Technology
動力回路設計
(どうりょくかいろせっけい)
動力回路
動力回路設計とは、モーター、ヒーター、ポンプ、ファン、コンベアなど、比較的大きな電力を使用する機器へ電源を供給し、安全に起動・停止させるための回路を設計することです。
動力回路には、短絡や過電流から回路を保護するブレーカー、モーターへの電源を開閉する電磁接触器、過負荷からモーターを保護するサーマルリレーなどが使用されます。これらの機器を負荷容量や運転方法に合わせて選定し、制御回路からの指令によって安全に動作させます。
動力回路の基本構成
モーターを直接起動する代表的な動力回路は、電源側から順に、配線用遮断器またはモーターブレーカー、電磁接触器、サーマルリレー、モーターという構成になります。
PLCや押しボタンなどから運転指令が出ると、電磁接触器のコイルへ通電し、主接点が閉じてモーターへ電源が供給されます。停止指令や異常信号が入ると主接点が開き、モーターへの電源を遮断します。
動力回路に使用する主な機器
配線用遮断器・ブレーカー
短絡や大きな過電流が発生した際に回路を遮断し、配線や機器を保護します。定格電流、遮断容量、配線サイズ、設備の短絡電流などを確認して選定します。
モーター回路では、始動時に定格電流より大きな始動電流が流れます。そのため、正常な始動時に不要動作せず、異常時には確実に遮断できる特性が必要です。
電磁接触器・電磁開閉器
電磁接触器は、コイルへの通電によって主接点を開閉し、モーターなどの動力を起動・停止させる機器です。頻繁な開閉にも対応し、PLCやリレーから制御できます。
電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたものは、電磁開閉器と呼ばれます。
サーマルリレー
モーターへ定格を超える電流が一定時間流れた場合に動作し、電磁接触器をOFFにしてモーターを停止させます。過負荷、欠相、機械的な拘束などによるモーターの焼損を防ぐために使用します。
サーマルリレーは短絡保護を目的とする機器ではないため、ブレーカーなどと組み合わせて使用します。
インバーター
モーターへ供給する周波数と電圧を変化させ、回転速度を制御する機器です。速度調整、加速・減速、始動時の衝撃低減などに使用されます。
インバーターを使用する場合は、入力側の遮断器、ノイズ対策、モーターとの配線距離、回生エネルギーなどを考慮して動力回路を設計します。
モーター電流と機器容量
三相モーターの入力電流Iは、概算として次の式で求められます。
I=P/(√3×V×η×cosφ)
ここで、Pはモーターの出力、Vは線間電圧、ηは効率、cosφは力率です。実際の機器選定では、モーターの銘板に記載された定格電流やメーカー資料を確認します。
モーターの出力が同じでも、電源電圧、効率、力率、負荷条件によって電流は異なります。ブレーカー、電磁接触器、サーマルリレー、配線などは、定格電流と始動電流の両方を考慮して選定します。
主な起動方式
直入れ始動
モーターへ商用電源を直接接続して起動する方式です。回路が比較的簡潔ですが、始動時に大きな電流が流れ、機械にも急激なトルクが加わります。
スターデルタ始動
始動時はスター結線として電流を抑え、回転速度が上がった後にデルタ結線へ切り替える方式です。複数の電磁接触器を使用するため、誤った接触器が同時に動作しないようインターロックが必要です。
インバーター始動
低い周波数から徐々に上げることで、始動電流や機械的な衝撃を抑えながら起動できます。設備能力に応じた速度調整も可能です。
設計上のポイント
短絡保護と過負荷保護を分けて考える
短絡は非常に大きな電流が瞬間的に流れる異常であり、ブレーカーなどで遮断します。過負荷は定格を超える電流が継続する異常であり、サーマルリレーや電子式保護機器で検出します。
それぞれ性質が異なるため、1つの保護機器だけですべてを保護するのではなく、適切に組み合わせます。
始動電流を考慮する
モーターの始動時には、通常運転時より大きな電流が流れます。ブレーカーやサーマルリレーの設定が小さすぎると正常な始動でも不要動作し、大きすぎると異常時の保護が不十分になります。
モーター容量、始動方式、負荷の慣性、始動時間などを確認して選定します。
正転・逆転のインターロック
モーターを正転・逆転させる回路では、正転用と逆転用の電磁接触器を使用します。両方が同時にONになると相間短絡につながるため、電気的インターロックと機械的インターロックを設けます。
欠相・逆相への対策
三相電源の1相が失われる欠相状態でモーターを運転すると、電流が増えて焼損する可能性があります。また、相順が変わるとモーターの回転方向が逆になることがあります。
設備条件に応じて、欠相・逆相リレーやモーター保護機器を使用します。
配線と端子の容量
配線サイズは、負荷電流、配線距離、周囲温度、配線方法などを考慮して決定します。配線が細すぎると発熱や電圧降下が大きくなり、モーターの始動不良や機器の劣化につながります。
端子台、圧着端子、接続機器についても、流れる電流に適した定格を選定します。
制御回路との連携
動力回路は、PLC、リレー、安全回路などからの指令によって動作します。モーターの運転条件、安全扉、非常停止、前後設備の状態などを確認し、条件が成立した場合だけ電磁接触器やインバーターへ運転指令を出します。
サーマルリレーやブレーカーが動作した場合は、補助接点から異常信号を取得し、PLCやタッチパネルへ表示します。
安全対策と異常時の動作
非常停止が押された場合や安全扉が開いた場合は、危険な動力を確実に停止させる必要があります。設備の危険度に応じて、安全リレー、安全PLC、電磁接触器の二重化などを検討します。
停電後に電源が復旧した際、モーターが自動的に再起動すると危険な設備では、再度起動操作を行うまで運転しない回路とします。
異常が発生した場合は、モーターを停止するだけでなく、上流側の供給機や下流側の搬送機など、関連設備をどの範囲まで停止するかも定めます。
ハカルプラスの対応
ハカルプラスでは、モーター、ポンプ、ファン、コンベア、スクリューフィーダーなどの容量と運転条件を確認し、設備に適した動力回路を設計します。
ブレーカー、電磁接触器、サーマルリレー、インバーター、欠相・逆相保護機器などを選定し、直入れ、正逆転、スターデルタ、速度制御などの回路を構成します。
また、制御盤内の機器配置、端子台、配線、電源系統、PLCとの信号連携、安全回路、異常表示まで含めて設計します。設備の動作順序や前後機器とのインターロックを整理し、安全性と保守性を考慮した動力回路を構築します。
よくある質問
Q. ブレーカーとサーマルリレーは両方必要ですか?
A. 一般には両方を使用します。ブレーカーは主に短絡や大きな過電流を保護し、サーマルリレーはモーターの継続的な過負荷を保護します。
Q. 電磁接触器だけでモーターを保護できますか?
A. 電磁接触器は電源を開閉する機器であり、単体では十分な過電流保護を行えません。ブレーカーやサーマルリレーなどと組み合わせます。
Q. モーター容量が同じなら同じ機器を使用できますか?
A. 電源電圧、定格電流、始動方式、開閉頻度、負荷特性などによって必要な機器は異なります。モーターの銘板と運転条件を確認して選定します。
Q. モーターの正転・逆転を自動で切り替えられますか?
A. 正転用・逆転用の電磁接触器やインバーターを使用して切り替えられます。同時動作を防ぐインターロックと、停止時間などの制御が必要です。
Q. 動力回路の異常をタッチパネルへ表示できますか?
A. ブレーカー、サーマルリレー、インバーターなどの異常信号をPLCへ取り込み、対象機器や異常内容をタッチパネルへ表示できます。
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