が必要です。
ベントシートによる圧力調整のほか、発熱部品の配置、断熱、ケース内部の空気量を考慮します。基板へ防湿コーティングを施し、結露水による腐食や短絡のリスクを抑える方法もあります。
放熱との両立
ケースを密閉すると、内部で発生した熱が外へ逃げにくくなります。電源回路、リレー、表示器などの発熱によって、部品温度が上昇する可能性があります。
消費電力と周囲温度から内部温度を見積もり、ケース材質、表面積、放熱部品を検討します。必要に応じて、ケースへ熱を逃がす構造や、防滴性能を確保した通気部を設けます。
評価と試験
試作品では、想定される方向から水をかけた後、ケース内部への浸入、パッキンの状態、表示部や操作部の動作を確認します。
試験直後に水が見つからなくても、ケーブルや合わせ面に残った水が時間をかけて内部へ移動することがあります。試験後の経過確認も必要です。
量産時には、パッキンの取付忘れ、ねじの締付不足、ケーブルグランドの緩みがないよう、組立手順と検査項目を明確にします。
保守・点検
パッキンは、長期間の圧縮、熱、紫外線などによって硬化やひび割れが発生します。点検時には、変形、破損、浮き、汚れを確認し、必要に応じて交換します。
蓋を開けて保守した後は、パッキンへ異物が付着していないか確認し、ねじを均一に締めます。ベントシートやケーブルグランドに汚れや破損がある場合も、防滴性能が低下します。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、製品が設置される環境と要求性能を確認し、板金ケースや樹脂ケースの形状、合わせ面、パッキン、コネクタ、ケーブル引込部を含む防滴構造を検討します。
ベントシートを用いた圧力調整、結露対策、内部の放熱、基板や表示部の配置についても、電子回路と機構の両面から構成します。
既存製品の防滴性能向上についても、水の侵入箇所や使用環境を確認し、ケース変更、シール部品の追加、部品配置の見直しなどの対応方法を検討します。
よくある質問
Q. ケースを完全に密閉すれば防滴性能は高くなりますか?
A. 水は入りにくくなりますが、内部圧力の変化や放熱、結露が問題になる場合があります。ベントシートや熱対策も含めて検討します。
Q. パッキンを追加するだけで防滴構造にできますか?
A. 合わせ面の形状、ねじ位置、圧縮量が適切でなければ十分な性能を得られません。ケース構造と一体で設計する必要があります。
Q. ケーブルを伝って水が入ることはありますか?
A. あります。適切なケーブルグランドを使用し、引込部の向きや水切り配線を考慮します。
Q. 防滴ケースの内部でも結露しますか?
A. 温度変化や内部の湿気によって結露する場合があります。通気、断熱、基板の防湿処理などを検討します。
Q. 既存製品の防滴性能を向上できますか?
A. 水の侵入箇所、ケース構造、発熱、配線方法を確認し、パッキンやベントシートの追加、ケース変更などを検討できます。